バ美肉系決闘者お嬢様筋肉おじさんの往く遊戯王VRAINS   作:mazy

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なにっお気に入り登録1000超え!?
しゃあっ
ふぅん原作・パワーということか

気がついたらすごいことになっててびっくりしました…しかも評価バー赤い…!!
これもひとえに遊戯王VRAINSという原作の素晴らしさの力だと思います…本当にありがとうございます!あとKONAMI様シンギュラリティありがとうございます!!!

あ、本編は回想です。なんかシリアス味だけど次回は普通にふざけます(予定)

追記:キャラ絵描いてみました。後書きにあります



5話 業風 

それは二年前、風薫る初春のことだった。

 

その日の自分は午前中にDEN-TUBEに投稿する決闘解説動画("アリアの傲慢で謙虚な決闘のツボ"シリーズ。おかげさまで今も好評を博している)の編集を終え、午後からは情報収集がてらに町をぶらぶらした後、行きつけのジムのトレーニング施設で汗を流し、さて夕飯でも食いに行くかとDen-Cityの大通りをゆっくりと歩いているところだった。

 

時刻はそろそろ十九時になるだろうかという頃。既に日は落ち、薄暮の空は星の光を湛え始め、町もきらびやかなネオンが灯り始める、そんな頃合い。

個人的にはDen-Cityの一番美しい時間帯だと思う。かつて住んでいた町も悪いところではなかったが、やはり都会は空気が違う……などと言うのは単純に自分が大好きなアニメの舞台に住んでいるという精神的な要素が大きいのだとも思うけれど。

 

──当時の自分は、簡単に云うと調子に乗っていた。

 

そんな風に言うと『今もだろ』と思われるかもしれないが、少し違う。前世の知識のおかげで決闘は連戦連勝。肉体は鍛えれば鍛えるほどいくらでも強靭さを増し、動画の収益化や他の決闘者との決闘で得られるファイトマネーなどにより早くも老後に不安が無い程度には貯蓄に成功し、何よりも()()()()()()()()に住んでるという状況を、どこか現実感の無い、浮わついた心持ちで過ごしていた。

 

だからだろうか、その日に起きた出来事は、自分にとってあまりにも──。

 

 

「……ム」

これは自慢だが、耳はとてもいい方だ。

決闘者にとって相手の一挙一投足から情報を得るというのは重要なスキルであり、鍛え上げた聴力は相手の声色や、時に相手のその鼓動の揺れまで……とは流石に言いすぎだが、とにかく耳が良くて困ることはない。

そしてそんな自慢の聴力がその時捉えたものは、「きゃあ」とか或いは「なんだあっ」と言った、困惑と恐れが入り交じった複数の──悲鳴、であった。

 

現在最も勢いのある巨大企業と言っていいSOLテクノロジー社を有しているからか、Den-Cityの治安は基本的にとても良い。町にはドローンが巡回し日夜目を光らせているために、よっぽどのことがない限りは大きな犯罪もそうそう起きないのだ。

そしてそんな近未来都市であるDen-Cityにおいては、交通事情もまた進んでいる。なんと町中を走る自動車は殆どがAI制御の自動運転なのである。信号や時間帯、監視カメラやドローンとの同期により常に最適なルートを自動選択。高感度のセンサーにより事故知らず。当然ながら制限速度は完全遵守。まさに至れり尽くせり、住人はただ座っているだけで目的地に快適に到着出来る。

 

──そんな謳い文句のAI-Carが、目の前で暴走していた。

 

それは悪夢のような光景だった。暴走車は一台のみ。タクシーのようだ。両目共に13.0の視力で見たところ、後部座席には()()()()()()()()()()()が凍りついたような表情で固まっているのがわかった。繁華街の大きな道路で交通量もそれなりに多いというのに、その一台は異常な速度で道路を爆走している。爆走()()()()()()()()()。それは多くの車がAI制御だからこその異常事態。後方からやってくる暴走車という障害物を検知した車両達は皆一糸乱れぬ動きで道を譲り、結果として一条の矢の如く大通りを暴走車はすり抜けていく。

 

そう──矢の如く。

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

誰かが「危ない」と叫んだ。また他の誰かは「逃げて」とも。

 

その声の向かう先は横断歩道。一人の少年がどこかぼんやりとした困惑の表情で立ち尽くしていた。見れば横断歩道の先には本来なら歩行者の誘導をしている筈の警備ドローンが彼の行く手を塞ぐようにしており、少年の後方にもまた警備ドローンが同じようにして立ち塞がっている。

 

ここまで来て自分にもわかった。

()()()()()()()()()()と。

 

ロスト事件──正式名称"ハノイプロジェクト"の被害者は六人。そしてそのプロジェクトの結果産み出された意思を持つ人工知能・"イグニス"の数もまた六体。彼らは奇しくもデュエルモンスターズの六属性と同じ名の要素を持ち合わせている。

そしてイグニス達は、自分の誕生に関わった少年少女達を各々一人ずつ自分達の"源流(オリジン)"と呼ぶのである。

彼らの関係もまた遊戯王VRAINSの物語を語る上で外せない要素ではあるのだが……そんなオリジンの中でも、アニメ本編では全くと言っていいほど情報が開示されなかった人物が一人存在する。

 

それが風のイグニスのオリジンである。

 

彼について分かっていることはあまりにも少ない。ロスト事件後にも立ち直ることが出来、友人と仲良く下校出来ていた様子がワンカット描かれたこと、その際彼の顔は影で見えないように描かれており、画像を色調調整してなんとなく顔がわかる…ような?という程度になっていたこと、そして──

 

他でも無い彼の産み出したイグニスの手によって、AI-Carの暴走事故に巻き込まれたこと。

 

その生死について公式では発表されていない。しかしただ怪我をして入院しているだけなのならエピローグなどでも描かれただろうこと、そしてその事故を起こしたイグニスの口振りを考えれば恐らくは……死亡しているのだろう、というのがファンの中での通説だった。

 

──つまりは目の前で起きている()()こそが、その事故そのものなのではないか?

それに気付いた後だったか、それとも前だったか。既に自分は走り出していた。

 

少年は未だ立ち止まり、凍りついたような表情のまま暴走車を見つめている。暴走車はスピードを緩めることなく、ぐんぐんと速度を上げ、そして──

 

決定的な瞬間を前に集中した意識、引き延ばされたような時間の中で自分は考えていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()?──と。

 

今の自分を支えているものは、前世で見聞きした遊戯王VRAINSという()()あってのものだ。霊迷院アリアのアバターは、データストームという大容量高速データマテリアルが生まれることを前提にして事前に研究を重ねることが出来たからこその高クオリティ。評価の高い決闘戦術(デュエル・タクティクス)だって、この世界がどういうものであるかを事前に知っているからこその知識チートみたいなもの。原作改変に手を出すことで、それらのアドバンテージが壊れる可能性は、決して0ではない。

 

──それにここで彼を救ってどうなる?

 

これは単なる事故では無い。人為的に起こされた、計画的な()()である。一度彼を救ったところで、おそらく犯人は何度でもその魔の手を伸ばすだろう。Den-CityにはAI制御の機械などいくらでもあるのだから。

そしてその上で、何度も彼を救ったとしても、更なる懸案がある。

 

それは──犯人が自分を狙う可能性。

 

意思を持つ人工知能イグニスは、電脳世界では決闘さえしなければ無敵と言っていい。自分の素性を暴かれる危険性、そして邪魔に思われて命すら狙われる危険性、そして更なる黒幕に目をつけられる危険性すら存在するのだ。

 

死。

 

恐らくこの世界に生きる誰もが未だ知らないその経験を、自分は記憶している。

指先から感覚が失われて行き、意識が少しずつ霧散していく恐怖。胸の奥からじわじわとせり上がる、黒い金属のような、どろついた液体のような、錆び付いた刃のような、()()()()

この世界はもう自分にとって虚構の世界なんかじゃない。現実だ。現実なんだ。

あの感覚をもう一度味わうかもしれないという、可能性。それを思うだけで。

 

──怖い。恐い。こわい。コワイ。

 

弛緩していた心が針金のような恐怖に締め上げられる。そもそも何故自分は今走っているんだ?くだらない英雄願望か?それとも転生したら何でも出来るようになったと思い上がったか?それとも何も成せないまま死んだ前世の自分と今の自分を違うと思い込みたいのか?それとも主人公にでもなったつもりだったのか?それとも。それとも。それとも。

泡のように浮かんでは消える疑問。今まで見て見ぬふりをしてきた様々な心の闇。エゴ。願望。

 

思わず足を止めそうになる。そうだ、それでいいじゃないか、暴走車を前にして鍛えた自分なら何か出来るんじゃないかと走り出したバカが、それでも間に合わずに消沈する。観衆は頑張ったと褒めてくれるかもしれないぞ?配信でも落ち込んだ素振りをしていれば慰めてもらえるかもしれないし、あわよくば投げ銭をもらえるかも……。

 

──その時、()()()()()()()

 

いや、正確には彼はこちらを見ていない。ただ、自分が彼の瞳を見て、見てしまって。それで。

 

そこには諦めと、安堵があった。

 

「……ッ!!」

 

──そうだ。

 

全力で、踏み込む。路面に足型が残り、轟音が上がる。

 

──ここで()()が出来ないのなら

 

一歩で車を追い越し、二歩目で少年の前に辿り着く。着地の衝撃で周囲のアスファルトが捲れ上がるが、知ったことではない。

 

──自分はもう二度と理想の自分なんて演じられない!!

 

構えを取る。暴走車には乗員がいる。力任せに破壊することは出来ない。

 

「……ォォオォッ!!!!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

轟音。

──その時発生したそれを聞いた観衆は思った。あぁ、なんということだ。轢かれてしまった。しかも少年と、助けようとした男性も巻きこまれてしまうなんて。何故こんなにも痛ましい事故が起きてしまったんだ、と。

しかし、その光景をちゃんと見ていたものは、それを見て、その上で()()()()()。 

それは衝突音ではなかった。

それは車と少年の間に割って入った男が起こした、震脚の音だった。

巻き起こる地揺れに観衆は思わず体勢を崩し、あたかも神聖なるものに対して傅くかのような姿勢でその()()を見た。

後に目撃者の語るところによるとそれは──地面が揺れた瞬間に浮き上がった車が、まるでこれまでの勢いや重さなどない、羽毛のような軽やかさで以て、男性に抱えられ、スッと地面に"寝かしつけられた"かのようだったと云う。

呆気に取られた観衆が一瞬目を離した瞬間に、男性は姿を消してしまったというが──。

 (初出:キミも知ってる?Den-City都市伝説)

 

 

 

 

 




風のイグニス(ナァニコレェ…)



◆ちょっと描いてみました(主人公名前ネタバレ注意)

【挿絵表示】


【挿絵表示】

本編スタート前に主人公以外の視点からの番外編を入れようと思うのでアンケートにお答えいただくと嬉しいです

  • 血に染まらぬ猟犬
  • 悩み多き番犬
  • 風を追う少年
  • 未だ英雄ではない二人
  • 悪魔に闘志を燃やす天使
  • 燃える闘魂と筋肉
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