「なぜだ、前を歩こうとすると後退する」
「せ、せんぱーい!?」
百八十度首が回旋した状態の俺が前進するつもりだと後退するのは北斗の拳みたいだね。
ああ、なぜそうなったって?
シャドウ倒す際に総攻撃タイムがあったんだが……
芳澤はレオタードの際どい怪盗服のままY字開脚しながらリボン運動するので思わず見てしまい……
「スミス君、見ちゃ駄目!」
とグイっと首を回されてしまったのだよ、春に。
ああ、普通百八十度回さないって?
そうだよ。
戻す時に大きな音を立てながら首部分だけ影を張って百八十度まわっているように見せかけただけ。
最近できるようになった部分変身をノリでやりました。
実際は首は回っていないのがバレて春に正座させられた。
下から見ると……迫力があるな。
「スミス君」
「ひゅいまへん」
「雨宮先輩……スミス先輩っていつもああなんですか?」
「以前は真面目だった。
今はたまにはっちゃける」
「アイツの悪ふざけはどうにかならないのかよ(思わず見てしまうのはわかる)」
「難しい(かすみの癖を言うべきか言わないべきか……思わず見てしまうが)」
(※うんうん、思わず見てしまう男子のサガ)
奥に進むのだが……なんか映像に芳澤の父の映像がでている。
確か双子のかすみが事故で亡くなって涙する映像が出ているが……。
芳澤がこの上なく動揺しているし、なにか頭痛っぽいが何かされていそうな感じもある。
遭遇したシャドウ戦でも冷静さが欠けていた。
シャドウも奥に行くべきでないと明確に芳澤に言っていることから……見当はつくが明言は避けておこう。
進むと遠くに芳澤がいる……正確には亡くなったかすみがインタビューに応えている。
芳澤がやめてと叫ぶ。
「わかってくれたかな。
これ以上進んでも心が引き裂く結末が待っているだけだよ
大人しく、『今ある』現実に帰って貰えないかな」
男の声が放送される。
なんとか芳澤が拒否し、パケチが姿を現せよと言い放つと、
下に降りるように言ってきた。
降りると、白いスーツにオールバックをしたメガネの男が振り返る。
「あれが…パレスの…?」
「久しぶり」
「丸喜先生」
「……誰だ?」
俺が見覚えのあるようなないような男に思わず言ったらパケチ以外ガクっとなった。
春が俺に叱る。
「スミス君、それはないんじゃないかな?」
「うーんと……」
「鴨志田や校長の一件でやってきたカウンセラーだ、忘れたのかエージェント?」
「あ、ああ……そういえばあったなー。
一切接触しなかったし」
「カウンセリングが義務だったが?」
「ああ、そう言えば本業に裏稼業も忙しかったからね、適当に無難に話すbot的な分身を派遣して流したんだった」
「スミス君、あとでお説教です」
ジョーカーの問いに返答したらノワールがプンプンと怒っている、可愛いね。
丸喜先生もメガネを整えて改めて続ける。
丸喜先生はパレスの主である事を肯定し、明智からこの異常事態を引き起こしたかと聞くと
『僕の作った現実』と言った。
一先ず、真女神転生2のアルカディア計画みたいな機械に繋がれて架空の現実に見せられるアッアッアッではないようだ。
根源的破滅招来体やメシア教徒の真似事だったら核攻撃も辞さないが……。
「信じられないと思うけど……
僕は人々の願う現実を叶える力を得たんだ」
「元に戻せ」
ジョーカーが単刀直入にいうが…。
「それが君の本意かい?
……元の現実は理不尽で残酷だよ。
現に芳澤さんも忘れていた過去に触れるたびに苦しんでいる」
「過去…?
丸喜先生…過去ってなんなんですか?
私に何があったんですか…!」
「わかった。
本当はさっきまでの『警告』で済めばよかったんだけど…、
望むなら一度思い出して欲しい。
君が何者なのかを。
そして、君たちにも知って欲しいんだ。
知った上で選んでくれないか。
無慈悲な現実と僕の現実……そのいずれかを」
映像が流れる。
芳澤姉妹の雨の中の会話。
大胆な演技で評価を得ているかすみ。
繊細な演技だが姉に及ばないすみれ。
すみれは殻を破れない状況に姉妹の会話のなかでナーバスになって走っていく。
信号すら確認しないまま走ったすみれは自動車に轢かれそうになった。
その時にかすみが庇い……亡くなった。
「そうだ、私……」
「かすみ?」
「かすみ……
違う…違うんです。
私は、かすみじゃない!」
……ジョーカーは知らなかったんだな、この自動車事故を。
彼女は『芳澤すみれ』だということを。
これまでは自身をかすみと認知してしまっていたと丸喜は言う。
明智はこの状況でさっきの映像でかすみを名乗った状況からパレスの主を疑っていたようだがね。
かすみが亡くなり、秀尽学園に入る前にすみれは丸喜先生にカウンセリングをしてもらったらしい。
すみれは、かすみを死なせた罪悪感から自分がかすみになって新体操で世界を目指す夢を代わりに叶えたいと願い、丸喜はその認知を操作したと語る……局地的に実現できるということは精神操作に長けたペルソナ使いの素養があったようだな。
善意で人の心の傷や罪悪感を消したわけか……明智は気に入らないようだが。
丸喜先生の願いは救済で、その為の研究内容が『その人が望んだ事を現実にする』ようだ。
前世でも挫折を味わった身としては、その願いや手法は否定できないし前世なら飛びつくかもしれないな。
ただ、その行く先が『誰も無慈悲な現実に苦しまない世界』ならば………。
「それが本当の救いか?」
「残酷な事実は消え、人々は幸せな認知で生きる…
それは救いでなくてなんと言うんだ?」
「その洗脳じみた言動を信じて貴様の掌でいきていけと?
正直言って反吐がでるね」
「それが明智君の答えか。
でも、他の人はどうかな?」」
丸喜の考えに案の定、そういうリアクションを取ったか。
俺は敢えて春に聞く。
「どう思う、春?」
「私も……もしあの時、本当にお父様が亡くなっていたら、生きていて欲しかったと願ったかもしれない」
「まぁ…そうだな。
そしてそう願うのは普通だし責められん。
人間は大なり小なり後悔を持つからな。
だが……」
「だが?」
「イデオロギーの観点では決着はつかないな。
道徳の授業やディベートにはいい題材だ。
人類の未来という観点では明確に反対だと言わせてもらおう」
「人類の未来?」
ジョーカーは聞き返す。
もし、ここで問われなければ怪盗団の面々が正気に戻って丸喜先生の考えにどういう結論を出すまでは沈黙するつもりだった。
だが問われた以上無慈悲な現実を突きつけなければならない。
「認知の学問に関しては丸喜先生の方が学があるだろうが、
認知上の存在に関しては俺の方が詳しい……故の結論だ。
去年は統制神ヤルダバオトなる存在を倒したが……心の海の中に帰っただけだ。
ヤルダバオトだけじゃない……認知上に存在する擬似神格は複数存在する。
人類に良くも悪くも影響する。
丸喜先生の理想が実現すれば、それが動くのは容易に予測できるし、
丸喜先生では対処できない」
そう、ネガティヴマインドの化身ニャルラトホテプが動くだろう。
何もかも願いが叶う揺籠の世界。
停滞する世界を撹拌する為に即死級の事件が起こるね。
なにもかも幸福でもそればかりでは退屈と感じ刺激を求める。
その思いを足がかりに活力を得て陰謀をおこすだろうよ。
そういう悪意に対して丸喜はいいカモだし、それに対抗できる存在は揺籠の中から生まれる可能性は非常に低い。
「悪いね、先生。
死にたくないからこの世界<ネガイ>、壊させてもらう。
先生の嫌いな理不尽に耐えられない故にね」
丸喜先生の考えは悪くないんだ。
でもね、クソ双子が起きている以上、この理想では世界は守れないんだ。
昼行灯の次に鑑定屋の世界に行くコテハンは……
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Zさん