突然チャットが鳴る。
真が確認すると長谷川茜からだった。
だがその文面は不審だった。
『怪盗団に告ぐ 長谷川茜は預かった 返して欲しければ稲荷大社へ来い』
茜を妹のように可愛く思っていた真は動揺した。
声が掠れながらも内容を語った。
「茜ちゃんを預かったって……
返して欲しければ稲荷大社へ来いって……」
「はぁ!?なんだよそれ…」
「預かっているって……誘拐!?
なんで茜ちゃんが!?」
「わからない……でも茜ちゃんのスマホから届いている……」
「一応だけどよ……茜のイタズラってことは無いよな?」
「茜ちゃんは私達が怪盗団って知らないし、知っていたらこんな事しないわ」
「そうだよね、でも考えたら誰がこんな事を……」
「状況を考えれば、コノエかオーワダってところか」
「許せない……」
真は怒りに燃えている。
だがそれ以上怒りに燃えている人間が『二人』いる。
それは……
「蓮、鳴っているぞ」
「ああ……スミスからだ」
祐介が蓮にスマホが鳴っている事を言うと、蓮は確認した。
会議用アプリを開いてくれとIPとパスワードが送られていた。
急いでアプリを開いて繋いだ。
蓮以外の画面に、スミス、丸喜、善吉が映る。
「その様子だと無事ではあるか」
「スミス君!」
「なぁオッサン……」
「ああ、知っている」
善吉の顔が真っ白になる程に血の気が引いていた。
丸喜が、憔悴した善吉へコーヒー(※スミスの影から出したルブランのコーヒー)を渡す。
昨日は怪盗団の元へ行こうとしたが、同僚から連絡があった。
茜が攫われたと。
帰宅途中に半グレの集団に襲われたと。
護衛で見守っていた刑事が向かい応戦していたが運が悪い事に偶々通りがかりに児童がおり、半グレがそれを人質にした。
茜は恐怖に震える児童の様子を見て自分が代わりに行くといい、まんまと攫われた。
長谷川の同僚は、振り絞るようにすまない…と詫びた。
長谷川は激昂したが、同僚の全身には打撲のアザが残っていた。
倒した半グレのスマホや財布から身元はわかった。
地元の半グレチーム「イビル・ウィンド」(※ええ、風魔小太郎が怒り狂って殺しにきそうな……)の構成員でバックに大物がいるとしばらく前から吹聴されていた。
「似非風魔のジャリどもの親玉は大和田だ。
アイツの頼まれごとを果たせば美味い汁を吸わせてもらえる寸法らしいがね。
近衛と大和田はお前らを捕まえようとしたが、うまく逃げたようだがな」
「スミス風に言うなら修行の賜物って奴だ……スミスの紹介のおかげだ」
「いいって事よ。
俺も東京にいたが連絡を受けたから超特急で戻ってきて、
昨日の夜中から今朝にかけて京都府警を制圧したから。
大阪府警も制圧中だがな」
「マジかよさすがスミスだぜ!」
「いや制圧したのは俺じゃない……俺が何でもかんでも力押しで制圧するわけがないじゃないか」
「え?」
「まおーなら余裕かと思ったけど」
「竜司、双葉……後で鼻にワサビを流し込む。
やったのは公安のチーム、そして自衛隊・第一空挺団だ」
「どういうことだ、スミスよ」
「世の中には不甲斐ない大人ばかりじゃないって事さ。
とある代議士の先生は
『もう君のように若くないが、こういう形で君と共闘したい』って言っていたぜ。
近衛が舐めた啖呵をしたからこちら側も返歌してやったぜ」
蓮は、その言葉は演説を教えてくれたあの人だと容易に予想がついた。
杏が疑問を告げる。
「テレビの奴は……?」
「ああ、内閣総理大臣殿が声明を出したんだよ。
オフレコだが…。
『獅童正義がいた時には悪を蔓延らせてしまった我々は無能だ。
だが、表立っては言えないが理外の悪へ立ち向かう君達を大和田や近衛に同調して阻むほど卑怯者になった覚えはない』って言っていたよ」
蓮は、茜が攫われた上に孤立無縁の状況に一抹の不安を抱いていた。
だが……丸喜の言葉にその不安は消えた。
盟友(スミス)がいて、悪い大人ばかりでない事は蓮にとって何よりも心強く感じた。
「その様子だと犯人から呼び出しを受けたか」
「ああ、稲荷大社に行けって」
「罠なのはわかりきっているが行ってくれ。
待ち受ける罠を踏み潰してくれるのが理想だが……最悪一人でも逃してくれ。
後で俺たちも合流するから」
「スミス君はどうするの?」
春の質問を受けてスミスは頷く。
「大和田を何とかしよう。
半グレどもの情報は警察とこっちのコネで大体わかればローラー作戦でいける。
(※現実世界でハーヴェストのスタンドは禁止カードっすね)
後方の安全の為に大和田のジェイルを落とす。
もしかしたら茜君の身柄はこっちにあるかもしれんしな」
「できるのか?」
「『切札』を切る。
近衛か、その後か、最悪の事態で叩きつけるつもりだったが……茜君と怪盗団の安全優先でいく」
「そうか……そっちは頼むぞ、スミス」
「ああ、そっちもな。
じゃあ、切るぞ」
会議アプリを終了した。
真が口を開く。
「善吉さん、大分堪えていたわね」
「ああ……茜を助けねえとな」
「でもまおー、冷静だったな」
「「それは違う(よ)」」
双葉の言葉を春と蓮は否定した。
「スミス君、ああ見えて情に熱い部分があるし……」
「まんまとしてやられたとスミスは思っているようだからな、
……そうか、切るのか『切札』」
「レンレン、切り札ってなんだよ?」
「やはり核攻撃……」(※それは禁じ手であって切札じゃないから)
竜司は蓮に 『切札』について聞いてきた。
祐介は核兵器と予想したが蓮は首を横に振る。
「スミスの草薙剣には更なる力があってな……」
「まおーソードか……めっちゃ強いけどまだ何かあるの?」
統制神・ヤルダバオトに対して叩き込んだ『八岐怒濤』。
水の八つの斬撃を放った強力な技だ。
最初はこの一撃を出したら再チャージが数ヶ月かかるレベルだったが、
練度と剣との親和性が高まり、一回の探索中で1発出せるようになった。
そして……更なる大技を編み出したと蓮は聞いた。
「話で聞いただけだが……その技は今までの技よりはるかに強いらしい。
スミスは『あのクソ神でも無防備なところに叩き込めれば勝機が生まれる』と自信をもって言ったくらいだしな。
……ラヴェンツァの兄と姉に初見で不意打ち気味に叩き込んで勝ったらしいしな」
(※試しのバトルVSエリザベス&テオドア。
膨大な物資の消費+初見の切札を叩き込んで勝った、次は勝てないとのスミスは言っていた)
「あの方々を倒しただと……」
モルガナは蓮の言葉に驚く。
蓮も以前、ラヴェンツァ相手にスミスと明智の三人がかりでどうにか勝利できたが……。
ラヴェンツァの兄や姉はそれより上と考えると切札の恐ろしさを感じる(※なおサタナエルの銃弾の方がもっと恐ろしいが)
そしてそんな危険な技をシャドウとはいえ大和田に叩き込む事を思うと……。
「(大和田)死ぬなよ」
思わず蓮は呟いた。
そしてスミスが殺人犯にならない事を祈った。
スミスの見た夢……最後にスミスが選ぶ道は?
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マガタマを飲み、人修羅の道へ。
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悪魔と合一し、ナホビノとなる。
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宇宙の卵を確保し、孤独な観測者となる。
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うるさい!(拳銃で返答)