「それで桐条会長、わざわざ俺っちを呼ぶって事は……そっち絡みですか?」
純平が言う『そっち』とはペルソナやシャドウ絡みの話をさす。
美鶴は頷く。
「……ああ、桐条のペルソナ能力者第一号がアメリカの閉ざされた街にいる」
「閉ざされた街?」
「ああ、祖父・桐条鴻悦の代から付き合いのある男だ。
名前はアンドレイ・ウルメイダ。
アメリカの……テキサスのとある都市に彼はいる」
ストレガ……桐条グループの研究員によって人工的に生み出されたペルソナ使い。
当初100人ほど集められた被験者達の生き残り。
その第一号が生きている事は純平も知らなかった。
「1990年生まれ、27歳。
両親がエルゴノミクス研究所に勤めていた。
祖父は、彼の能力に着目していた」
「桐条の祖父は不老不死を求め……2000年の前に滅びを求め出していたな」
「彼のペルソナ能力は、自身の死を退ける力があるらしく、それで研究を進めていたらしい。
人工ペルソナ使い研究プロジェクト『ストレガ』発足にも関わっていた。
だが……実験中に死亡し、彼の情報は廃棄された。」
「ところがどっこい生きてたと。
まさに死を退ける能力が発現したと。
廃棄されったってなんですか?」
「最近まで彼の存在は我々も認知していなかった。
彼は、通販事業の世界最大大手「ファーストライフ」会長兼CEOになっていた。
だが、我々にも関係がある。
新型の抑制剤や荒垣やチドリの治療薬の開発が進んだのは彼のおかげであった」
「チドリの…?」
「閉ざされた街『ウルメイダ・インターシティ』はウルメイダが支配する街で、ここで医療研究がすすんでいたの。
これを見て、純平君」
風花が動画を見せる。
アフロの長身痩躯の黒人青年が「TEXAS BRONCO(西部の暴れ馬)」のロゴの入った黄色いTシャツとジーンズでビルの屋上でカメラに向かって喋る動画だ。
バックにはコンサートホールが見える。
『オレの名はアンドレイ・ウルメイダ……この先、重要な男になる。
今後ろではステーシーのコンサートが開かれている。
ステーシーのファン層を知っているか?
一日四回爆発(射精)してる様なヤツラさ!!
……ダメだ!…押さえられない、イッちまうぜ…!!
ヒャアアアアホオオオァアアアアアアア!」
腰をカクカクと振りながら絶叫すると、コンサートホールが爆破された。
狂気に満ちた笑いだった。
「コレがライブだ。
Ms.キジョウ、アンタに挑戦状だ。
新たな信仰が、死の月が俺に生まれる。
だから俺を探し出してくれ。
俺はどこかできっとアンタを待っている。
アンタが探さないと俺は成立しない。
ここに来るんだ』
「アメリカの桐条グループの社員がこの犯行動画を知らせてくれたそうです」
風化はそう締めくくる。
一同は『死の月』というフレーズが気になった。
ニュクス……死の化身が月に封印されている。
それを連想する言葉を桐条グループにいたペルソナ使いが言うのだ。
偶然ともハッタリとも思えない。
「この動画でウルメイダを調べた。
最初は難航したが幾月の日記にウルメイダのことが書かれていた。
彼の居場所はすぐにわかった。
「TEXAS BRONCO(西部の暴れ馬)」のシャツを着るのはテキサスしかしない」
「そ、そんなもんですか」
「さらにテキサスに絞って調査をして閉ざされた街の存在がわかった」
「桐条先輩はどうするんですか?」
純平は『会長』から『先輩』呼びにかわった。
明彦は拳を掌に叩きつける。
風花は、美鶴の顔を見つめる、
「私を指名のようだからな、当然会いに行こう。
交戦の可能性があるから召喚機を持っていく。
昭彦、伊織、山岸は私についてきて貰う」
「ああ、腕がなるな」
「わかりました」
「あ、あの……もう少し戦力出せません?
アイちゃんとか」
少数精鋭すぎるのでもう少し戦力を捻出したいと思う純平であった。
だが、明彦が説明する。
「岳羽は仕事、天田は学業がある。
コロマルは遠出を好まないし、シンジも店や琴音の事で遠出しないしな。
アイギスは……」
「全身兵器ですから……」
(※空港で止められる……ぶっちぎりの銃刀法違反である。
スミス君みたいに収納できればねー)
「ああ、なるほど」
「とにかく、パスポートを用意してくれ。
チケットは手配している。
直ちに向かうぞ」
.
.
.
<コメリカ テキサス州 ダラス フォートワース国際空港>
「テキサスか、武者修行でもきたことがあったが……」
「真田先輩は世界中を回ったんでしたね」
「伊織はどこに……」
美鶴が純平が近くにいないと探していたら、
小太りの中年男性と話している。
日本人で、ギターケースを持った旅行者のようだ。
「テキサスレンジャースの須田剛は一番バッターで最近活躍しててねえ」
「あの俊足じゃボールを当てて転がせば絶対一塁踏める……俺っちも今年はゴールドグラブ賞取れると思うっすよ」
「何やっている、伊織!」
「あ、すいません!!」
「いやごめんね、オジサンが捕まえていたから」
中年男性が純平を叱る昭彦達に頭を下げる。
「あー君たち観光かい?」
「仕事です……仕事が終わって時間があれば観光もやぶさかでは無いですが。
貴方も?」
「ええ、最も……こうやって弾き語りしながら適当に退職して自分探しに旅をしてましてね。
ちょうどテキサスから離れるとこなんですよ」
「自分探し……俺っちもこうやって就職するまでバイトしてフラフラして迷っていたわけで」
「まぁそういうのをやって取り返しがつくのが若いのの特権だよ。
そういえば……変わった都市伝説みたいなのを聞きましたよ」
「都市伝説…ですか?」
風花の言葉に頷く中年。
明るい感じでその都市伝説を話す。
「人気のないところに行くと笑い声がするんだけど、
見渡せど誰もいない。
なのに……声がだんだん大きくなって……耳元にまで声が聞こえたら…」
「聞こえたら?」
「ドカン!」
「わっ!」
「あはは、ごめんごめん。
爆発に巻き込まれて死亡する……って。
自走式の爆弾テロのドローンか何かだと思うけど、
不気味な笑い声ってのがねー。
まぁ、ウォル@・ディステニーが冷凍保存されて生きているとか、
3万人のベトナム兵がテロを起こす機会を待っているとかの都市伝説でしょうがね!
でも最近、世界中で行方不明者が増えたり、爆弾テロが横行しているから君達もきをつけるんだよ」
.
.
.
<テキサス ウルメイダ・インターシティ>
「珍しい黄色人種<珍客>だな…
こんなところに何の用だ?
ウルメイダ……ああ、そうか…。
今日も会ってきたぞ。
毎日会っている。
あちこちポスターが貼ってあるだろ?
なんだ、気味が悪いと思っているのか。
街の連中には聞こえないように言え、殺されるぞ。
皆、あの方を守るんだったらなんでもする恐ろしい土地じゃ」
シティの外周部で農作業をする白人の老人はそう語った。
街にはウルメイダのポスターや看板が乱立している、
一種のカリスマなのだろうか?
美鶴達が歩いていると……声が聞こえる。
道には人っこ一人いないはずだが……中年が言った都市伝説なのか?
純平は一瞬そんな思考をしてしまう。
『お嬢さん、お嬢さん……』
「……な、なんだ!?」
声をした方向に顔を向けると美鶴が叫んでしまった。
無理もない。
視界に飛び込んでくる視界の暴力。
赤い拘束着で全身を包み、ギャグボールを咥えて目蓋を縫った本格的なボンデージスタイル。
常に中空からロープで吊り下げられた姿で現れる。
控えめに言って変態である。
変態のポーズも常時固定で右手は口を閉じさせるように人差し指を口の前に立て、左手は相手に触れるか押し止めるかのように胸の前に差し出されている。
『お嬢さん、お嬢さん……ヤバいです。
マジでやばいです』
「やばいのはアンタっすよ!」
「しょ、処刑だ!」
伊織も腰を抜かさんばかりに驚き、風花も無言で顔を背ける。
美鶴はビンタをするが、変態に当たらずに空を切る。
実体がないようだ。
「シャドウか?」
『はじめましてでございます。
ご主人の下僕<マスターのシモベ>ーーーヴェンツェル・ディル・ボリス7世・イワザールスコフ。
略してイワザルでございます』
「は、はあ……そのイワザルさんが俺っち達に何の用事っすか?
てるてる坊主しているようで暇そうだけど」
『お嬢さん達と何の関係もない私ですが、親切心でこの先のご案内を致します。
この街の先に笑う顔<ヘヴンスマイル>が待ち構えています。
殺死合の開始です』
「殺し合い?その笑う男とはなんだ?」
明彦は変態の言葉に臆さずに聞く。
『ヤバヤバです、引き返すことを勧めます。
奴らは体に爆弾をかかえとるんですわ。
爆弾抱えて突進してきます。
爆発する前に駆除してください。
都市迷彩を被っとるので一般人には爆発寸前までみえないんです』
「爆弾!?」
『ペルソナ使いなら多少は見えますが、一番は管制能力に長けたペルソナ使いがいないと詰みですわ。
あとここキモいです、バリキモいです。
生理的に受けつけません。
アフロはだめです。
今回ばかりは我慢できません。
でも、そんなこと言ってサボったらをしたら真のご主人<グランドマスター>に叱られます。
我はハーマンの名の下に……』
そういうと自称イワザルは消えた。
スミスの見た夢……最後にスミスが選ぶ道は?
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