短いですが更新です。
……目を開けると俺は助手席に座っていた。
「◽️君、疲れているね」
ああ……手の質感、手首に刻まれたリストカット跡に目の前で流れる夜景…。
運転席には銀縁眼鏡をかけた厳つい坊主頭の壮年が自分に語りかけた。
前世の、あの場所から逃げ出した時だ。
どうしようもなくどん底だったが……その状況に助け舟を出した人がいた。
ブラック企業に勤め叱責を受け続ける日々……それも労働基準法を圧倒的に下回る賃金。
だれにも相談できず、あまりの辛さにリストカットをして逃避をしていた。
だが、当時のあの男はそんな苦しみを何も汲み取らずに真面目にやれとしか言わなかった。
「……あの人に気づかれないように夜逃げの準備が大変でしたので。
あの、聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「何故、自分を助けたんですか?
貴方に返せるものなんて何もないのに……」
「そうだね……」
あの人は、少し考えてから自分に語りかけた。
「あの人とは仕事上の付き合いはあったけど、君の奴隷のような扱いはよくないって思ってね。
それを助ける余力があったからやっただけだよ。
別に見返りは考えていない……君が元気にやっていければそれでいい。
でももし何かしたいと思うなら……」
その人は俺を真っ直ぐ見つめて言った。
「今日助けてもらったように誰かに助けてやりなよ」
明日なんて来なければいい、死んでしまいたい。
そんな闇から脱却できたあの夜は忘れられない。
……俺は誰かを救える男になれただろうか?
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風景が変わる、
腕の傷はない……手の瑞々しさから前世の身体でなく今生のものだと判断できる。
端正な顔立ちの青年は眠ったように死んでいる。
いや、死んではいないが魂が抜け落ちたような……。
患者名は「結城理」。
俺は部屋を出て隣の部屋を見ると女性が眠っていた……患者名は「汐見琴音」。
ニュクス封印して未だに眠り続ける二人のワイルドだ。
壁にかかっている時計を見ると急速に動いている。
看護師や医者は俺を認知しておらず高速で移動している。
彼らの眠っている間の日々を見せられているのだろう。
理を時間があったら見舞うようにしているのは赤毛の女性……桐条美鶴だ。
眠っている彼に近況を語ったり、部屋の花瓶の花を取り替えたり甲斐甲斐しい。
だが……時折薄らと涙の後が彼女の頬に流れる時がある。
現代医学では解決しない昏睡状態が続いている……彼女の胸中は張り裂けんばかりの不安に満ちているのだろう。
隣の部屋に欠かさず来るのは厳つい体格の青年……荒垣真次郎だ。
テオドアから聞いているが、彼女と相思相愛だったらしい。
残された桐条や荒垣の様子は早回しで見ている俺でもわかるくらいに痛々しい。
……俺はエリザベスやテオドアの依頼で彼らを封印から解放し、ダミーを代わりにおいて封印を維持するプランだ。
____残された家族の悲しみ……君は彼女にさせてはならない____
久しぶりに夢で語りかける声が聞こえてきた。
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12/25(月)
……目が覚めた。
最近は脅迫的な夢が多かった。
ナホビノや人修羅、宇宙の観測者……彼らの軌跡を追体験していた。
だが、今日は前世の夢を見れた。
隣には春がいる。
俺の手を握りしめる柔らかな手。
俺の心の不安に寄り添ってくれている。
俺は愛しい人の髪をそっと撫でる。
彼女の目がゆっくりと開く。
「おはよう、スミス君」
「ああ、おはよう」
とあるメイドの証言
お嬢様……いえ若奥様とは長く仕えております。
旦那様と奥様が別れ、我々が僭越ながら母親代わりございました。
ですが所詮メイドであって母ではございません。
旦那様が若奥様を政略結婚をさせようとしておりました。
我々では諌めることができないのです。
その時の婚約者は女癖が悪く、お世辞にも若奥様を幸せにはできないと察せられました。
スミス様……若旦那様があの男の魔の手から若奥様を守り、若奥様の笑顔を守っておられました。
我々にできなかった事を若旦那様はなされたのです。
そして若奥様と若旦那様は結ばれました。
いずれ、若奥様と若旦那様の子のお世話をする時が来るのを我々一同は心よりお待ち申し上げます。
昼行灯の次に鑑定屋の世界に行くコテハンは……
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ピーコックニキ
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エンマニンジャ
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野良勇者
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史上最強の大工
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Zさん