私、バグナードは学園長であるラルカス師に見出され魔術を学んでいたが……
「失礼します」
「バグナード、君を停学処分とする」
「……は?」
「お前は学園で禁忌の破壊の魔法を学び、実際に使用した。
更に暗黒神の集会に出席し暗黒司祭の祝福を受けた疑惑がある……『表向き』はな」
「今のアラニアの魔神の暗躍が関係するのですか?」
「いかにも。
当学院は、アラニア王家にも百の勇者にも加担しない……だが停学中の魔術師ならその限りではない。
お前は、この道化の賢者の力となりアラニアの魔神の暗躍を防ぐことを命ずる。
荒野の賢者も認める叡智はお前の学びとなろう」
「ハハハハハハ、ワタクシは『シャネルズ・ラッツスター』というケチな道化師で御座います。
『皆をハッピーに』をモットーにしてます、ハハハハハハ」
とんでもないことになったようds。
私、バグナードは、仮面の道化師に連れられて宿『鉄と樽』へ向かった。
仮面の道化師の仲間が滞在しているそうだ。
重大な役目を背負わされたが、未だに夢の中にいるような実感が湧かない感じだ。
優しげな神官のような格好(でも聖印は身につけていない)の人間に、只者でない老年の戦士(あまり衰えを感じさせない)、女性のエルフが待っていた。
「はい、今日から一緒に勉強するバグナード君です、ハハハハハハ。
皆さん仲良くしましょう」
「ショーデルです宜しくお願いします。
貴方もファラリスを信じませんか?」
「ショーデル君、怪しい宗教の勧誘は禁止です」
「我が師よ、後生です!彼は立派なファラリス教徒の資質があるとファラリス神が言っています!」
笑顔で危険な事を言う奴がいる!?
ショーデルのおでこを平手でピシャリと叩くシャネルズ殿。
私はギギギと首を道化師の方に向ける。
「シャネルズ殿……もしやあなたは」
「先に言いますがね、私はファラリス教徒ではないですよ。
フォーセリアの外で『生きている』女神を信仰しております。
ショーデル君は、マーモで拾った野生のファラリス教徒ですが……才能があるので弟子にしました。
自由とは、人生とはというのをワタクシが教えています、ハハハハハハ」
私の知るファラリスは欲のままに悪行をなす存在だった。
だが、シャネルズ殿の話では『汝欲する所を為せ されど理知的であれ』と人は何でもすることができ、それを試みるからこそ向上があり、制限を課して自らを閉ざすのは悪である、欲望を否定せずその実現を求めて生きよというのが本来の教えであると。
私は少し共感を覚えてしまう。
ショーデルはそんな私を見透かしますますニコニコしだす。
「ま、恩人や狂人の言葉に深く考えすぎないほうがいいぞ。
俺はアッシュ、傭兵だ」
「私はルシーダ。鏡の森のエルフよ。
ナ……シャネルズに魔神に狙われた黄金樹を匿って貰い、仲間のエルフの避難場所を用意してくれた恩を返す為に戦っているわ」
アッシュとルシーダは真っ当なのに私は安堵した。
『シャネルズ・ラッツスター』……一年以内に突然現れた賢者でフレイムの風と火の部族を纏めた竜騎士ナシェルの部下で、精霊を解放した優れた精霊使いにして神聖魔法の使い手。
ライデンの商人に新たな富を生み出し、フレイムの開発を行う。
魔神と戦いながらロードスの五大竜のエイブラとナースを解放し、シューティングスターを倒すなど武勇伝も事欠かない。
だが、荒野の賢者ウォートや赤毛の傭兵ベルドと違って以前のナシェルとの関係が一切見えない謎の存在……筋肉質ではないが猫の様な身のこなしから盗賊ギルドの幹部の様にも見える。
もしや、シャネルズ・ラッツスターとは個人ではなく集団ではないのか?
思わず呟いたら一同は大笑いしたので個人ではあるようだ。
シャネルズ殿が要件を切り出す。
「今回アラニアに来たのは……魔神王復活の危機を神託を受けて来たのだよ」
「魔神は既に復活しているのでは……?」
「君は魔神王が一人だけだと思ったのかな?」
「なん……だと?」
「魔神将までは犠牲が出ても倒せる存在だが……魔神王だけは別格だ。
古代魔法王国で作られた魂砕きか神官のコールゴッドしか現状では対抗手段はない。
魂砕きはモスの魔神王が持っているから実質、ワタクシのコールゴッドが対抗手段ですな、ハハハハハハ」
復活を阻止するか、命懸けで倒すとは……道化を気取っても賢者なのだな。
え、両手両足が折れて、身体が潰れる程度だから心配ない?
???*1
「流石我が師、そこに痺れますし憧れますね!」
「いや、魔術師さんの反応が正しいからな?」
「そうよね、でも彼に慣れ始めている私がいるのよ……」
「ハハハハハハ、話を進めますよ?
魔神関連の書物をウォート先生が持っていますがそれがこの世に一つだけじゃないでしょうし。
魔神が封印を解くのか、誰かを唆して解かせるのか……。
封印解放を阻止してそのまま異次元の魔神王を放逐するのが最上ですが、最悪魔神王と戦うかもしれませんな」
楽しげに笑う道化師。
だが、目は笑っていないし狂気に囚われていない。*2
勝算はある様子だ。
「ラルカス師は貴方に協力する様に命じましたが、何を期待しているのですか?」
「賢者ラルカスの期待する麒麟児の知性や才覚ですな。
あと、戦力として古代語魔法の使い手も欲しかったのもあります。
それと、賢者の学院で召喚術の使い手についても聞きたいですな。
もちろん対価は払おう、魔術書……の代わりを貸してあげよう」
シャネルズ殿が袋から取り出した冠……まさか!?
「知識の額冠……」
「その通り、知識を求める魔術師なら、コイツを被って古代魔法王国の叡智を手に入れたいだろう?
この前ナース君に交渉したら快く譲って貰ったよ。
ワタクシは被る気はありませんがね、ハハハハハハ」
私は思わず唾を飲み込む。
太守の秘宝のひとつ。所有者の知識を蓄え、身につけた者にそれを供給すると同時に新たな知識の分だけ上書きされるという。古代王国期から蓄えた分の知識は莫大なもので、所在は不明であったが、マーモの邪竜ナースが守護していたのか。
「まぁ知識が欲しいならテストを受けてもらう。
別に魔神を殺してこいとかそういうのじゃなくてワタクシと面談をするだけですがね。
おっと話が逸れたのでバグナード君の話を聞きたい」
私は知っている事を話した。
召喚魔術の権威グラディカル導師……温厚な性格で生徒に人気があり、勿論魔術師としての実力も超一流でラルカス師も認めている。
魔神について憂いているのできっと我々に協力してくれるだろう。
あと魔神に襲われたという話がアラニアで増加している。
百の勇者を追い出したが、魔神がいなくなったわけではない。
アラニア王家や貴族は有効な対策をうてていない。
「まぁアラニアだからな、しかたない」
シャネルズ殿の理屈は理解できないが、アラニアやカノンの王族貴族に期待していない様子だ。
実際ターバのマーファ教団やドワーフの鉄の王国がいなければ私も呑気に学問に打ち込めていないかもしれない。
シャネルズ殿の提供した『ダイヤモンド・アイ』なる魔神看破の神具がなければもっと大変だっただろう。
我々は、今日はもう遅いので明日、グラディカル導師に会う事にした。
その夜、一通り飲んだり食べたりした。
シャネルズ殿は器用なようで、料理人顔負けの斬新な料理を披露した。
アラニアはロードスでも洗練された文化を持っているが、シャネルズ殿の料理は更に先をいく!
王侯貴族ですら食べたことのないものだっただろう……賢者たる所以を私は感じた。*3
その夜、シャネルズ殿に呼び出された。
道化師姿でない、普通の青年の姿だ……私と同年代くらいか?だが風格が違う。
聖女や聖者、天才のような何もかも凡人とかけ離れた『何か』をもった存在ではない……多くの経験を積んだ厚みを感じる。
シャネルズ・ラッツスターとは偽名で、本名はナロモブというらしい。
神の啓示を受けて多くの知恵と力を得たそうだが……
「君の果てなき知識欲については理解しているつもりだよ、ラルカスさんよりね」
私は心臓を鷲掴みにされた感覚がした。
私は魔法王国の知識と魔法に心を奪われた……どこまでも知りたい、その極みに辿り着きたい。
だが、人間の人生には限りがあり、ラルカス師は破壊の魔法を禁忌としている。
「破壊の魔法は大陸では普通に教えているからな、マナ・ライが。
魔法王国は失敗した……そしてその災厄は大陸の無の砂漠で休止しているがいずれ再起動するからな。
知らないままではいられない」
「世間話をする要領で推定禁忌の知識を披露されると、その……困ります」
「困るねぇ」
頭痛と胃痛がしてきたが……。
「まぁあれだ。知識を公共のために使うのもよし、貯めて貯めて自分の知識欲を満たして死蔵するもよしさ。
他人の迷惑にならないならな」
「……」
「無限に学ぶならハイエルフ並みに生きれればな……だがバンパイアやノーライフキングになるのはお勧めしないがね」
私も無限に学べたら……と夢想した事があった。
ファラリス教の信者は死後にバンパイアになる事があるそうだが……ファリス神官に狙われるし普通に騎士の討伐対象だ。
ノーライフキングまでいけば国を滅ぼせるだろう……二度と太陽を拝めないが。
「ノーライフキングは古代魔法王国の死霊術師の奥義と言われているが成功例はないと聞いている」
「古代魔法王国、最後のロードス太守サルバーンは秘術に成功してロードスの何処かに潜伏しているのは知っているね?」
「知りません、ラルカス師も知りませんよ」*4
「まぁ古代王国の魔力の塔が万全だった時でも博打だったわけだ……探せば他に成功例はいるんだろうが伝説になっていそうだ、大陸とかで。
ちなみに太守の秘宝『生命の杖』『魂の水晶魂』というカーディスの神官が作った祭器を使えばファラリス教徒でもカーディスを降臨させられるのでお願いすれば確実にノーライフキングになれますね!因みに無断で
もうすぐカーディスのしもべの転生者は出てくる周期なので前もって企みを潰す必要があるので……確かに有用ですが、その由来を知っているので」
あらゆる傷を癒す生命の杖と死者を蘇生する魂の水晶球を廃棄だと!?
危険性を知っているからこそ躊躇なく行ったのだろうが、狂気の沙汰のようにも感じる。
(※「Don't Boo!ドンブラザーズ」BGM)
「そこで健康的で、邪悪認定されて正義の名で殺されないプランを用意しました!
竜です」
「竜?」
「ハイランドは竜騎士、竜使いの国ですが……遡れば竜司祭なのです。
竜司祭……その信仰は竜であり、竜になるのが目的です。
自分の腕を竜の腕にしたり、背中に竜の翼を生やしたり……秘奥は竜として転生するわけです。
歳を得て知性を取り戻せばこっちのものです。
無限に学べる人生の完成です、いや竜に転生するので竜生ですね!
身体デカいと思ったら魔法で変身すればいいですし、今ならこっちでサポートするよ?
お前も竜にならないか?」
じかーい、じかい。
立ちはだかる壁も手加減一発、岩をも砕く!
導師の邸宅で殺人事件!
たったひとつの真実見抜く、見た目は大人、頭脳は老害、その名は迷探偵シャネルズ!
ドン32話 『バグナードとアラニアの囚人』
※ハリーポッターのタイトルを揶揄っただけなので内容とタイトルは関係しまぜん。
ジェイ・ランカード(笑)氏もといウッドチャックは出てきません、念のため。
恋姫・熱血硬派が連載化したとして……誰がサポートに入る?
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休暇中のバッタモン(酷い事になりそう)
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スミスが分身だけ派遣(酷い事になります)
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いや!俺は男だ!!助けなんかいらねえ!!