クジンシー達の初陣がはじまる。
マンタームの群れが穴から這い出てくる。
「総員配置についてくだせえ。
デザートランスで前衛班が凌いで、トライアンカーで殲滅」
「オイ貴様」
「手柄は隊長さんに上げますんで。
その代わり、アッシらは安全が欲しいんでござんす」
自称腕自慢(笑)の隊長が真っ赤になってアイル達に殴りかかろうとするがクジンシーがウザ絡みするように肩を組んで妨害する。
「まぁ見てなせぇ」
「うおぉおおお!転べぇえええ!」
「殺される前に転がせええ!」
「時間を稼げば勝てるぞ!」
マンタームのスコップ攻撃をジウンノテ達前衛班が陣形デザートランス(四人版)を形成して、弾きながら足払いで転ばしながら殴り倒す。
先頭のジウンノテは防御・カウンターを専念し、残る三人がそれぞれ転ばせたマンタームを後続のターム達の障害になるように活用している。ー
トライアンカーの陣形を組んだアイル達は先頭の三人が武器を振るって立ちあがろうとしたマンタームの頭部めがけて一斉攻撃してトドメを指す。
ジウンノテ達がマンタームの死体や転んだ個体を踏み越えてくるマンタームを転ばせる。
「時は来た」
「12の星神よ、許されざる者達の頭上に彗星を降り注げ!」
「ゾディアックフォール!!」
三人の術法が組み合わせて空より彗星がターム達に降り注ぐ。
「す、凄え……い、いや下級市民がこんな事ができるのはインチキだ!不正だ!」
「卑怯でも不正でも勝ちゃぁいいんですよ隊長さんよ」
多くのマンタームが残骸になった。
奥で、ダメージを受けてヨロヨロになったタームソルジャーがいた。
隊長は、それを見て喜び勇む。
「フ、フン!貴様ら下等階級との違いを見せてやる!強撃!」
隊長の力任せの大剣の振り下ろしで兵隊アリにトドメを刺した。
「(最強の技がソレかよ……アイル達の攻撃で弱っていないと簡単に避けられる位に練度がない。
よしんば当たっても弾かれたかもな)」
「俺の命令で動かなかった罰を与えてやる!かくご……」
大きな蟲の鳴き声がした。
スコップも剣も槍も武装していない一匹のワームが穴から飛び出してきた。
「何も持っていないアリだぁ?ニートなど俺様が切り捨ててうぎゃああ!」
アリの蹴り一発で弾き飛ばされる隊長。
今のアリは
本気だったら、あるいは武器でなく身体を蹴られていたら戦闘不能だった。
隊長は、新人を嬲るだけでまともにタームと戦った経験はほぼ無い。
故に……
「お、お前ら!俺は後方で体勢を立て直す!それまで死ぬ気で守れ!
おい、邪魔だ!」
「が……!」
慌てて逃げようとする隊長だったが進行方向にいたジウンノテがいたので大剣で斬りかかる。
まさか斬りかかると想定しなかったジウンノテはまともに攻撃を受けてしまう。
「兄さん!」
「こ、コイツ……ジウンノテを斬りやがった!」
「邪魔をしたから処罰しただけだ!逆らうならお前らも斬るぞ!」
陣形が崩れたジウンノテ達のほうげ飛びかかるタームバトラーだったが……
「ストーンシャワー!」
クジンシーが大規模な術法を用いる。
タームバトラーや地面の穴に向かって無数の岩の雨が降り注ぐ。
地面の穴が塞がり、逃げようとした隊長は石に押しつぶされ、岩の下から真っ赤な血が流れている。
タームバトラーは石の雨を受けながら辛くも生き埋めにならなかった。
術を唱えた者へ最上級の警戒心と敵意を持ってタームバトラーが攻撃しようとしたが……
「デルタペトラ」
三角形の魔法陣から白い煙がタームバトラーに降り注ぐと石化してしまった。
クジンシーはゆっくりと近づき、空中に宙返りしながら蹴りを叩き込むカポエラキックを石化したタームバトラーに叩き込むと粉々に砕け散った。
ジウンノテはアイルから生命の水で傷を回復させた。
「指揮官死亡により暫定的にアッシが仕切らせていただきやす。
大丈夫ですかい、ジウンノテ」
「ああ、クジンシーがいなかったらあいつに斬られなくても死んでいただろう。
助かった」
「だがよー、裏切りチキンがトマトチキンになっちまったけどどうするよ?」
ジウンノテ前衛班のお調子者がクジンシーに聞いてくる。
編笠をしたままで表情の見えないクジンシーが顎に手を当てながら考えた末に…。
「勇敢な隊長サンはタームソルジャーを撃破し、穴の奥へ突入しようとした。
するとタームバトラーが奥に存在していて術法を受け隊長サン戦死した。
アッシ達は隊長の死体を引き摺りながら後退し、術法で穴を塞いで逃走した……という筋書きにしやす。
幸い合成術法で火力を出せやすから説得力が出やす」
「そうか、タームバトラーが使う術法を使ったのは隊長を排除するためだったか」
ジウンノテは、バッタモン&昼行灯の死神の作戦『ルドン高原送り』の実態を理解した。
「え、クジンシーが頑張って倒したじゃダメなの?」
「アイルのお嬢ちゃん、アッシが倒したと触れ込んだらどうなると思いやす?」
「えっと、仇をとったし凄い力だと褒められる?」
「正解は処刑する、だ」
「ええ!?」
「みすみすお貴族サマを死なせた下級市民相手なら間違いなくそうする。
殺していなくてもアッシが仕切って結果を出した時点で隊長サンはアッシを闇討ちしただろうさ」
「し、信じられない……あんな危険なアリが外にいるのに……」
人のいいアイルは狼狽するが、クジンシーは続ける。
「内にアリが出ないとそんなもんさ。
基本的に同化の法を決めすぎたお貴族サマは『会話ができても話が通じない』と思ってくだせえ。
アンデッドの方がまだ話が通じやす」
「ええ……」
「なぁ兄弟、ジョークだよな?」
アイルとお調子者は困惑する。
「兄じゃないでござんす。
機会があれば見せやすよ。
本当に冗談で有ればよかった……」
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アッシ達の初陣は終わった。
穴の偵察が出来ずじまいだが、タームソルジャーやマンタームの残骸や武器を提出・報告し、精鋭が穴の惨状を見て証言が真実であると判断されアッシ達はお咎めはなかった。
新しい隊長が10日後にくるのでそれまでは訓練するようにという命令を受けたわけで。
アッシが技や術を指導したり、アッシが魔物を『喚んで』実践経験を積ませたりしている。
今はアッシは『来客』の相手をしている。
「君が報告書を書いた者か?」
「へ、へえ左様でお貴族様」
ワグナス!なんで急にやってきたでござんすか!?
昼行灯の次に鑑定屋の世界に行くコテハンは……
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ピーコックニキ
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Zさん