玲瓏な雰囲気を醸し出すワグナス……だが『墜ちる』前は冷酷さ・酷薄さはない。
代わりに人の良さというか足元掬われそうな感じがするな。
……同盟の面々から仕入れた情報では『天変地異による世界の崩壊がサグザーによって半年後と予測された直後にターム族の大規模侵攻が始まったこと』が本格的な七英雄の物語が始まるわけだ……鑑定屋の旦那の鑑定結果ではもう少し先だが……。
「報告書を読ませてもらったが……君の考えた
「とんでもねぇ……アッシのやった事は弱者の悪あがきにすぎやせん」
この言葉は事実だ。
技を練り上げられない新兵でもマンタームを撃破していくにはこの手段しかない。
ある程度で頭打ちになるのである程度戦場で成長したら個人技を磨かねばならない。
分断されたり、誰かが死んだら途端に崩壊して全滅する脆弱さはこの先の戦いでは許されない。
「だが新兵ばかりの部隊で一人も死ななかったのは君の隊だけだ」
「隊長サンが『勇敢に』戦い、亡くなりやしたがね」
「『勇敢』?ああ、そうだったね。
タームが年々、増加傾向にある。
公式発表はまだだがターム対策の部隊を増設する予定だ」
「それはそれは……」
「どう思う?」
「アッシに関わりのないことでござんす。
上が行けと言われれば行き、死ねと言われれば死ぬのがアッシら下等階級や
あくまで下等階級の下っ端として振る舞っている。
ワグナスに協力するにせよしないにせよ、生き延びる為には目立たぬことが重要とセンセイがいっていやした。
腐った上層部に睨まれると処刑や追放は起こり得る話だ……。
「私は何も聞いていない。独り言でも言うと良い」
「……厳しいですね。
弱いマンタームですら数が多く、戦えない人間を容赦無く肉団子にしちまいやす。
仮に全員が戦って差し違えたとしても数の多いアリが勝つのは明白で。
……そもそも海や山が気象が荒れて獲物が少なくなっていやすし、作物の収穫量も少ないらしく、不安になっていやす。
そんなんで一枚岩になれやすかね?」
「……だからこそ死ににくい戦力を整える必要がある。
お前達の隊も必要だと判断している」
「命令されれば拒めやせんがね。
せめて訓練を真面目に出て、無意味な暴力を行わないでいて、部下の意見を聞ける上官であると祈りたいものでござんす」
「隊の結束を乱す無能は必要ない。
そこは信じて欲しい。
……ああ、言い忘れたがお前の偵察した穴に珍しい石があってな」
「石、でございやすか?
魔石やら宝石でもありやしたか?」
「石自体は普通だが……組み合わせるとタームの足やら羽根、胴体に酷似した石像になってな」
「いやぁ、タームにスコップや剣や槍を持っているので石像でも作る風習を持つくらいに賢いのかもしれやせんね」
「……」
「……」
「辞令が下るまでは訓練や近隣のタームの間引き任務を行うことになるだろう。
今日はご苦労だった」
アッシは、猫背のままお辞儀をして去っていった。
・
・
・
「信用されていない、か。
当然か」
ワグナスは、報告書を読んでおり、十人長が乱暴なだけの無能である事は把握していた故に真相に思い至った。
更に、偶々巣穴の調査に同行していた知恵者が粉々になったタームバトラーの石像……いや、『石化した後に鈍器で砕かれたであろうタームバトラー』を発見したお陰で『実力者であるクジンシーが新兵を率い、タームバトラーを倒した」のだと。
「(たたかいのなかで十人長が戦死…いや足を引っ張るか逃げ出そうとしてクジンシーに粛清されたか。
……砕かれた石像を発見し組み立てた者に感謝だな、たしか『ボクオーン』だったか。
それにしても、底知れない男だ」
自分は親友であるノエルほどではないが腕に自信があるほうだ。
だが……あの男の底は読みきれない。
ただの一兵卒にしか見えず、一刀で切り伏せられる印象だったが……
「(あの目は、私を恐れていない。
警戒はしているが……脅威と思っていないように思える。
信用を得て味方に取り入れたいものだ)」
昼行灯の次に鑑定屋の世界に行くコテハンは……
-
ピーコックニキ
-
エンマニンジャ
-
野良勇者
-
史上最強の大工
-
Zさん