サンサーラ同盟掲示板   作:Dadaga

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木枯らし新宿伝 7話(ロマサガ2)

<一年後>

 

 

「今日からお前達の隊長になるジウンノテ百人長だ。

 こちらが副官の医療班担当アイル十人長と新人教官担当クジンシー十人長だ。

 近年増加するタームと戦う兵団として貴様らは参加した!

 貴様らの役割は、強くなり一匹でも多くのタームを倒し生還する事だ!

 貴様らが差し違えてもそれ以上に増えていくのがタームだ、故に死ぬことも許さん。

 我々がタームの最前線だ!我々はタームなぞに断じて滅ぼされはせぬ!!

 今から……貴様らに地獄を見せてやる!クジンシー十人長」

「へい……まずは皆さんは完全武装、食料や野営装備をしたままひたすら行進していただきやす」

「教官殿!いつまで行うのでしょうか?」

「お坊ちゃんいい質問でさぁ。

 軽く暗くなるまで訓練場を周回していただきやす」

 

 

 

原作……って奴の通りにワグナスはノエルに『赤竜隊』を編成した。

ただ毛並みの良いやつで気合いの入ったヤツを選抜した部隊で、アッシらみたいな下級市民や奴隷階級(短命種)は下部組織『黒犬隊』として編成された。

最初期のメンツは戦いの中で生き残り順調に成長しやした。

特にジウンノテは戦士としても指揮官としても頭角を表し、黒犬隊の隊長としてアッシらは押し上げた……最も赤竜隊の一般兵は百人長のジウンノテを見下し、顎で使おうとするがな。*1

アッシが鬼軍曹的な教官で嫌われ者を引き受けやした……赤竜隊や他の隊は側から見れば、訓練では新人を虐めぬいて実践においては背後で偉そうに指示を飛ばして何もしないで偶に弓を撃つ程度にしか見えないので『嫌われ者』のクジンシーと揶揄されている。

 

 

「クジンシー師父は何故、言い返さないのです!?」

「側から見ればそんなもんさ。

 アッシにとっても都合が良いから黙っていなせえ」

 

 

アッシには意外にも軍人教官の類が向いているようで、短命種の兵隊にこんな風に信望者と化している。*2

雲の上の上役のノエル隊長サンには数える程度しか話していやせん……アッシには関わりのない事でござんす。

ですが……ボクオーンには会いやした。

初陣でタームバトラーの石像を見つけたのはヤツだったようで、アッシが実力を三味線引いているのとタームの論文を書いた筆者と確信したようでアッシの仕事の合間にやってきて戦術を話し合う。

 

 

「巣穴を崩して生き埋めは元々アリの奴らには効果が薄いだろうが、火攻めはどうだ?」

「『焼き尽くす』くらいの火力なら始末できやすが油に火をつけてからの火攻めではマンタームならどうにか死にやすがそれ以上では少しばかりの痛手でおわりやしょう……忌々しい事に煙で窒息させようにも時間がかかる。

 まだ水中に落ちるのを嫌うから水責めのほうが目がありやしょう」*3

「ふむ……だが巣穴を埋めるほどの水を流すのは非現実的か」

「フラッシュファイアを覚えたえ兵隊で間引きして精鋭がクイーンを討ち取るほか勝ち目はないでやんしょう。

 ただ……クイーンが後継者の卵を残していたら遠い未来でタームが再び満ちやしょう」

「詳しいな……まだ見ぬエンシェントタームやクイーンの生態を知っているのは兵に志願する前に巣穴に入り込んだ時に身を持って情報収集したのだろう。

 だが、倒した後まで言及できるのは……」

「さぁ、アッシは論文を書ける学のあるわけじゃありやせんが……小さいアリの生態や他の昆虫の魔物の生態学を突き合わせればそういう風に推理できやしょう」

「……フン、そういう事にしておくか」

「よしんばタームを倒せても滅びやしょう……この異常気象ではアッシらがマトモに生きれる場所はないでござんすから」

「(上でなんらかの対策をしているらしいがクジンシーが『滅びる』と断言するのは……)」

 

 

とまあ、徐々に深刻化している。

黒犬隊もタームバトラーに遭遇して死亡もしくは戦線復帰不可能な重傷者が少なからず出ている……赤竜隊や他の隊に比べれば損傷率は低いがな。

こうして新人教育をしていやしたが……珍客がでやした。

 

 

「ここが黒犬隊の宿舎ね、建物も兵も貧相ね」

 

 

口の悪いメスガ……お嬢さんがやってきたようだ。

兵隊という気が荒っぽくなる環境で愚弄すれば拳で黙らせるが押し倒されるかだが……青い髪で完璧な均整の取れた女体、そして芸術品めいた美しい顔と声の持ち主であったために、兵隊達は怒りではなく歓声をあげていやした。

アレがロックブーケ……赤竜隊隊長ノエルの妹で後の七英雄。

なるほど、男に好かれそうな体つきだ……前世のガキの時ならアッシも猿になっていやしたでしょう。

 

 

「お貴族様のお嬢ちゃん、ここは泥に塗れてタームと殺し合うことで飯を食っている下級の兵舎でござんす。

 迷子でしたらアイル十人長に街なり赤竜隊の宿舎にでも案内させやしょう」

「頭まで野良犬なの?ここに用があって来たの」

 

 

ジウンノテには目配せしてノエルを呼んできてもらって、アッシが対応している。

話を聞くと、兄のノエルが心配で一緒に戦いたいのに断れたらしい。

それだけなら『ふぅん』の一言で終わりやすがノエルが黒犬隊の規律と練度をベタ褒めしていたのが癪に触ったらしい。

だから黒犬隊を叩きのめして認めさせると抜かしやがるぞ、このクソアマ。

ロックブーケは新人共を見て見下してアッシに言い放つ。

 

 

「私一人でこの隊全員叩きのめすことができそうね?」

「やめましょうや……」

 

 

手から術法の召雷を放つ準備をするロックブーケにやんわりと釘を刺す。

 

 

「お貴族様と違ってここにいる新兵は教育を受けていやせんので教育が必要でござんす。

 力を証明したいとのことですが、腐ってもアッシは教官。

 アッシを倒せれば普通に兵隊として働けるでござんしょう……できるなら、の話ですが」

「弱い者虐めしかできない『嫌われ者』くらいわけないわ!」

 

 

アッシを『嫌われ者の雑魚』と揶揄されてアイルは頬を膨らませる……十人長なのだから威厳のある振る舞いをしてほしいと思うんでござんすが……。

弟子達も眉を顰めているが……アッシに叩きのめしてほしいと目で言っているので『わからせる』としよう。

訓練場の真ん中で互いに対峙する。

 

 

「じゃあ、お好きなように抜きなせえ……ああ、他が見ているから巻き込むような技や術法はお控えなさって」

「待ちなさい!武器を抜きなさい!」

 

 

小剣を構えるロックブーケは激怒している。

アッシの腰の小剣……というか反りの少ない脇差やら背中の弓を抜いていないで背中を掻いていた孫の手しかない状態だから無理もないか。

 

 

「いや、始まりやしたし……『このまま』でお相手しやしょう」

「バカにして!」

 

 

確かに素早く練度も高い……がいきなり大技(百花繚乱)を振るって来たが、ロックブーケの出だしの突きを斜め後ろに後退し、アッシの左足にあった場所に右足を据える。

ロックブーケがアッシの胴体を突こうとするが空いた空間に突いてしまい、アッシが隙ができたロックブーケの小剣を孫の手で上から叩きつける。

 

 

「く…!」

 

 

ロックブーケは手首を巻き返して再攻撃しようとするが。その瞬間にロックブーケの手の甲を孫の手で叩く。

衝撃で取り落としたロックブーケに孫の手を突きつける。

 

 

「勝負あり、でよろしいでござんすか?」

「認めない……こんな事って……」

 

 

頭が血が昇って負けを認めずに術法を撃とうとしている……しかも広範囲に巻き込む『召雷』を。

アッシは喉を潰すつもりで空いた手を貫手に変えようとしたら…。

 

 

「ロックブーケ!」

「ノ、ノエル兄様……」

 

 

ジウンノテの話を聞いてノエルが駆けつけたようだ。

ロックブーケが青ざめている……普段ここまで兄から怒りを示されたことはあまり無いようだが……。

ノエルはロックブーケを連れて行ってかなり絞られたようだ。

後日、ノエルがアッシに謝罪しに来た。

 

 

「愚妹が迷惑をかけてしまった。

 誠にすまなかった」

「謝罪はうけとりやしやた。

 新兵達にも良い勉強になりやしたし、アッシが妹さんを怒らせて冷静さを奪わなかったら危なかったでござんす」

「謙遜する必要はない……ワグナスが推薦した部隊の実力は伊達ではないようだ。

 今後は赤竜隊と黒犬隊は連携しないとならないのに、君の実力が理解されていない」

「下級市民がしゃしゃり出れば上は目障りでござんしょう?

 うちの隊が死人が出ないように強くなれば万々歳でさぁ」

 

 

……毛色の異なる部隊をどうやって同じ作戦に従事させるかノエルは悩んでいるようだ。

確かに先が思いやられる。

 

 

 

 

*1
ワグナスは軍の規律を守らないなら処罰するし、ノエルも叱り飛ばすので最近は表立ってはやらないが

*2
奴隷階級を見下さず、しっかり訓練させて強くさせているので当然である。

因みに……ロマサガ2 舞台版『七英雄の帰還』ではクジンシーは隣国ボルダイの自称武人で、道場主として300人の門下生を抱える身と豪語している。

いつもは調子のいいことばかり言う自分大好きなナルシストで、ロックブーケが好きなDQN。

強い者には媚び、格下と見た相手には居丈高になる性格。しかし本質は弱虫で泣き虫のため、自分からケンカを売ったり見下したりするようなことはしない。一方でプライドは高いため侮辱されるとすぐに剣を抜いて怒るキレる若者。

なお、舞台版だとノエルがサグザー吸収したり、ボクオーンがお爺ちゃんだったり、スービエが海の王の娘とラブラブだったりとリベンジオブセブンとは設定が異なる。

*3
伝説の帝国『アリだー!』なイベントで『ほぎー!』と中から食い破って死ななかったのは長年タームに悩まされて対策を知っているモールと水中にいたネレイドだけであった

昼行灯の次に鑑定屋の世界に行くコテハンは……

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