『始、言いたいことがある』
「聞くだけ聞いてやる」
『レスポンス不可、外殻強度不可、コートのデザイン最悪…』
「あっはっは、今すぐ地獄に送ってやろうか、アアァン?」
コヤツ……YAMAが量子コンピュータ内蔵のスーツver0.44にケチをつけやがった。
いや、スパコンに比べれば窮屈だしソフトもハッカー向けじゃなく一般向けだし素材はオリハルコンどころか高級素材でない叩き台レベルなのだが。
ホームに持ち帰り台場巽やアナに引き合わせてもう少しバージョンが進化させた。*1
ハッキング機能の向上はいいんだ。
マニュピレーター追加など進化したがYAMAが学習していくのでこれからなのだ。
「じゃあアナ、巽さん、このポンコツAI内蔵スーツの運転テストをしてくるわ」
『訂正を要求』
「却下」
「漫才のテストならここでしたら?」
アナの癖に生意気な……。
「安全(俺基準)に試せる相手がいるんでね、ステイツに。
まぁ親父の用に付き合うんだが」
「おじ様の?」
「とあるお方と俺を引き合わせるついでにその周りの『ゴミ掃除』をね」
<アメリカ ニューヨーク ハーレム>
「が……!」
「Why Japanese monkey…」
「うるさい」
いやぁ治安が悪い事悪い事。
いまこの街がブラスコファミリーとかいうのがヤク売ったり暴力でブイブイ言わせているようで。
「やはり一度この街の悪を一掃せねばなるまい…」
「親父どの、一体態々ニューヨークへ?」
「お前に会わせたい人がいる」
チンピラ……地元のじゃない余所者をしばきながら奥に進み、小さな家だ。
「おい!ここはイエローが来ていい場所では……」
「この方は通せ……」
黒人の男達が行く手を阻もうとしたが、家の主人の意向を聞いた男性が道を開けるよう指示した。
家に入ると、ベットからどうにか身体を起こした小さな黒人の老女がいる。
足腰と目が不自由な様子だが、親父の気配を感じて声をかけてくる。
「風(ウインド)かい?」
「はい、お久しぶりですママ・マリア」
ママ・マリア……ニューヨークのハーレムの黒人たちの中で、最も尊敬されている最長老の女性だ
すでにかなりの高齢であり、現在ではハーレムでも一目置かれている巌のみが面会を許されている。足腰と目が不自由だが、その手を握った者の心の中を見抜くリーディング能力を持ってその人の本質を見抜く。
俺の顔を触る……
「貴方……風のように気ままで軽やかね。
それでいて凪いだ水面のように澄み切っている……風(ウィンド)が自慢したくなるのがわかるわ」
「……二代目(ツヴァイ)と呼んでください、ママ・マリア。
お会いできて光栄です」
「私はそんな大層な存在じゃないわ……。
貴方は背中に精霊を背負っているわね……まるで主人を失った執事みたい……」
「(YAMAも認識するとは……)しょうがないので拾ってきたんですよ。
ママ・マリアお願いがあるのですが……」
「何かしら?」
「少しばかりここに滞在してもいいですか?」
「かまわないわ……ここにいる皆ともきっと仲良くなれるわ」
「ありがとうございます。
早速『挨拶回り』と『近所の掃除』をさせてください。
日本では当たり前の習慣なので」
早速、親父と一緒にブラスコファミリーに殴りかかることにする……正確にいうと親父は見ているだけで俺だけでマフィアをぶちのめせって訓練の一環的なノリだが。
罠や警備員や猟犬がいるが問題なく『清掃』していく。
YAMAが早速ネットワークから情報を引き出したところによると……
『ブラスコファミリーの一番ボスはカルロス・ブラスコであるが……
妻のカルメラ・アグリッピナ・ブラスコの方が真のボスと言っていいだろう』
「優秀なのか?」
『抗争で勢力が減少したブラスコファミリーだったが、シシリアン・マフィアのドン・パゾリーニが娘を嫁がせて勢力を回復させたからだ』
「スポンサー様に逆らえないと……で、裏ボスの評判は?」
『癇癪持ちで機嫌を損ねて石を咥えさせた死体が路地裏に転がしている事例が多い。
芸術家を自称し、莫大な費用でコレクションを集めていてファミリーの財政を傾けているらしい。
ハーレムに麻薬や武器を売って赤字を補填すると考えられる』
「では格付けチェックしながら失脚材料を探しますか……親父」
親父もわかっているようで、無造作のクナイを投擲する。
二つの陰が転がり込んでくる。
流石に牽制は避けるか。
赤い髪と青い髪の二人組が出てきた。
「俺たちファルコ兄弟」
「ジーッとしててもどうにもならねぇ!」
赤いヤツに飛び膝蹴りを俺がかますと盛大に吹っ飛ぶ。
……あれ?
「ロッソぉおおお!!よくも兄者を」
それ以上喋る前に親父殿が当て身で昏倒させた。
拍子抜けだったが屋敷に時限爆弾を仕掛けていく。
ワガママババアのコレクションを異空間に放り込んでいくのだが……
『明朝の壺とプレートに書かれているが釉薬の成分、作風から30年前に作られた贋作と推定。
マネの絵画の贋作……』
「マネの真似とは洒落かな?」
『真贋の見極めができないと結論できる。
いずれも贋作だ』
「よーし、芸術(笑)を爆破からお救いして全部偽物だってネットに画像で晒してやろうぜ」
「き、貴様ら!妾のコレクションを狙う不届者か!!」
ショットガンを構える厚化粧のB……げふんマダム(笑)、奴がカルメラか。
適当な石を投げてショットガンを弾いていく。
「カルメラ・アグリッピナ・ブラスコ、これは警告だ。
ハーレムの街に手を出すな。
今回は報復で屋敷を爆破するが、まだ手を出すならこんな者で済まさない」
「妾の至高のコレクションが……!!
お前たち!急いで出すのじゃ!出さねば家族を殺すぞ!」
俺の警告を聞いてもコレクション(笑)を気にして倒れた警備員やファルコ兄弟をむりやり蹴り起こして屋敷の奥に向かった……
しばらくして爆破音がして屋敷が倒壊した。
「え……サイボーグ兵やら生物兵器とか軍人崩れの群れとかないまま終わるの?」
「始、一応ファルコ兄弟はブラスコファミリーきっての武闘派で最強戦力だからな……エグリゴリの下部組織とは違うぞ」
スプリガン世界だとボーみたいな野生の超人とかミュータントと出くわすことが多かったからつい……。
「なんか厚化粧の人のご実家が雪辱に燃えて兵隊送りそうだしな……手を打つか。
ついでに恩も売ろう」
「ほう、誰に恩を売るつもりかな?」
「オヤジの友達に」
・
・
・
<ワシントンD.C 副大統領公邸>
ホワイトハウスから約3キロ離れたワシントンD.C.の海軍天文台の敷地内にある「副大統領公邸」で休息をとっている白人男性がいた。
当然だが副大統領である彼を護衛がついているのだが……
「ジェイムズ・フリント副大統領、お時間をいただきたい」
若い青年の声がする。
アポを取った覚えはない……護衛が『招かざる来客』を排除する筈である。
それを最も簡単に突破する存在は只者ではない。
副大統領は、努めて平静にドア越しの青年へ声をかける。
普通の政治家なら侵入者へ警戒や恐怖を露わにするが、副大統領は鉄火場に立ったことがある故に余裕のあるような態度を崩さない。
「何の用だね?
態々深夜に訪問するとは…」
「『父の友人』である貴方にお届け物をしたくて」
「私の友人……?」
副大統領は訝しんだが、中に入るように促した。
黒い髪に黒い瞳、猛禽類を思わせる鋭い眼光の少年……。
直感的に脳裏に浮かんだのは……副大統領になる前、CIA長官だった時期、『組織の総力を結集してもたった一人の男に敗北した』瞬間だった。
「風(ウィンド)は元気かい?」
「ええ、親父殿は相変わらずですよ(察しがいいな、流石未来の大統領)。
今回はブラスコファミリーの帳簿や犯罪記録を拾いましてね。
ここで一気に叩けば近々の大統領選挙の弾みになると思いましてね?」
現在の大統領が任期を終えるが、体調不良もあって次回の大統領選挙は副大統領が出馬する予定であった。
ニューヨークに進出するマフィアを叩けば大きな実績になり大統領選挙の勝利へ大きく傾く事だろう。
「そうか……感謝する。
何を望む?君は……」
「二代目(ツヴァイ)と呼んでください。
父に友誼を結ぶように自分もまた友誼を結びたいというのは高望みですか?」
「とんでもない!
喜んで友人になるさ。
何せ、アメリカ合衆国の米国の諜報機関が二度目の個人への敗北をしなくて済むからね!」
副大統領は、二代目(ツヴァイ)を名乗る少年と握手をする。
「よろしくお願いしますよ、大統領閣下」
「まだ確定していないさ」
「占いをしなくても次の大統領はわかりますよ……そして大統領閣下、『真実』を知って苦悩することになるでしょう」
「……風(ウィンド)の息子は魔法使いなのかい?」
「マーリン直伝ですよ?
その苦悩は、親父や俺と分かち合えると思います。
困ったらいつでも相談しますよ……では」
そういうと、いつの間にか二代目(ツヴァイ)は消えた。
風のように、煙のように……まさしく風(ウィンド)の息子だなと副大統領は溜息をついた、
ファルコ兄弟……ロッソとブルという兄弟。
名前の元ネタはウルトラマンルーブ(ファルコン1、応答せよ!)。
だって隼人くんがグリージョ(灰色)兄弟と戦うので……連想して。
ウルトラマンジード・プリミティブがよく飛び膝蹴りで突っ込む(大体効かないか避けられる)がエンマニンジャはまぁ様子見の攻撃で倒せるくらいなので大したことはない。所詮マフィア。