「さぁて……上手くやってくれよYAMA…」
俺はギャローズベルから離れた場所で観測している。
YAMAにはエグリゴリのシークレットフォースの基地に大規模ではない、ハッキング攻撃をYAMAに命じた。
あからさまな奴じゃなくて計器が若干の誤差を出したり情報処理を遅らせせる程度にしている……グランドキャニオンに先回りする部隊には計器の高度や位置情報をバグらせたり照準を狂わせるが。
その気になれば基地を奴らの墓場にできるが涼達の成長なくしてキース・ホワイトの妄執を叩き割れないし、万一アリスがYAMAに興味を持ったら最悪だ。アリスの気配がしたら何もかも放り投げて逃げろちは厳命したから大丈夫だろうが……。
「シルバー司令官、全部隊配置完了いたしました!」
「予定よりロスが大きかったが?」
「申し訳ございません、ハッキングを受けて計器や機材に狂いが出てしまい、復旧に若干の時間がかかりました。
ですが、撃退に成功しました!
もはや奴らにギャローズ・ベルから逃げるすべはありません」
「よし、そのまま待機しているように伝えろ
フン!!バイオレットには悪いが、この私はそんなにのんびりしているたちではないんでな。
奴のお気に入りのARMS(オリジナル)の力…どの程度のものかとくと見せてもらおうか!!」
荷電粒子砲という馬鹿火力の持ち主である帽子屋(マッドハッター)ことキース・シルバーか。
過去を聞けばお労しい話で強そうな態度は鎧を纏っているようなもんだ。
某アニメの悪役の「怖かろう…悔しかろう…!たとえ鎧をまとおうと…心の弱さは守れないのだ!」が思いっきり刺さる、しかも勝てない!
一方、ギャローズベルの大人共は兜さんに喝を入れられたから少しはマシになっただろうさ。
ハウンド兵は半数弱闘えない状態にあった……流石に俺が治療しに行くわけにいかんから時間は稼いだが、どこまで動けるようになったのやら。
怪我をした隊員達は、足手まといになることは御免だと、スティンガーに自分達は見捨てるように言う。
まぁ軍人や諜報員系は冷徹な計算で動かなければならない場合もあるが……涼は彼らも全員つれて逃げることを決意したようだ。
無謀ではある……戦士として生きなければならないが軍人じゃないからね!
「この地(アメリカ)に来た以上、いずれは通らなければならない"道"だ!!
………前にもあったんだ………今回と同じような事が…
あの時はオレ達の力が足りなかったせいで、村の住人は全員死んでしまった…」
涼の脳裏に浮かんだのは、鐙沢村の惨劇であろう。
研究員も、洗脳されていた村人も、皆死に絶えた。
ガシュレーやビーのようなサイボーグでも物量ええあっけなく死んだ。
「オレ達が奴ら(エグリゴリ)との戦いで味わった最初で最大の敗北だ…
もう…あんな思いはこりごりだ…
だから…俺は二度と負けたくない…」
涼の言葉に、スティンガーは僅かに目を細めた笑みを浮かべていた。
眩しそうにスティンガーは語る。
「………ふふふ…
おまえを育てた親はさぞかし立派な人間なんだろう
…私にも二人の子供がいたよ…
だが…私は彼らを拒絶した…
全てを捨て、自分が強くなる事を望んでしまったんだ!!」
そういって壁を殴り、スティンガーは懺悔するかのようにとうなだれる…
「私は…ここにいるあの子達の両親と同じだ……だめな父親だったんだ…
…少年よ、私はまた拒絶してしまうところだった…
私だって…もう…負けたくない…
あの子達や…エグリゴリに捨てられた部下達のために…
私は…もう拒絶しない…
しかし…おまえ達の選んだ道の方が、はるかにつらいぞ!!」
「………ああ…覚悟はできているさ…」
俺はシルバーの方に意識を向けて『観る』。
包囲網を敷くエグリゴリは、科学戦部隊の配置が整ったとの報告を受け、制圧準備は完了したようだ。
指示を出すシルバーを止めようとするバイオレットであった。
攻撃は町の外に出てからを予定していたはず、と主張するがシルバーは聞く耳を持たない。
「ふん…私は他の兄弟のように奴らを泳がせておく機は、さらさらない!!
私は合理的考えで動いている
この作戦に乗じて奴ら(オリジナル)を捕らえる事ができれば、まさしく一石二鳥だ…
………バイオレットよ、わからんのか!?
今動こうが動くまいがプログラム"ジャバウォック"はなにも変わらないし、変えられもしない…
全ては45億年も前に決定済みのシナリオなのだからな」
んなわけねーよ!
アザゼルも計画的に動いたわけじゃねーよ!
寂しくて話ができそうな地球ちゃんにアタックしたってだけだ!
皆川亮二先生張りのライブ感で動いたんだから!
「くっそー、進入だと!?
奴らはまだ遠巻きに見ているだけだと思ったぜ」
「あれは『オトリ』よ 地上でこれ見よがしに包囲しておいて、一方で突入部隊を潜り込ませる…特殊部隊の基本的戦術よ!!
でもこれだけの規模の人を動員した作戦は、私もお目にかかった事ないけどね……」
「クソ……やっぱりだ」
「やっぱり……ってなんだよ?」
「今流し込んでいる毒ガスは……C-0048……よりによって何で今さら………
僕が昔、作った毒ガスなんか使うんだ!!
(YAMAの連絡は真実だったか……!)」
潜入部隊は、ダクトを開いてそこから内部に侵入していく……
そこから近い研究員を避難させる様指示を出すアル。
監視カメラには、防護装備で即死は免れたが避難しきれていない研究員がいた。
そこに追跡して直接銃撃して始末しようとする兵隊。
研究員の父親が猟銃で立ち向かうがあっけなく頭部を撃たれ即死して、母親が研究を庇って撃たれる。
毒ガスが充満された部屋の扉が開き、廊下の空気が一気に歪み始める。
毒ガス相手ではどうしようもない、一度引いて作戦を考えようとする恵だったが……涼は、毒ガスに向かって歩いていく。
さらに、ARMSの三人も涼の強烈な共振を感じ取る
「お…おい、なんだあいつは…!?
このガスの中無防備で突っ込んでくるぞ」
「バカめ、のたれ死ぬがいい…」
だが、毒ガスの中を歩いてくる人影の姿を見て、隊員は恐れ慄く。
涼の怒りと憎悪と憎しみにそまった表情を……
その強烈な共振反応は、遠く離れたキースたちにも感じ取られていた。
(…………痛い…)
「ほう…これか…」
バイオレットはその嘆きのごとき共振に顔を歪める、さしものシルバーも冷や汗をかいているようだった
そして、廊下にはおびただしい数の兵士の死体が転がっていた…
「くそお、死ね、死ね!!
アフリカ象だって殺せる神経ガスだぞ、何故生きてる!!
てめえは死ななきゃおかしいんだよ!!」
「それが…オレに植えつけられたARMS(ジャバウォック)だ…
全身に回ったナノマシンが、どんな傷も一瞬で癒しどんな毒物も分解する…」
「う…うわあああ!
やめてくれ、殺さないでくれ!!」
「殺したくはない…殺したくなんかないさ…
………だけど…おまえは、まだ殺す気なんだろう!?」
兵士をARMSで拘束した涼は怒りを露わにした。
兵士のガスマスクを、涼は無理矢理に引き裂く…!
生き残ったのは涼と、逃げ遅れた研究員の少年だけだった……両親に庇われたお陰で辛くも死から免れたのだ。
だが……最深部に安置されていたアザゼルが涼の憎悪によって目覚めて暴走を始め、触手伸ばしながら移動を開始した。
ユーゴーはアザゼルの意思を感じて涼に警告するべく飛び出していき合流をはたした。
「な…なんだと!?
あれはあれはもう死んでいる何の役にも立たない代物じゃなかったのか!?」
「………いいえ……あの"アザゼル"という隕石を目にしたとき………
テレパシストである私は感じた…
………あれは…『生きている』!!」
「ユーゴー、だったら早く逃げろ!!
俺一人ならなんとかなる!!」
「いいえ、毒ガスの中でジャバウォックの機能が低下しています。
ですから……あなたの命はこの私が、守る!!」
ユーゴーが銃を構え、エグリゴリの部隊も彼らの排除に乗り出そうとしたとき、
【………力が…力が…力が欲しいか!?】
突如、アザゼルが孵化し、強烈な共振反応がARMS達を襲う。
孵化したアザゼルに驚く間もなく、直後に踏み込んできた兵士達がアザゼルの触手に捕まってしまう。
涼の目の前で、兵士が投げ出された…。
一方、シルバーもアザゼルの反応に苦悶の表情を浮かべており、バイオレットの目からは血の涙があふれ出てくる…
「この『共振』は早過ぎる!!
…まだその時期ではなかった…
シルバー兄さん、あなたはこれも予想していたというの!?
これもプログラムのうちだというの!?」
「あれは…死んだはずだ…
すでに40年異常もなんの生体反応も消えうせていた…
ただのサンプルにすぎなかったのだ!!」
「ふん!『あれ』は太陽系と同時に発生し、5万年前に地球に落下してきたものよ。
半世紀前に発見されるまで地底で生きながらえてきた究極の生命…
たかだか40~50年の"死"がなんだというの!?
もう…遅いわ…卵が…孵ってしまった…」
涼とユーゴーと少年研究員が見た孵化した後のアザゼルの姿は、巨大なジャバウォックだった。
ジャバウォックの意志がアザゼルに流れ込み、それを模していったのだ。
兵士達もなすすべなく、アザゼルの吐く炎に焼かれてしまう。
涼も今のうちにアザゼルから逃げるように言うが、ユーゴーはアザゼルがこっちを追ってくることを感知した。
「わかった…アザゼルは赤ん坊のように真っ白な存在…
より"強い意思"に引かれているだけなのよ…だから……」
その時、兵士の一人が放った銃弾が、ユーゴーと少年のガスマスクを吹き飛ばしてしまう。
ユーゴーと少年は毒ガスを吸ってしまう。
毒ガスがユーゴーを蝕み、彼女の口から血が噴き出す。
少年の方は口からだけなく鼻や目からも血が流れていく……少年の方が小さい分、毒の周りが早く痙攣しながら心臓が停止していく。
【………力が………力が欲しいのなら…くれてやる!!】
「だ…だめよ、高槻君…『憎悪』の念を抱いてはいけない…!
アザゼルが………呼応してしまう………」
ユーゴーの言葉もむなしく、涼の肉体はジャバウォックへの変貌を遂げ始めていた…
自分の目の前で、何も出来ず死んで行く少年、更にユーゴーまでも犠牲になってしまう。
涙を流しながら、涼の肉体はジャバウォックへの変化を始めていく…。
「……… だめ…高槻君… ジャバウォックを発動してはいけない…
"憎しみ"という名の音叉が共振する… "アザゼル"までもが憎しみを拡大してしまう…
そうなったらもう誰にも止められない…」
アザゼルとジャバウォックが放つ共振反応が、隼人と武士の身に襲い掛かる。
その時、二人のARMSが突然発動し、ARMSの声を聞く
<高槻涼を殺さなければならない>
その言葉に愕然とする二人、変形を始める自分達の体…
だが、二人は無理矢理にARMSを押さえつける
「ぼ…僕と高槻君は仲間だ、
この僕がそんな事させるもんか!!」
「そうだ、てめー!!
いきなり出て来て勝手な事ぬかしてんじゃねーよ!!
プログラムだかなんだか知らねーが、オレ達の知らねーとこで決めた事をいきなり持ち出しやがって!!
おまえと違って、オレ達はなにがあろうと絶対 『ダチ』裏切らねーし、見捨てやしねーんだ!
てめえらの都合だけでオレ達の人生を動かされてたまるか!!」
ユーゴーは、クリフ経由で渡した銀のロザリオを握る。
俺からは観測できないが、精神世界で涼を救おうとしているのだろう。*1
涼のARMSの暴走が解除された。
現実へと帰ってこれた涼が、死にゆくユーゴーの身体を抱きしめながら、進もうとした時、突然研究所がまばゆい光に包まれる。
謎の光に困惑する……騎士<ナイト>にすらその光の正体がつかめない。
「な…なんなんだ、この光は!?」
「ア…アル、変だ!!毒ガス濃度がおかしい!!
基地全体から………毒ガスが………消えた!!」
謎の光が毒ガスを消失させ、ユーゴーのバイタルが安定した。
それだけでは無い。
死したばかりの少年研究員の心臓が動き出し呼吸するまでに蘇生したのだった。
アザゼルが最後の力を振り絞って、ユーゴーを救ったようだ……手出しできないこの状況が歯痒く、死地に導く自分に嫌悪と、計画通り進んだ安堵が混在した。
そして、アザゼルの姿は…カツミの姿へと変化していく。
(こいつ(アザゼル)は何十億年も独りぼっちだったんだ…
だからジャバウォックに惹かれた…
蛍が仲間の光を求めて飛ぶように…)
アザゼルの手を握り締めると、アザゼルの体組織は崩れ落ちていく…
(なぜだ……!?
涙が…止まらない………
泣いているのはおまえか…!?ジャバウォック………
おまえにそんな感情が存在するのか!?)
【わからぬ…我にもわからぬ…
我はプログラムされた存在――
人工知能――
作られた精神…しかし…この涙は…!?
…ただ…涙だけが………】
涙を流していたのは、ジャバウォックだけではない。
恵達のARMS使いもまた、涙を流していた。
「毒ガスが消えた代わりにあちこちで湿度が異常に上昇している。
基地内のそこかしこが水浸しだ」
「………アザゼルだよ。
アザゼルは微小な金属生命の群体…
自分の体を分解し、その細胞をナノマシンとして大気中に飛散させて…
毒ガスの成分を電気分解し、H2O(水)に変えた…
理論的な言葉ではないが…まさに奇跡は起きたんだ…」
ARMS一行はアザゼルの残骸と対峙する。
結局のところアザゼルとはなんだったのか…間近で接した涼にも理解できなかった。
「ただ…一つだけ"アザゼル"の言葉が聞こえた…
"我が子らよ…生きろ"… と……
そう言い残して…アザゼルは…死んだ…」
・
・
・
<エグリゴリ本部>
キース・ブラックとキース・グリーンの二人がいた。
グリーンがアザゼルが失われたことやシルバーの独断での作戦行動に激昂していた。
長髪のキース……長兄であるブラックはシルバーには厳重に注意をしておくので今回の件は多めに見るような宥めた。
だが……
「…………だめだ!!
もうこれ以上好きにはさせないよ
ジャバウォックは僕の獲物だ、誰にも渡しはしない!!」
「グリーン、今から動いても間に合わん!!シルバーの作戦は今夜中にも決着する。
ここはニューヨーク、マンハッタンだ!!
今からじゃ到底…」
「兄さん、僕の能力を忘れたのかい…
この僕には距離など関係ない。
僕は…僕の好きにやらせてもらう………」
そういうとグリーンの身体は、透けるようにその場から消えるのだった…
始と同じ……いや始ほどでは無いが空間を操って転移したのだ。
グリーンの居た空間を静かに見つめるブラックであった。
(グリーンよ……
シルバーと同じくおまえもまだまだ"真理"を見極められんのだな…
あれがたった一つの"アザゼル"というわけではないというのに…)
自分自身の奥底へと沈んでいく涼の精神世界。
涼の前にジャバウォックの顔がそびえ立った。
【我は破壊を司るもの…プログラム"ジャバウォック"
我は以前、汝の全てに従うと誓った…
高槻 涼よ…これが汝の『本当の選択』だな!!
………よかろう…
汝がそれを望むのならば……全てのプログラムを開放する】
だが、憎しみに飲まれる涼を押し留めたのはカツミの声だった。
涼の前にカツミが現れた……。
「涼!!違うわ!!
そんなの涼の本当の願いじゃないでしょ…
あなたがどんな人なのか、私が一番よく知っているわ…
あなたはこんな所で止まってはいけない…まだ助けなければいけない人が大勢いるはずよ…
あなたがこんな所にいたら、今までに死んでしまった人達の立場はどうなってしまうの!?
過去を悔いるぐらいなら、その分だけ戦いなさい!
それがあなたに与えられた宿命… だから…戻るのよ、みんなのために!!」
「………ああ…
そうだな、『カツミ』…
戻るよ!!みんなの所に!!
本当に為すべき事のために!!」
現実への帰還を促し、カツミの姿はユーゴーのものに戻る。
テレパシーの力で涼の心に届くように働きかけたのだ。
「…やっぱり私に入る余地はないみたいですね…
カツミさんがこんなに強くあなたの中に住んでいる…
…でも…悲しくはない…
こんなふうに誰かを好きになれるなんて、昔の私にはなかったもの…
……ありがとう高槻君…
これが私の、最後の…テレパシー…」
原作の相違点。
シルバーの到着が遅れた&最初から地下水脈の情報があったので脱出がスムーズ。
アルに作った毒ガスで攻撃も示唆したので防護装備をしたので即死しなかった……それでも被害はでる。
涼が毒ガスの中に突っ切るが最深部まで行かなかったので毒ガスを分解しきれずに倒れるまでは至らず。
研究員のガキも巻き添えで毒ガスで死ぬがアザゼルのお陰で蘇生した。