まったく、汚いグリージョちゃん(兄弟)に苦戦するとは……
ああ、親父に良いようにやられてお礼参りしにきたようだ。
まぁ情報屋に聞けばこの街のどこに道場があるかなんて簡単にわかるからな……なお本当に頭がいいならヤバい奴と喧嘩はしないでお友達になるんだよ、ジェームズ・フリント大統領みたく。
「おい、いいのかよ?」
ジーザス、あれくらい命懸けじゃないと隼人はわからないんだから。
あ、親父はあの位置から見守っているからね。ー
グリージョ兄弟のナイフを隼人は肩に受ける。
その隙をついて二人が一気に襲い掛かる。
隼人はとっさに距離をとろうとするも、足も切られてしまう。
「ククク…いい味だ、それに…厚いぜ」
「ふふふ、そろそろ毒が回り始めてくる頃だろう…もってあと十分か十五分程度だろうよ
まあその間に、おまえは完全に切り刻まれるだろうがな」
(くそっ…奴の言う通りだ、視界が暗くなって来やがった…
オレは…このままこいつらにやられちまうのか…!?
………でも…)
恐らく、隼人は走馬灯が巡って脳裏に、倒れた武士の姿が、ー涼の姿が、そして恵の笑顔が浮かんでいるだろうさ。
(やっぱり納得がいかねえ!!
せめて…帰りてえ!!仲間の元に!!)
隼人の動きが鋭くなり、動きに迷いがないクリアーなものになった。
この感覚が研ぎ澄まされるのは水の一滴を見る感じなんだよな。
ドモン・カッシュの明鏡止水の境地に達したシーンはあながちデタラメではない。
(………今……確かに見えた…
余計な事を考えてるヒマがないって事が、目の前をクリアーにしてくれたのか!?
………何も考えず…意識を集中しろ!!)
俺も初めてこの境地に達したのは赤子の頃……母親が殺され、子供部屋に奴が踏み込もうとした時だった。
明確な死の恐怖を感じ、そこから脱する為に自分なりに足掻いた結果、生存への一手を引き寄せた。
奴に追われても俺の安全を守り切れる存在を地球上から俯瞰して探し、その人の元に飛んでいく……奴の実子ならできると一か八かの賭けだったが空間に把握と転移に成功した。
その経験が異世界転移までできる境地に行けたきっかけだった。
隼人もまた武術家として一皮向けたことだろうさ。
(敵の攻撃が見える 敵が何を考えてるかが、わかるのか!?
そうか…オレ… 自分が見えて来たんだ!!
自分の体がどう動いているのか、動かせるのか…
敵の動きが思考に反映される!!
戦いの主導権をオレが握る!!
戦いの流れをオレが作る!!)
襲い来る二人の攻撃をさばき、肩のナイフを引き抜くとビアンコに突き刺し!
そして、ネロもろともにその体を蹴り飛ばした!!
「はあ はあ はあ へへ…へへへ…
おっさん、わかったぜ………
そうか………簡単な事じゃねーか…
これが………"水"…だったんだ…」
戦いが終わり、緊張の糸が切れたようにその場に倒れる隼人。
親父は隼人の『水の心』を真の意味で掴み取った事を確信して微笑んでいた。
……涼の方で襲撃が起こるタイミングだから急いで隼人を叩き起こせるように俺が治療しないとな!
「(……リック・バウマンでもここまで手荒くしなかったぜ……)」
「ジーザス、これも教育です」
隼人が朦朧としているようだから解毒と傷の処置をせんとな!
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(なんだ…簡単じゃねーかよ…これが"水"か…
オレは…前から持ってた…
あのキース・レッドと戦った時も…
ギャローズ・ベルで高速サイボーグ部隊と相対した時も…
だけど…オレは何でこんな事を忘れてしまって…)
水の心の本質を理解した隼人には、その脳裏に十三の姿が浮かんだ。
―ふん!!気づくのが遅いんじゃ、このバカ孫め!!
火の心ものも心も幼い頃からみっちり仕込んできたもの…
わしの考えは間違っちゃいなかっただろう!?
ただ…こともあろうにお前は、怒りに身を任せて"水"をないがしろにしていた…
怒りに満ちた"火"はお前のような未熟な精神など簡単に焼きつくしてしまう…
こんかいの事でそれが身にしみてわかったじゃろう これからは、それをふまえて前に進むがいい―
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・
隼人がガバッと跳ね起きた。
親父が隼人を褒める。
「しかし…よく頑張ったな、隼人君…
多少手傷を負ったとはいえ、あの二人を倒すなんて大したものだ!!」
「……へ…へへへ…何言ってんだよおっさん……わかってんだぜ…
あんたは、奴らが来るのを知っていて、わざわざ仕組んだんだろ…!?
このオレに、"水"を気づかせるためにな…」
「良かった、それすら察せられないポンコツじゃなかった!」
「うるせーぞ始!!」
「ふふふ……生と死の間で切り結ぶ事で見える境地もあるのさ」
「俺が失っていた者……それは自分自身への信頼だった。
オレは今までオレのARMS…騎士<ナイト>に頼ってばかりいたんだ…
でも…それが信頼できなくなった時にオレは、急に臆病風に吹かれて自分をも信頼できなくなった…
つくづく…自分が半人前だと思い知らされたよ」
「それがわかれば上出来さ。
さぁママ・マリアの元へ行こうか」
「先生、俺も行くわ……J、いくぜ」
「ああ」
「って誰だよ!?」
「この街のOBで久しぶりに里帰りした人で友人」
ジーザスに驚く隼人をゴリ押しの説明で切り上げてママ・マリアの元に。
隼人の手を握り、彼の変化に気がつくママ・マリア。
「…どうやら自分を焦がし続けていた"火"を鎮火したようだね
それどころか今の坊やの心には、とても済んだ気持ちのいい世界が広がっているよ
久しぶりだねぇ…こんな純粋な心に触れたのは…
いいかい、坊や…一番大事なのは、自分を信じる"心"なのさ…
それを失った者はどんな力も振るう事はできない…
自分を信じられないものが、仲間を信じる事なんてできるわけがないんだからね…
たとえ仲間だってついて来るわけがないのさ…
でも、あんたはそれを取り戻している… わかってるね、坊や…
いまの気持ちを決して忘れちゃいけないよ これから先なにが起きようとね…
そうすれば…おのずと『仲間』も帰ってくる…」
一旦ママ・マリアのアパートを後にした。
親父は隼人に仲間の居場所が書かれたメモを手渡す。
「君のおじいさんである神宮十三氏は強かったよ
私も若かりし頃、十三氏には色々お世話になってね…」
「えっ!?おっさん…じじいと知り合いだったのか!?」
「ああ…現役だった頃のあの人には今の私でさえも勝てはしないよ
無論…あのコウ・カルナギとてな!!
君は、その十三氏の教えを引き継いでいる…決して負けるわけがない!!
そのぐらいの気構えでぶちのめして来なさい!!」
「親父からのお墨付きだ、気張ってやれよ」
「親子だったのかよ!!まぁいいや、行ってくる!!」
親父からの激励を受け、隼人は足早に隠れ場所へと向かう。
俺達はママ・マリアの元へと戻る。
……彼女の生命は燃え尽きつつあった。
「………ウインド………いろいろ世話になったね…
…20世紀…あたしの百年の人生そのもの…
その間に…目が見えなくともいろいろ見て来た…
きれいで…素敵なもの… 汚くて…どうしようもないもの…
あんたは…私の言う通り、汚いものをみんな浄化してくれたね
そして最後に…とても良い子に会わせてくれて…………ありがとうよウインド…
ツヴァイ……あんたにも世話になったわね……気持ちのいい風をこの街の吹かせてくれたし、家出すた坊やの無事を知れた。
J……大きくなったわね…。
でも心の奥で怒っている……それが何かはわからないけどそれが晴れることを祈っているわ……
私は…そろそろ眠ることにするよ…」
「ママ・マリア……」
「おやすみ……」
そう言い残し、ママ・マリアの百年の人生に幕を下ろす
親父が彼女のその目をそっと閉じた。
……サムを呼んでおくか……。
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・
・
俺は隼人の様子を見に行った……無論距離をあけてだが。
ん?ジーザスも来るの?物好きだなまぁ俺の視点をYAMA経由でモニターに映そう。
ラヴィニアのテレパシーで涼がコウ・カルナギと誤認するように仕向けて突貫させて分断していく。
まぁユーゴーが看破していくんだが。
テレパシー対決再びだが……まぁ原作でも負けているに強化パーツ装備している彼女に負けはない。
で、一方……悠々と侵入してきたコウと対峙する兜さん。
雑魚はおよびでないと言うコウに対し銃撃を放つが、あっさりコウに接近を許してしまい、拳銃ごとその手を握りつぶされる。
その背後から李さんが銃撃を浴びせるものの、銃弾はコウの筋肉で止められてしまい、その体を貫くことも出来なかった。
そして李さんたちにその矛先を向けようとするが、兜がその体にしがみ付ついてでも止めようとした。
しかし当然あっさりひっぺかされ、李さんも壁に突き飛ばされてしまう。
それでも兜さんが壁に激突する直前で李さんを庇い、どうにか二人の死は免れた。
屋敷内に残ったのは恵のみとなってしまった 急いで武士のところへ向かおうとするが、床を突き破りコウがその姿を現す!
恵もショットガンで応戦するも通じるはずもなく、コウにその頭をつかまれてしまう…!
その腕が、恵の頭を握りつぶさんとするが……隼人がコウの横腹に飛び蹴りをぶち込む!
「ヒュー危ねーところだったぜ!!
悪かったな、恵 いろいろ心配かけて…。
だけど…もう大丈夫だ!!もうお前に手出しはさせねーよ!!」
隼人の帰還に恵は無意識に涙を流していた……。
「なんだぁ、お前 わざわざ戻って来たのか!?御苦労なこった。
これで貴様を探す手間も省けたってもんだぜ」
「うるせー、女の子に対してアイアンクローなんかかけやがって、この最低野郎がぁ!!(中指立て
こちとらてめーと戦うために大急ぎで戻って来たんだ!!
この前とは、ちぃと違うぜ!!
見てろよ、恵 今からこいつをぶっとばしてやるからな!!」
隼人が構えてコウ・カルナギを迎え撃つ!
こうして、コウ・カルナギとの対決が幕を開ける!!
水の心で、隼人は迫り来るコウの攻撃を迎え撃ち…
枯れ木の如くすっ飛び、壁に激突する隼人の体は横たわったまま動かない…
(`・ω・´) 水の心に投影しろ!!
↓
(#)ω・`) オ…オレはまだピンピンしてるぜ…
という原作で開幕2ページ目で見開きでぶっ飛ばされた時は流石に唖然としたよ前世では。
アクション漫画でこんな壮絶な出オチはそうそうないからな!
今生で生で見たから思わず俺は笑ってしまった。
「おい、笑っている場合じゃねえだろ!
あっさりやられてんじゃねーか!!」
「大丈夫大丈夫……これくらいでくたばるタマじゃないから、ほら」
真面目に心配しているジーザスをよそに、画面を見るように促す。
そこに涼も駆けつけ、横たわった隼人の姿に怒りを露わにする。
しかし、頭から血を流しながらも、隼人はどうにか立ち上がり、再び構えを取る…!
「ククク…気に入ったぞ、小僧。
ならば今度は、後悔もできねーほどとことんてめえをぶちのめしてやるぜ!!」
「だからこの前のオレとは違うって言ってんだろ!!やれるもんならやってみな!!」
屋敷内、コウの暴風のごとき攻撃に晒される隼人は幾度となく吹き飛ばされるのだが…
隼人はコウの攻撃が当たる瞬間にスウェイバックして、その威力を半減させていたのだ。
「な?」
「な?じゃねーよ、このままじゃジリ貧だろうに」
「そろそろ攻撃に見慣れる時だろうさ」
だが、それでも人知を超えたコウの破壊力の前ではいつかは押し切られてしまうとジーザスが、そして画面の向こうの涼も懸念している。
コウのスピードに慣れるまで体が持てば勝てるのだが、瓦礫に足をとられ、その隙を突きコウの正拳が隼人の体を捉えたかに見えた…!
「やべえ!」
ジーザスがおまわず叫ぶが、問題ない。
【力が… "力"が欲しいのなら… くれてやる!!】
「オ…オレの…オレのARMSが… 戻ってきたぜぇ!!」
隼人の左腕に、騎士<ナイト>が発動しコウの正拳を防いだ!
ここからが隼人のターンだ!
一方、隼人のARMSが発動した時、昏睡した武士にも異変が現れていることだろうさ。
その体からARMSの触手が一斉に伸びていき、その体をARMSの装甲が繭の如く包んでいる……まぁ画面には出さないけど。
吹き飛ばされながらもまるで効いていないコウは、高笑いを上げながら瓦礫を吹き飛ばす。
「ハハハハ 嬉しいぜ、騎士<ナイト> 貴様にもこれだけの"力"があったとはな!!
オレも思う存分"力"を吐き出せるってわけだ!!」
「…ふん、なに言ってやがる
貴様ごときにわざわざ騎士<ナイト>が出て来るまでもねえや
おまえなんてオレ自身の"力"だけでぶっ倒してやるさ、同じ"人間"としてな!!」
その言葉に、さすがのコウも絶句した。
隼人左手を騎士のブレードに変形さずに武術で制圧するつもりだ。
そんな様子を涼も目を丸くしており、コウはその言葉に怒り狂った。
「…調子に乗るなよ、小僧…
"人間"としてこのオレを倒すだとぉ…
そんな事ができるわけがないだろーが!!
二度とそんな戯言をほざけないようにしてやる!!」
激昂するコウが隼人に猛ラッシュを仕掛ける!!
隼人は、コウの攻撃の軌道、その攻撃の性質を次第に見切っていく。
(そうか!!だんだんわかって来たぞ こいつの"力"、スピード、タイミング…
こいつは…オレと同じだ…
前へ出る事しか知らねえ激しい"火"だ!!
"火"に"火"をぶつけても勝ち目はねえ!
奴が相手を呑み込んで、さらに大きな"火"になるだけだ!!
ならば……)
隼人はコウの攻撃にあわせその腕をつかみ、足を引っ掛けて投げ飛ばす!!
うわー痛そうーダンプカー並みに勢いがそのまま自分に返ってきたようなもんだぜ。
(そ…そうか、今のはあのじじいがよくやっていた合気道!!
相手の力を利用して倍の力で返してやるという…これこそ神宮流古武術の真骨頂!!
へへ…わかって来たぜ、"風"(ウインド)のおっさん… "水の心"とはなんであるのかがな…)
今頃、親父は酒を一杯やりながらこう思っているだろうさ!
(ふふふ…カップに注げばカップの形に…ケトルに注げばケトルの形に…
状況に合わせていかなる姿にも変わる"水"………あらゆる物を映し、あらゆる物を呑み込む…
されど常にその本質は変わる事はない…
それが"水"だよ、隼人君…
つまり、怒りからも憎しみからも解き放たれた… "心の自由"という事だ!!)
ってね!
"水の心"を得た隼人の前に、もはやコウはなすすべがなかった。
全盛期の十三先生なら楽しくピンボールしているだろうね……流石に今だといささか身体が思うようにいかないしパワーが足りないだろうから…。
「く…バカな…負けるだと……!?この…オレが………
(そうだ…いつもオレは殺して来たんだぜ…オレを化け物呼ばわりする奴ら…オレを毛嫌いする奴らを… だから…オレは…)
オレは、世界最強のコウ・カルナギだ!!
このオレが貴様(にんげん)ごときに負けてたまるかぁ!!」
荒れ狂う闘気を放ち、仁王立ちで吠えるコウ・カルナギ。
野獣の咆哮が建物を揺らし、コウが殴りかかろうとする。
その瞬間、隼人の一撃が……
「なにが世界最強だ!!
たとえ”力”があろーが
てめーみてーな痛みを知らねー奴は人を簡単に殺める!!
そんな大バカ者は…あの世で反省しやがれ!!」
隼人は怒涛のラッシュを仕掛け、とどめに蹴りの一撃でコウの体を屋敷から叩き出した。
「………すまなかった、恵…
オレ…すっげえわがままで…
リーダーのお前のことも考えねーで、自分の事ばっかり考えて落ち込んでた…
でも…安心してくれ…… オレはもうどこにも行かねえ
自分が背負った物から逃げたりしねえ…
だってよ………ここがオレの…帰って来るべき場所なんだから………」
そう言いながら恵の体に寄りかかる隼人……真っ赤になる恵だが、隼人は恵に寄り添いながら眠ってしまっていた。
仕方なしに恵はそのまま抱き寄せて、寝かしつけてあげるのであった。
「うーん、六十点」
「厳しくないか?」
「もうちょっと早く見切りが出来ていないとなーというのと、足を取られたのは減点。
騎士が目覚めないと少し危なかった……。
俺ならスマートにやれるし、その気になればワンパンできるしー」
俺はそれを静かに見守るのだった。