サンサーラ同盟掲示板   作:Dadaga

776 / 791
Zwei 《ツヴァイ》ep37「盤面(チェスボード)

窓ガラスの割れたような音が響く、武士の寝室の方から聞こえた。

そこで涼が気がついた……まだホワンが残っていることに…!

武士の寝室に潜入したホワンだったが、幾多も延びるARMSの触手が突き刺さった部屋の様子に驚いていた。

 

 

「な…なんだぁ、こりゃ!?これがARMSの白兎<ホワイトラビット>なのか!?

 植物状態だとはつかんでいたが、まさかこんな状態になっているとは…

 肩に担いで持ち帰りってわけにはいかないな…」

「そうじゃ、わしもこれにはびっくりしたわ…… 

 おまえ…ジェームズ・ホワンだな…

 "アサイラム"の危険度"A"収容者か…」

 

 

そこに触手の棘をかき分けながらドクターもその姿を現す。

部屋の中の武士は、ARMSの装甲に包まれ脈打ち、まるでアザゼルのようであった。

 

 

「わしを連れ戻しに来たのなら、無駄な事じゃぞ。

 こんなものを見せつけられたら、帰るわけにはいかんわい!!

 ここにあるのは、エグリゴリが20年前に失って以降、どういう成長を遂げて来たのか全く不明なオリジナルARMS…

 その進化を究明できるチャンスがこのわしに来た!!

 それをわしがみすみす手放すと思うか!?キース共にそう伝えとけ!!」

 

 

ホワンは強引にでもドクターを連れ帰るつもりのようだが、そこに涼も駆けつけた。

サングラスをかけ直しながらヤレヤレといった様子で溜息をつく。

 

 

「…やれやれ、最強の戦闘用ARMSまで来てしまったか…

 まったく…騎士<ナイト>が予想以上の力を発揮してくれたおかげで、僕の計画もめちゃくちゃだ…」

 

 

遠隔透視術を持つホワンの存在は彼らにとって驚異となる、彼をこのまま帰すわけには行かない。

そう判断した涼はARMSを展開させる。

 

 

「…へえ…じゃあ、この僕を殺すのかい!?」

「…殺しはしない…殺すのは…キライだ… 

 ………だが… おまえを捕らえる事はできる!!」

 

 

涼はARMSをホワンに向けて伸ばすが 次の瞬間、涼の身体はホワンが空間を振動させて涼を昏倒させた。

 

 

「……いい事を教えてあげよう、高槻君…

 僕達三人を差し向けたのは、キース・グリーンという若僧だ!!

 彼は、君を 心底憎んでいる。

 エグリゴリの最高意思の思惑からもはずれてね…

 君以外の仲間を殺せという指令も、憎い君を追い込むための目論見だろう。

 だけど、君達の予想以上の活躍でものの見事に失敗したよ。

 ……僕を殺したくないと言ったね、気に入った!! 

 だけど…忠告しておくよ、次は…僕を殺すつもりで来な!! 

 さもなければ、今回のようにはすまないよ…」

 

 

その言葉と共に、ホワンの姿が景色に溶けて消えていく…

一夜明けて、屋敷内にブルーメンの救護班達に運ばれる兜。

李さんもそれに付き添いつつ、恵に屋敷の指揮を任せていた。

そんな折、隼人が言い出す。

 

 

「恵…悪ーがオレもちょっくら出るわ!! 

 ……どうしてもしておかなきゃいけない事があるんだ…

 なあに、今度はすぐに帰ってくるさ」

「…うん…わかってる…しっかりけじめをつけて来るのよ!!今までお世話になった人にね…」

 

 

そんな二人のやり取りをほほえましく見ている涼とユーゴー。

隼人は尻にしかれそうだな……そう思う二人であった。

ウインドの道場をおとずれた隼人であったが……丁度黒人の子供達が稽古に使っていた。

子供の一人が言うにウインドとツヴァイはまたしばらく帰ってこないという。

その間は道場は貸切らしい。

 

 

「お…おい、おまえ達!!あのおっさん…"風"(ウインド)の本当の名前ってなんなんだ!?」

「僕達だって知らないよ。

 いつでもそうだよ…いつの間にかやって来て、いつの間にか消えちゃう…

 だからみんなから"風"(ウインド)と呼ばれてるのさ!!」

「そしてウインドの息子で後継者だから二代目<ツヴァイ>なのさ!!」

「な、なんだって!!(始の野郎……『先生』とか言っておいて……!!)」

 

 

しょうがないのでママ・マリアのほうに挨拶に向かおうとする。

アパート前ではママ・マリアの葬儀が行われていたところであり、愕然とする隼人であった。

黒人の青年に追い返されそうになっていたが喪主を行っている顔役のサムが隼人は最後の客人だったから参加して良いと静止した。

隼人は葬儀に参加して神妙にしていたが。

……葬儀の参列者の中に、隼人は意外な人物の姿を見る。

キース・バイオレットである…

隼人を見つけた彼女が葬儀の後に茶会に誘う。

その辺の喫茶店でコーヒーを一口飲むが……生憎不味かったようで不平不満を述べる。

それはそれとして本題に入ろうと切り出す隼人だが…

バイオレットは、隼人の雰囲気が変化に気がついた。

前と違ってどっしりと構えて落ち着いていると言われて、隼人は飛んだ三枚目に見られていたと落ち込むが……

隼人がママ・マリアと出会って変わったように、バイオレットもまた彼女とは浅からぬ縁を持っていた。

ママ・マリアはどこか出会った人を変える能力があった、とバイオレットは語る…

 

 

「で…あのばーさん、あんたの人生に予言でも与えてくれたってーのか!?」

「いいえ、彼女は預言者じゃない、不確かな未来の事なんか語りはしなかったわ!!

 ただ彼女はいつもこう言っていた…

 人の足を停めるのは"絶望"ではなく"達観"…

 人の足を進めるのは"希望"ではなく"意志"とね……」

 

 

あらためて、バイオレットが本題に入った。

取引を求めていた。

その内容は、ドクターサミュエルの返還、その交換条件にカツミの身柄を引き渡すという…

隼人は静かに問いかける……以前ならば激昂するだけだっただろう……。

 

 

「…前からてめーらに聞きたい事があったんだ…… 

 前回会った時は高槻の前だから遠慮しておいたが……

 あのバカガキ(アルの事)の話だと、おまえらは世界を牛耳るほどの力を持ってんだろ!?

 なのに、たかが女の子一人をかっさらうなんてせこい真似してる…ショッカーかよって。

 オレ達を誘導するためにカツミをダシとして使っていると思いきや……

 今度はあのじじいとカツミを交換しろだと!? 

 おまえらは一体何がしたいんだ!?

 それともオレ達をおちょくって喜んでるだけなのか!?」

 

 

その言葉に、バイオレットは僅かに目を伏せ語り始める…

カツミは"プログラム・ジャバウォック"の計画に必要な歯車のひとつだという

"プログラム・ジャバウォック"…騎士<ナイト>も同じことを言っていたが、その正体についてバイオレットは言葉を濁す。

 

 

「今は……はっきりした事を言うわけにはいかないわね……

 ただ…あなたはその片鱗を見たはずよ。

 あのギャローズ・ベルやグランドキャニオンで起こった出来事を……

 ジャバウォックの力は日増しに増大しつつある……

 今や自分の意志で地球をも揺り動かすほどの圧倒的な力……

 しかも"プログラム・ジャバウォック"はさらなる進化の途上にある……

 私やあなた達の想像も及ばないとてつもない地点をめざして……

 そして……その最後の起爆剤が、あの赤木カツミって子だとしたら…!?」

 

 

バイオレットの言葉に隼人は滝の如く汗を吹き出し葛藤する…

もしそうなれば、隼人は高槻を殺さなくてはならないのだろうか…

 

 

「……そうね… 

 もしそれが起こってしまった時には、騎士<ナイト>…

 あなたしかジャバウォックを滅ぼす事は出来ない 

 なんのためにあなたに"ARMS殺し"(ミストルテインの槍)が宿っているのか……

 その意味をよく受けとめる事ね、神宮隼人……

 (『彼』からの問いかけ…。

 「今のままでいいのか?」

 「流されて諦めているのを決断と言わないんじゃ無いか?」

 その問いへの返答は……)」

 

 

 

 

はい、ホワンこと糞実父は雇い主をキース・グリーンからブラックに鞍替えしました。

そのうちカツミちゃんを拉致するしその際にキース・グリーンはボコボコにされる。

いやぁ、ヤツがARMS埋め込んでなけりゃチェシャ猫完全解放のゴリ押しで負けなかっただろうけど!

繭になった武士君をどうにかするために涼はサミュエル博士に実験サンプルでもいいから見てくれと取引をする。

サミュエルは同意して調べ始めるが、そんな折に天才糞ガキ……もとい天才少年アル・ボーエンがチェス盤を叩きつけて勝負を持ち出す。

まぁ年季の差で負けるんだ、8戦8敗のボロ負け状態で。

チェス板をひっくり返して頭を抱えるアルだったが、サミュエル博士は敢闘賞をくれるという。

 

 

「……ふん!同情票なんかこっちが願い下げ…… !」

「たった一つ…おまえの質問に答えてやる!!いいな!!

 これはわしからの挑戦じゃぞ!!

 おまえが本当の天才だったら、たった一つでエグリゴリの心臓を射抜く質問を放って見せい!」

 

 

ARMSの進行状況やキースシリーズ、エグリゴリの組織体系など様々考えたアルが出した質問は……

 

 

「"アリス"とは何か?」

「……」

「"アリス"とはエグリゴリの中枢だと、僕らは聞かされてきた

 高槻のジャバウォックの深層意識に住むもう一つの意識もまた"アリス"と名乗った…

 "騎士"<ナイト>"白兎"<ホワイトラビット>"ジャバウォック""ハートの女王"(クイーン・オブ・ハート)…

 ARMSのコードネームはみんなルイス・キャロルの"アリス"からの引用だ!!

 いったい"アリス"とはエグリゴリにとってどういう存在なんだ!?」

 

 

しばし黙し、ドクターはアルのパソコンに指定のURLを入力するように促す。

すると、開かれたのは幼児教育チャットのページであった。

アルは馬鹿にしてるのかと抗議するが、サミュエル博士は子供はおしゃべりゲームで遊んでろとまで言いながら部屋を出てしまう。

 

 

[あなたは誰!?]

 

 

チャットページで問いを繰り返すアリスに、アルは律儀に名前を入力する。

 

 

 

[ああ…チャペルの子供ね… あなたの事は、よく知ってるわ!!]

 

 

アルの顔が青ざめる。

 

 

「な…なんだ、これは!? なぜ"チャペル"を…!?僕の事を知っている!?

 ……こいつ…人間じゃない……

 人工知能ソフトだ!!」

 

 

同時に武士の容体が変化する。

ARMSの殻から武士の上半身が形成され苦しそうな表情を浮かべている!

涼の呼びかけにも応える事はできず、始まる、と何度も呟く

同じ頃"アリス"も始まる、という言葉が何度も繰り返され、アリスの顔が歪む…。

まぁ武士は白兎に招かれて起こりうる未来を警告するんだが……俺から観測できないし,YAMAにもアクセスさせない。

YAMAが勝ってもアリスが勝ってもロクな結末にならないだろうからね!

サミュエル博士によると、白兎が変形した物体は、電話線を通して外部と交信しているそうだ。

だがそれが誰かは知らない、とドクターはしらを切るが…アルが問い詰める。

 

 

「"アリス"だろ!? 

 ……ドクター、僕にアクセスさせたあのページは何なんだ!?

 あの"チャット・ウイズ・アリス"ってAIソフトにアクセスした途端、僕のパソコンはこの有様だ!!

 それと同時刻に巴武士は異変を起こしている!!

 ドクター!!人類最高の超天才であるこの僕をこれ以上ごまかす事は出来ないぞ!!」

 

 

"アリス"とは何か、との問いにサミュエル博士は静かに口を開いた。

彼の話では、エグリゴリの頭脳にして心臓部、全世界を覆う巨大ネットワークの中枢だという。

 

 

「なるほど!!…となると巴武士は今、アリスの中に向かっているという事なのか!?」

「いや…そうとは限らんぞ……あるいは……

 "アリス"の方から呼んだのかもしれん……巴武士をな……」

 




サミュエル相手に絡む気はないエンマニンジャ。
将棋で挑んで衝撃波で薙ぎ倒して『俺の二歩は、威力二倍だ!!』でノックアウトできますがサミュエルから反則負けじゃとマジレスされるだろうし……そういう事やる性格じゃないんでスミスじゃあるまいし。
(※スミスはそんなことはしないよ!
 将棋に関しては脳内コンピューターを生かして藤井翔太ばりの戦術で叩き潰すだけで。
 リアルの戦術は相手が将棋をしているのに対してスミスは軍人将棋のコマを使い出すだけで)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。