キース・シルバーがマッドハッターを全開で荷電粒子砲を発射し、自分を融解させながら暴れている。
終いには自分自身を保てなくなり、涼が突っ込んでいく。
ARMSを自身の意思で制御して融解した原発炉心のようなシルバーの元でも揺るがない涼。
炎の穴底で、うずくまるシルバーを見下ろす涼…
涼を見上げ…シルバーは自らの敗北を認めた。
涼はジャバウォックの爪でシルバーのコアを貫き介錯した。
涼の目の前に、キース・シルバーの精神世界の光景が広がる…
キース・シルバーが研究所を焼き尽くした日を……
キースは自分の末路を自嘲しながら言う。
「貴様は…前進しろ…
貴様の心が…今求めていることをなしに行け…
オレに…できなかったことを…
ブラックのARMSに気をつけろ… "ハンプティ・ダンプティ"…
底知れぬ"力"を秘めた強大なARMSだ…
あばよ…兄弟…」
シルバーの共振が消えると、涼の肉体がシルバーの"炎"を吸収する…!
二人の戦いの跡……マッドハッターのバランスが狂って自滅し、ジャバウォックの底知れなさをありありと見せた光景を見て警戒するアルだが……。
「……………蛇は毒牙で自分を刺さない…蜘蛛は自分の巣にはかかりはしない…
どんな生物だって、自分で自分を殺すような能力を持ちはしない!!
それは、その生物が永い歴史の中で進化をするからだ
自分自身の能力とせめぎあって、適応性を手に入れてきたからだ
だが…ARMSの進化は急激で強烈過ぎる!!
ちょっとバランスを崩しただけでこの有様だ!!
こんなめちゃくちゃなものが進化なんていえるのか!?」
「ああ…オレにもよくわからない…
ただ一つ言えるのは、自分の精神にスキを作ると、ARMSはいくらでも暴走を始める…
人のいきすぎた欲求に呼応するように… これは…オレ達の運命なのかもしれない…」
一方、大統領閣下は決断を下そうとしていた。
部下から報告を受けていたが…。
「大統領閣下…軌道上のイーグルアイ2が目標座標に到達――
ニューヨーク上空の写真を撮影しました。
州軍と哨戒機の報告どおり、カリヨンタワーは崩壊しております。
しかし、依然として核防衛システムに対する"アリス"のハッキングは、停止しておりません。
"アリス"は、いつでも望んだときに、世界中に核ミサイルを発射することができます」
その言葉に、アメリカ大統領は苦悶の表情を浮かべていた。
「私自身が設定したデッドリミットまでにもし間に合わなかったら…
最後の切り札、システム"AA"を使う!!
核防衛システムから切り離されたたった一機の中距離核ミサイル…
マンハッタン島を"アリス"ごと吹き飛ばすための…」
「……… ……… "AA"とは何の略称かね?
アンチ・アリス?アンチ・ARMS?」
「アンチ・アメリカの略です。
自国を攻撃するために用意された、あってはならない極秘ミサイルです」
大統領は、エアフォースワンの窓から上る朝日を見ていた。
その様子は神に祈る様なものであった。
「ニューヨークは…まだ夜だな…
今我々が目にしているこの日の光を、彼らは見ることができるだろうか…!?
時が来たら……………私は微塵もためらうことなくそのボタンを押すつもりだ!!
後の歴史に悪魔の名前で刻まれようと!!」
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そのころ涼達一向は、シルバーの語ったブラックのARMS…"ハンプティ・ダンプティ"に関して話していた。
「確か…"鏡の中のアリス"に登場する知恵者の卵の名前ですよね」
「もとはマザーグースさ。
"ハンプティ、ダンプティ塀の上、ハンプティ、ダンプティ落っこちた、
王さまの馬と王さまの兵士ぜんぶでも、二度ともとにはもどせない"
なぞなぞのわらべ歌さ 落っこちて割れてしまったら二度と戻らないものはなーんだ?
答えは"卵"ってわけだ」
カリヨンタワーに入ってから、なぞなぞばっかり絡んでアルはすっかりうんざり気味の様子だ。
愚痴りつつも、サミュエルから渡されたデータのチェックにいそしむアル。
チェックの過程でいつもに失言をしてしまい、恵と隼人にダブルげんこつをぶちこまれた。
そんないつものやり取りの横で、涼はユーゴーからお水を貰っていた。
炉心の様な高温に突っ込んだお陰か冷たい水で潤す涼。
お水をのんで一息つく涼…、そこにユーゴーが一つ質問をする。
「あの……カツミさんってどんな人なんですか?」
「うーん カツミかあ…しいてあげればあいつはお袋よりうるせーかな!?
誕生日がオレより早いからって、お姉さんぶっていつも怒ってたよ
毎日ケンカともいえないようなケンカをしたり…冗談言いあったり…
何の変哲もない平凡な毎日をすごしてたなぁ…
そして…今になって気づいたよ…
そんなありふれた"現実"がオレにとってどれだけ大切だったのかってね…
オレは変わった…戦いにも慣れてしまった…
いつの間にかARMSの"力"で敵の命を奪う事だって…
カツミは………… あの日に失ったオレの大切な"現実"そのもの…
カツミを取り戻さない限り、オレは絶対に明日を迎えられない!!
たとえエグリゴリを潰そうと、キースを倒そうとね…」
ちなみに、隼人はまんまとブラックにしてやられたのを恵からチクリと刺々しく言われている。
休憩を終えて奥に進む一行。
冷静に振る舞おう涼についてユーゴーが言及する。
涼は考えながら答える。
「…………親父に似ちゃったのかなぁ、オレ… 親父の口ぐせなんだよ
人生には必ず一度は"明日"を迎えるために踏み止まらなければならない"昨日"があるってね。
あと兄貴から『自分が焦ったり動揺しても事態が良くならない。ならなにもかも忘れるなり棚に上げてから何をしたいか、何をするべきかを考えていけ』とも言っていたな.
「高槻君のお父さんとお兄さんて、どういうお仕事をしているのですか!?」
「うーん…オレにもよくわかんないんだよ、兄貴は大学で海外留学中で卒業間近って聞いているけど。
なにしろ、ほとんど家にいないし…」
「フフフ…高槻君が今こんなところにいるって知ったらびっくりするでしょうね」
「まあねぇ……いや兄貴なら笑うだろうな。
……………親父と兄貴かぁ…………
今どこで一体何をしているんだろうなぁ…」
・
・
・
私、ハジメちゃん。
今エグリゴリの中枢にいるの……とボケ返すべきか?
イキってヨーヨー・マ(意気揚々)に地下を進んでいると糞実父に遭遇した……何げに肉眼では初めて見るが。
「久しぶりだな"崖"(たかし)…」
「ああ、本当に久しぶりだね。
僕としては一生会いたくなかったんだけどね。
……君は誰だい?」
「親父の息子さ」
「ッハ!兄貴がいつの間にかこさえていたガキだったな!
親子同伴で仲良しこよしか、オイ!?
ARMSもない凡人に何を期待するんだ?」
「親父の助太刀はしない見学者だから安心していいよ、どうせ親父に勝てない凡夫」
俺の詳細はわかっていない様だな。
まぁこれくらいで青筋立てる時点で図星じゃない?
親父が糞実父に話しかけてくる。
「………決着をつけるためにここに来た…
十年以上、おまえの足跡を追って今日まで世界中をさまよってきた…」
「へえ、そりゃまたご苦労なこった」
「我が一族の故郷、鐙沢をエグリゴリに売り…幾多の死を招いたその落とし前…
つけさせてもらうぞ、崖… わが弟よ!!」
「いいよ…僕も今までみたいに逃げも隠れもしない…。
僕は、さらに凄い"力"を手に入れたんだ!!
今からその"力"…見せてやるよ……来なよ兄貴!!」
親父の宣戦布告を聞いてスーツを脱ぎ捨てる糞実父。
地下通路でしばしにらみ合う二人。
俺はこれ見よがしにジャーキーを取り出してムシャムシャと食べて見学する。
「来ないのなら…」
と先に仕掛けたのは糞実父の方.
空間の振動波親父にに向けて放つが簡単に避けられる。
「突然変異体(ミュータント)…僕のDNAを調べたエグリゴリの学者どもはそう言ってたぜ!
僕達、高槻一族は乱波(忍者)の出自。
古くは役子角(*えんのおづぬ 修験僧の開祖)を祖に持つ、熊野山系の修験者の系譜だ!!
如何なる遺伝子のいたずらか、数百年に一度特異な能力の持ち主が生まれる…それが…この僕さ!」
「使いこなせていないじゃないか、天才の開祖の時代じゃない科学の時代に生まれた凡夫」
俺のヤジに青筋立てながら空間の断裂に潜り、親父の背後に出現して飛び蹴りを放つ糞実父。
親父は殺気まみれの攻撃を回避したかと思うと、さらに背後を取りその背にクナイを放った。
だが糞実父はそれを寸前で空間の断裂に逃げ込み、それを回避する。
「ハッハーッ、相変わらず鋭いぜ、兄貴はよ…。
この僕の"力"をかわせるなんて、あんたぐらいなもんだ!!」
「………己のために"力"を振るうなかれ!それが一族の掟だったはずだ…」
「ケッ!今どき、そんなの流行るかよ!"刃"に"心"と書いて"忍び"なんてよ!!
今の世の中じゃ、ただの下働きの傭兵じゃねーか。
ブルーメンに協力してどれだけの稼ぎになったよ!?
僕は運命に選ばれた人間…だからこそ"力"を与えられた!!
だが、一族の奴らは兄貴を党首に選んだ!!」
そりゃ実力、人望、思慮深さ諸々考慮に入れれば親父だろう……親父が次男ならまだ揉めただろうが。
「"忍び"は時として 金のため 仕事のために人を殺める…
だが…貴様は楽しみのために殺める!
貴様は………"力"の暗闇に魅いられた哀れな男だ!!」
散々言われたであろう言葉に糞実父はいつもの飄々とした仮面を脱いで憎悪を露わにした。
「"力"のある者がない者を淘汰して何が悪い!?
自然界の摂理だろ!!
昔から大嫌いだったよ、したり顔で僕をかばい、里から外の世界に逃がしてくれまでした兄上殿がよ!!
だから殺してやったんだ!
みんな死んじまいやがった!!親父もお袋も…鐙沢にいた連中はよ!!
"エグリゴリ"にちょっと情報を漏らしてやるだけで全部焼きつくしてくれたぜ!!」
鐙沢村が焼かれたのは、コイツの差し金だった。
親父の脳裏には、唯一の生き残りである隼人を抱き上げながら見ていた炎に包まれる鐙沢村の光景が浮かんでいるのであろう……
「あの光景…忘れはしない!
私の魂はいまだに、あの時あの場所にいる…
あの時…誓った!!
全ては、おまえを外に解放した私の責任… 地獄の果てまで追って、この手で始末をつけると!!」
親父のその言葉と同時に放たれたクナイが、糞実父も腕を貫いた。
だが、ARMSを発動させた糞実父はその程度の傷をものともしない。
新しいオモチャに興奮してイキっておる糞実父。
「モデュレイテッドARMS…あの男(ブラック)はそう呼んでいた。
こいつは量産を前提に調整(モデュレイト)された、実戦配備用のARMSだとよ。
実際、こいつは素晴らしい!!
オレに無敵の身体を提供し、能力を何倍にも増幅してくれる」
「見た感じ手抜きで不可逆性の完全解放になる欠陥品じゃないか。
あれだね、金のかかったゲルショッカー戦闘員みたいなもんじゃね?」*1
俺のヤジを無視(なお血圧は上がっている模様)しながら糞実父は宣言する。
「もう兄貴の影に怯えることはない…
受けてみるがいい…空間の断裂!!」
異形の腕を振るい、空間の断裂を放つ糞実父。
親父……ついでとばかりに俺も巻き込む様に放つが俺も親父も簡単に回避する。
「なるほど………… ケーキを切り分けるには便利そうだな」*2
「ば…馬鹿な…音も光も持たぬ空間の断裂をなぜかわせる!?」
「見えるからさ。
闇の中に白々と…おまえ自身が放つ、殺気の射線が!!」
動揺しながら糞実父が連発して放つ空間の断裂を次々と掻い潜り、その懐にもぐりこんで脇腹に掌打を打ち込む。
あれをまともに食らうよと肋骨は折れるわ、口から吐血するからね……朧めぇ…。
閑話休題。
その強力な一撃に、糞実父んk身体は軽々と吹き飛び、肋骨は折れ、内臓も破裂の重傷を負うがそれもARMSが再生する…。
でもこれだけで終わらないんだよなぁ!
親父は懐から切り札を取り出す。
「これが…何だかわかるか!?
グランドキャニオンで私が回収したものだ。
半ば化石化しているが、原形を保っているところをみると、まだ生きているのだろうな…
元々これ貴様に使うはずのものではなかったのだが…」
「そ…それはまさか…!?」
「そう…ジャバウォックの爪…ARMSの再生能力を無効化する"ARMS殺し"の爪だ!!
これで傷を負ったARMSは、二度と再生しない!!」
その言葉に糞実父の顔が青ざめ、悲鳴を上げながら空間の断裂に逃げ込む。
無理もない、不死身の怪物を殺す銀の弾丸……というか妖怪の骨から作った骨刀みたいな特級呪物みたいなもんだしな。ー
逃げようとする糞実父めがけて親父はジャバウォックの爪を投げつける!
逃がしはしたが、糞実父の肩にはジャバウォックの爪が深々と突き刺さっていた……後0、1秒反応が遅ければ首筋にぶち込んで詰みだったものを……。
親父は、逃げ隠れた弟目掛け言い放った。
「……………また逃げるか…
崖、聞いているはずだ!!
私は世界を牛耳るエグリゴリの最深部まで入ってこれることを証明してみせた。
今後、貴様に安全な場所はない!!
おまえは一生背後に忍び寄る死の影に恐怖して生きるのだ!!
いつか私がおまえの心臓にこれを突き立てるその時まで!!
………人間は…ARMSには負けんさ!
そのことを私の息子達が証明してくれる…」
親父は糞実父を無視して進んでいく……。
俺も追いかける……そ・の・ま・え・に!
「はぁ……はぁ……糞……再生しないから止血出来ねぇえ……!」
糞実父の転移先(動揺したせいでそんなに長距離じゃない)を追跡した俺が見たのは恐怖で顔を歪める糞実父。
俺はニヤニヤしながら言い放つ。
「ざまぁねえな」
「テメエ……親の七光りの分際で……」
頭に血が昇って俺が空間の断裂を回避したり、転移先を追いついたのわすれていない?
俺は糞実父が空間を歪ませ振動させようとする前にオリハルコンナイフを取り出して奴の肩に刺さったジャバウォックの爪を抉り出す。
優しい俺は、ジャバウォックのおかげで再生しない部分も抉り取って再生できる様にしてあげた、いやぁ実父への親孝行だよ、チミィ。
かなり豪快に抉り取ったけど誤差だよ、誤差!
「ギャアアアアア!」
「これで再生できるようにしてあげたんだから感謝しろよ?
……お、ジャバウォックの意思がまだ生きている。
……だが使い回しにも限度がありそうだ。
ご利用は計画的に、だな」
俺は痛みと怒りで空間の断裂を乱射する糞実父の攻撃を回避しながら退散していく。
さて、親父殿と合流するとしよう。
糞実父に実の息子と名乗り出るつもりもないし、お袋の事も持ち出すつもりもない。
大体の底は見え、完全解放したとしても俺が勝つのはわかったからな。