という訳で音楽会のための練習で路上ライブをすることになった私。ま、まぁ……大丈夫、大丈夫、大丈夫?
テーブルの下で楽譜を読む私を傍目にさて…と呟くココアさん。なにを考えているだろう。あ、何か思いついたようだ。
「それじゃあ千夜ちゃんとシャロちゃんも呼ぼうか!」
ウグッッッ!!
た、ただでさえ初対面4人と出会って精神力をかなり消費してるのにこれ以上人が増えたら、増えたら……。
〜〜〜〜〜
「皆集まったね!さぁ演奏だ」
ざわざわ
「なんか音が揃ってないですね」
「どうしてだろう……まさか」
〜〜〜〜〜
ああおあおえぇえあぁ☆○*¥$
「その2人はバイト中だから迷惑ですよ」
せ、せセーフ。助かったぁ……。
「そういえばリゼちゃんは?」
「リゼさんも楽器を家に取りにいってますよ。もうそろそろ帰ってくる頃です」
「戻ったぞー」
ぅああああああッッ!
「な、なんだお前は!?」
ジャキッと何かを構え私に向けるツインテ女子。
じゅっ銃!?こ、ころされるぅ!!
「い、いのちだけはたすけてくだしゃい……」
「待ってくださいリゼさん!この人は……」
かくかくしかじか……とこれまでの経緯を話す。とはいえそんな長々とした話ではないが。
どうやら命は助かるみたいだ。よ、よかったぁ。
「こちらがリゼさんです。ラビットハウスの従業員で私の音楽会練習の先生でもあります」
「あっはい。よろしくお願いします……」
「その、さっきはすまなかったな」
「あっいっいえ……そ、その銃は」
「ん?これはモデルガンだ。気にするな」
き、気になる。モデルガンを持ち歩く系女子……ロックだ。
「それでリゼさん、楽器は」
「あぁそれなんだが、持っていけそうなのはこれしかなかった」
がさごそと懐から出したのは……鍵盤ハーモニカだった。なつかしい。
「十分だよ!リゼちゃん」
「とはいえ演奏するだけなら助っ人がいるから私の楽器は必要なかったな」
「ふふん!そういうと思ってね、リゼちゃん!」
「絶対嘘です」
待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す得意げな顔のココアさん、を冷静にツッコむチノちゃん、をテーブルの下から眺める私。やっぱりこの場所は落ち着くなぁ。
「今から路上ライブをしようと思います!もちろんチノちゃんの特訓のためにも!」
「なるほど名案だな」
いきなり言われて反対するかと思いきや乗り気なリゼさん。チノちゃんの歌の練習の先生と言っていたし、中々スパルタな先生なのかな。それかココアさんと気が合うとか。
「とはいえ路上ライブするなら楽器が必要だが、マメ達はどうするんだ?」
「私たちはいいよ〜チノちゃんの練習の為だし」
「そうそう!私たちは観客を集めてくるよ」
マヤちゃんメグちゃんの2人は路上ライブには参加しないみたいだ。となるとライブに出るのはチノちゃんとココアさんとリゼさんと私、になるのかな。
「そうか。じゃあ2人はフライヤーを頼む」
「おっけー!」
「いえっさ〜」
「そういえばココアさんの楽器は」
「あっ!私の楽器はー……っと壊れてるんだった」
チノちゃんに言われ、てへへと笑うココアさん。そ、そういえば私を見つけた理由が楽器探しだったっけ。
「じゃあ改めて楽器探してくる!」
「えっ」
「行ってきます!」
「ちょっと待って下さいココアさん!当てはあるんですか?」
「うーんとね……。あ!千夜ちゃんのところに行って借りてこようかな。じゃあ行ってきます!」
「あっ……全くココアさんは」
善は急げと言わんばかりに飛び出していく。掛け合いをする二人を見るとココアさんとチノちゃんはやはりお転婆な姉とそれに振り回される妹という風に見えるほど仲が良い。ちなみに私にもふたりという年が離れた妹がいるが仲は……良い、けどふたりの中の家族ヒエラルキーで私はジミヘン(飼い犬)以下だ。仲は……本当に良いよね?ふたりの友達には幽霊扱いされてるけど!完全に舐められてるけど!
「それで、ひとりさんはライブ大丈夫でしたか?」
「あっだっ大丈夫です……」
ガタガタガタガタ
「本当に大丈夫ですか!?」
テーブルの下の私を覗き込むチノちゃん。いやいやそんな心配されるほど……ガタガタガタガタ。まだ空の感じから昼間っぽいのに疲労感がすごい。あっそういえば私今日は初対面の多くの人と話せたなぁ。これはもう1日頑張ったと言っていいのでは?うん今日は頑張った。また明日頑張ろう!
「きっ今日は人と話しすぎたので帰ります」
「まだライブが始まってすらないですよ!」
テーブルの下から飛び出しダッシュでドアを目指す私。あっリゼさんに捕まった。
「私のライフはもうゼロです……」
「まぁ落ち着け。ひとりは練習しなくても大丈夫なのか」
「だっ大丈夫…じゃ、ないです」
楽譜を読んだところそこまで難しい曲ではなかったから練習すれば弾けるようになるはず。とはいえ練習することは必要なのでギターを持ってそそくさとゴミ箱の中に入る。
「なんでゴミ箱に!?」
ここの喫茶店の雰囲気、静かで落ち着くぅ。さらにこの陰となる場所、テーブルの下かゴミ箱くらいだが、その心地よさは言うまでもないだろう。
「私の家!」
「ここは私の家です!」
なんだか、うまく言えないけど、なんとかなりそうな気がする。