なんかよくある話   作:天和

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まったり?な話

 

冷えた食事を食べ終えた後、早速と言うように老爺による暴力が始まる。

 

なんてことはなく、まったりとした時間が流れていた。

 

 

「ごめんってウル…ねー機嫌直して?」

「つーん」

「許してよー…ほら、この通り!」

「つーん」

 

なんだかご機嫌斜めな幼子、ウル。

言葉でも分かるようにつんつんしている。

 

不機嫌なお姫様に手を合わせて謝る少女はクレア。

劇団であれば引っ張りだこの演技派少女である。

 

 

さて、ウルがつんつんしているのは他でもない。

クレアの見事な演技のせいである。

ウルはクレアが自分達も騙していたことに、少しばかり怒っているのだ。

 

クレアのせいで冷えた食事は関係ないはず。

 

「……おおっと!こんなとこに甘いものが…食後のおやつに食べようかなー」

 

埒が明かないと考えたクレアの次の一手。

何処からともなく取り出したお菓子を、そっぽを向いたウルにこれ見よがしに見せつけている。

 

ウルの耳がぴくんと動き、ちらりちらりと視線が彷徨う。

その反応に、我が意を得たりとクレア。

 

「あーでも食べたばっかだしなー…どこかに一緒に食べてくれる人いないかなー」

 

鼻がぴくぴく動き、そっぽを向きながらもそわそわし始めるウル。

そわそわするたびに体はお菓子に寄って行く。

 

「やっぱりいないよね…」

「ど、どうしてもというなら…たべてあげても…」

 

お菓子を持つ手を寂しそうに彷徨わせるクレアに、欲に抗いきれずにじり寄るウル。

ウルは仕方ないからとでも言うような言葉だが、彷徨うお菓子に視線が固定されつつある。

 

ウルの言葉を聞いたクレアがにこりと微笑む。

 

「乗り気じゃなさそうだし一人で食べよーっと」

「え!?ず、ずるい!」

 

優しげな笑みから繰り出される、意地悪な言葉。

ウル、陥落である。

 

「の、のりき!のりきある!」

「もうつんつんしない?」

「しない!しません!」

 

手のひらの上で転がされる、というべきか。

つんつんした姿は何処へやら、高々と掲げられたお菓子に手を伸ばし、ぴょんぴょんと跳ねるウル。

もはや食べたいという欲望を隠そうともしない。

 

保護欲と加虐心をそそられる姿にクレアもにっこり。

 

「あはっ!もぉー可愛いなーウルは!」

「わっ!」

 

しかしウルを虐めすぎれば世にも恐ろしいものが解き放たれる。

クレアはウルをからかうのもほどほどに、素早い動きでウルを掻っ攫い寝椅子へと運ぶ。

 

「はいあーん」

「わぁい!あー…」

 

ウルを膝に乗せて餌付けするクレア。

落とした後はしっかり上げる。

これで何もかも丸く収まるのだ。

 

収められたウルはまるで雛鳥のように機嫌良くお菓子を頰張っている。

 

 

「心配だわ…あのちょろさは一体誰に似たのかしら。ねぇブル?」

 

私はちょろくないと言外に主張している女、ルサルナ。

持ち前のちょろさは中々のもの。

 

「誰に似たんだろうな…」

 

ルサルナの皮肉に気づいていない男はブル。

その手と目は湿気った焼き菓子の選別に忙しい。

ウルの笑顔のために、ウルが大好きな男は今日も今日とて働いている。

 

「私達がしっかりしなきゃ駄目ですね!」

 

大変威勢のよろしい言葉を宣う少女はアメリア。

全体的なちょろさとしては間違いなくぶっちぎり。

 

「……」

「……」

「え、どうしたんですか?何か顔についてますか?」

 

ブルとルサルナが、お前が言うなよと無言の視線を向ける。

当の本人はその視線を受け、くしくしと洗うように顔を拭っている。

 

「なんでもねぇよ。ほら、少しばかり湿気ってるが食うか?」

「わぁい」

 

ブルから湿気った焼き菓子を渡され、誤魔化されるその姿はまさにちょろリア。

ルサルナがついアメリアの頭を撫でてしまうのも仕方ないだろう。

 

 

それぞれがちょろさに溢れるブル一行は、大同小異と言うべきか。

細部は異なろうとも、どこかしらちょろいのはそっくりである。

 

 

「まずは座学だね。知識を身に着けてから訓練することで、訓練はより効率的なものになる」

「いや、実戦形式からだ。知識なんぞ体に叩き込みながら馴染ませるべきだろう?習うより慣れろ、だ」

 

それらを尻目に、老人達は稽古の段取りを話している。

 

「何も実戦をいきなりやる必要はないさ。考えなしに暴れるのは無駄が増える。無駄っていうのは無意味な怪我と疲労のことだよ。時間は限られているんだから、それを最大限に使わないと勿体ないじゃないか」

「頭でっかちはこれだから困る。いくら机上であれこれしようが実際に動かねば分からんことなど多々あって、そこに無意味な怪我などない。痛みを伴うからこそ人は学習し、己の血肉としていくのだ。それに、怪我してから座学にすればいいだろう?」

 

なんだか老人達の議論に熱が籠もり始めている。

その様子を見て、懐かしそうにブルが口を開く。

 

「…そう、そうだった。昔もあんな感じから喧嘩に発展してな。何度死にかけたことか…」

 

ぼそりと呟かれた何気ない言葉に含まれる、危険。

 

遠い目をするブルをよそに、ルサルナやアメリア、クレアの顔から表情が抜け落ちた。

昔とはいえブルが死にかけるなど、冗談にも笑えない。

 

ルサルナがささっと出かける旨を書き置きに残し、立ち上がる。既にクレアはウルを抱えて飛び出し、ウルにつられてブルも飛び出している。

 

ほんの僅かな間に老人達の議論はさらに加熱しているようで、もはや内容の半分ほどは皮肉となっていた。

 

ルサルナは置いていくのは忍びなかったのか、涙目になりながら残っているアメリアを引っ張り、外聞など置き去りに飛び出していった。

 

 

 

 

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