なんかよくある話   作:天和

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励む話

 

「やるよ」

「行くぞ」

「やだやだ!!もうやりたくない!!助けてみんなぁ!!」

 

ずるずると老人達に引き摺られて泣き叫ぶ少女、アメリア。

魔法の新たな可能性を見た老人達に実験体にされている哀れな少女である。

 

可愛らしい少女が涙し抵抗する様は、言葉に出来ない犯罪臭が漂っている。

 

「用意してあげるから諦めなさい。墓穴をね…」

「なら俺は墓石でも用意するか」

「じゃー私お供えもの!ウルのおやつ!」

「だ、だめ!えと、おはな!いっしょにおはなつもう!」

「おやつ以下!?というか薄情者ー!!!」

 

ただしこの場に引き止める者など存在しない。

生贄がじたばたと抵抗するが、悲しいかな、抵抗虚しく引き摺られていく。

 

とはいえ流石に放置することはない。

ルサルナがさっとブルの手を取り引っ張っていく。

 

役割は勿論、救助要員である。

 

幾らか距離があっても追いつける健脚に、無駄に鍛えられた繊細な手つき。

恐らくかっ飛ぶであろうアメリアに対しての最適解だった。

 

ブルが名残惜しそうにウルを見つめながら引っ張られていく。

 

クレアはそれらを見送り、にこやかに手を振っていた。

ウルが不思議そうに見上げて口を開く。

 

「くぅねぇいかないの?」

「ん?んー、ふふ…ちょーっと良いこと閃いてね。知りたい?」

「こうきしんがくすぐられる…」

 

返ってきたのはウルの好奇心をくすぐる言葉。

どちらに付いていくか、今、ウルの天秤が揺れている。

 

「今ならなんと!」

「なんと?」

「おやつがついてきます」

「しょーばいじょうず!?」

 

決まり手、おやつ。

 

食欲旺盛なウルにとってその一言は、揺るがすどころか天秤そのものを破壊するに足り得た。

 

おやつおやつと機嫌よくクレアに張り付くウル。

現金と言えばいいのか、ちょろいと言えばいいのか。

 

 

ルサルナが見ればため息を、ブルが見れば愛らしさに震える光景が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、未知の速さってのを…経験したくないかい?」

「…儂の琴線が掻き鳴らされておるわ」

 

 

 

 

 

 

 

「ぬわぁあぁああ!?」

「あっはっはっはっは!!」

 

老婆から意味深な誘いを受けた老爺は空へとかち上げられていた。

原因は少年がただ、本気で駆けただけである。

 

老爺との手合わせで得た技術など欠片もない、力技の極み。

なんとか反応し受け流そうとした老爺だったが、あまりの速度の前に受け流しきれず、弾き飛ばされていた。

 

なお、轢き逃げ犯は例の如く足をもつれさせ転倒、盛大に跳ね転がっている。

 

老爺はふらつきながらも着地し、呆然と呟く。

 

「よもや…この儂が純粋な力に遅れをとるとは…」

「どうだい?未知の速さだったろう?」

 

そこに歩み寄ってくる老婆。

その顔は悪戯成功と言わんばかりの顔。

 

悪戯では済まされない域なのだが、それに口を挟む者などいない。

 

「あぁ…心底痺れたわ…」

「あたしは縮み上がったね、心底」

 

二人がくっくと笑い合う。

 

「で、提案なんだけど、先ずはあの速度に慣れさせようじゃないか。魔獣でも相手にさせてね。あたしゃあれの的になるのはごめんだよ」

「確かに。…しかし勝負勝負と煩いんじゃないか?」

「…たまには相手をしてやろう。二人がかりでね…」

「…儂に的になれと?」

「か弱い乙女に的になれって言うのかい?」

「か弱い…?妙だな……ん?待て来るぞ!?」

「うわぁ!?」

 

老人達が横っ飛びに避ける。

その間を高速で跳ね転がっていく少年。

 

少年はただ往復しただけで過去一番にぼろぼろである。

そのくせ何事もなかったように立ち上がるのだからたちが悪い。

 

老人達は言い合いを止め、少年に向き直った。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…私が閃いた良いこと。それは一点に集中させること」

「むぐむぐ」

 

机に両肘をつき、組んだ手元で口を隠すクレア。

 

人相が悪ければそれなりに様になる格好だが、生憎クレアは中身はさておき、見目の良い少女。

見た感じでは微笑ましさしか生まれないだろう。

 

ウルはおやつに夢中で話半分である。

 

「リアのを見て思いついたことだけど、例えば風を起こすのに団扇で仰ぐのと、穴を開けた竹筒に息を吹き込むのとでは勢いが違う」

「おかわり!」

「は、ありません。さっきのが最後ね」

「そんな…!?」

 

しおしおとへたれるウルを見ながら、クレアは続ける。

 

「私の風刃も想像的には風をぎゅっと押し固めたような感じだけど…それをさらに圧縮して、針のように想像してやればもっと威力が高まるんじゃないかなーってね」

 

へたれたウルが唸り声を上げる。

 

「むむぅ…よくわかんない」

「つまり一撃必殺!」

「みりょくてき!」

 

端的に好みを刺激する言葉にウルが復活を果たす。

大抵量で押し潰す戦いを見せるウルだが、本当に好きなのは量より質。

 

そんなウルに一撃必殺という言葉は、心のど真ん中に突き刺さるのだ。

やる気を燃え上がらせるウルに笑いかけるクレア。

 

「こっそり訓練して驚かせちゃおーね」

「おー!」

「大きな声だとばれちゃうよー?」

「おー…」

「あはっ、いいねー。それじゃ、秘密の訓練の始まり始まりー」

「おー…」

 

秘密、というよりもただの個別訓練なのだが、ころころ変わるウルの表情を見たいがためにそう言ってるだけである。

 

ぬきあし、さしあし…とこっそり歩こうとしているウルを見るクレアは、それはもう良い笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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