なんかよくある話   作:天和

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絆と思い出と幸せの話

 

 

ウルは港町での出来事が怖かったのか、街に帰ってきてからも暫くはブルかルサルナの近くから離れなかった。

その間、どちらかが依頼へ出て、残ったほうがウルに勉強や魔法を教えるようになっていた。

怖い記憶を忘れるように没頭したウルは随分と成長した。

簡単な本なら読めるようになり、魔法はルサルナに迫るものとなっていた。概ね本の虫。

心を鬼にして他人と交流させようと画策した二人だったが、ウルが放った“嫌い”という言葉に一撃で鬼を討ち取られ、無理は駄目だよね、とのんびりすることに決めていた。

二人の意志はパンケーキよりも甘く柔らかい意志だった。

 

近くにいれば一人で寝れるようになったウルを見ながら、ルサルナとブルは向かい合っていた。

 

「なんとかしないと、駄目よね。」

「俺としてはいいんだが…ウルの為だしな…」

 

帰ってきて早々に同じ宿を取ったルサルナ。やや深刻な表情。

ウルに嫌われたくなくて消極的なブル。同じような表情。

 

二人は狭い世界に閉じこもろうとするウルを心配していた。

 

「出るか?街。」

「荒療治よね…」

 

はぁ…と二人してため息。

一ヶ月前に起こった事件を思い出していた。

 

街に帰ってきて三ヶ月が経つ。帰ってきてからウルとべったり過ごして、丁度二ヶ月経ったとき、ルサルナの言葉に納得したブルは、二人で頑張ろうとした。

 

“いじわるなにぃもおねぇちゃんも、きらい!”

 

そのまま布団に潜り込んだウルを呆然と見送ってから、二人はようやく言葉を理解した。 

ブルはベットに縋りついて啜り泣き、ルサルナはあまりの衝撃に静かにその場へ横になった。ウルの悲しき偉業である。

宿屋の女将がおかしな様子に気付かなければ、恐らくもっと悲惨なことになっていただろう。

女将は二人を無理矢理正座させ、ウルに聞こえるように事情を聞き、懇懇と諭した。

ウルが少し気になり、布団から覗いたものはあまりに悲しいものだった。

大の大人が涙を流しながら正座し、説教されていたのだ。

なんだかとても耐えられなかったウルは布団から出て、二人に抱きついた。

嫌いになんかにならない、本当は大好きだと繰り返し伝え、結局三人仲良く泣き崩れていた。

女将の気遣いにより、泣きながらご飯をつついた三人は仲直りしたのだった。女将には足を向けて寝れない。

 

「でも、このままだとあまりにも狭くなるわ…ウルちゃんの世界が。」

「確かに…色んなものを見てもらいたいな。良いも悪いも。」

 

はぁぁ…と大きなため息。

逃げるはずの幸せはベットでうにうに寝言を発している。補給はいつでも大丈夫。

 

「あ、旅か。そうよ、私達が今までに行った所とかだと、ウルちゃんも知りたくなるんじゃない?」

「なるほど、それは有りだな…いつ言う?」

「…ちょっと時間が欲しくない?」

「…そうだな。」

 

二人してあのときの絶望が色濃く残っていた。

怖気付いている?いえ、時機を見ているだけです。

 

なんだかんだで先延ばしにして、二人は就寝することにした。ルサルナは別の部屋である。そちらも一歩踏み出せなかった。

 

そして数日後。

二人は今までの思い出として、さり気なく旅の話をすることにした。そうしてウルに少しでも興味を持たせようとした。

やはり怖気付いている。

 

実のところ早い段階で気付いていたウルは、あえて自分から言い出さないことにした。

二人の話を聞くのが楽しかったし、いつ言い出すのかちょっと楽しみにしていたのだ。

 

そこから一週間。ウルが眠った後のこと。

 

「俺には、もう話せるような思い出がない…!」

「嘘でしょ…?あなた何年旅してるのよ…?」

「十年は、旅をしていた…けどな?あの子に会うまでほとんど…!魔獣か野盗をぶち殺してばっかりだった…!」

 

ルサルナは思った。

そういえば力が全てみたいなやつだったな、と。

 

「なんとか萎びた野菜みてぇな思い出を美化して語っていたが…もう、限界だ…!」

 

あぁ…あまりにも哀れ。ルサルナの心は悲しみで満ちていた。

 

 

「ねぇ、にぃ、おねぇちゃん。」

 

寝ているはずのウルの声。二人は驚いてベットを見る。

少しだけ顔を上げてこちらを伺うウルと目が合う。

しまった!と思う二人。再びウルは口を開く。

 

「あのね、わたししってたの。ふたりがいろいろかんがえてるの。」

 

二人は気不味く、言葉が出ない。

 

「いついうのかなって、まってたけど、わたしからいうね?…にぃとおねぇちゃんがみたものを、わたしもみたいの。」

 

―つれてってくれる?

 

「あぁ…あぁ!もちろんだ!俺は二人が一緒なら、今度こそ良い思い出になると…そう思うんだ!」

「私も、そう思う。二人が一緒なら、きっと素晴らしい思い出になるわ!」

「えへへ、うれしい…ほんとはね、きになってたの。だから、ありがと。」

 

ベットに座るウルを二人は挟み、抱き締める。

ウルがあくびを漏らすまで暫く、三人は抱き合っていた。 

 

 

その後、三人では狭いベットに川の字になり、仲良く就寝した。

案の定ルサルナは途中で蹴落とされたが、好機とばかりにウルを挟んでブルに抱きついた。

挟まれたウルは少し苦しそうだったが、その顔には笑みが浮かんでいた。

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