なんかよくある話   作:天和

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経験と学びの話

 

ウルとブルが出会った町の名はアルヒ。

森林を半ば開拓して作られた町。

元々は大都市間の中継地として発展した町だった。

特に特産物はなく、強いて言うなら昔ながらの果樹園がある。

現在は街道の整備が進み、中継地としての強みはあまりない。

 

 

 

∇

 

鼻歌交じりに歩く少女、ウル。

どこで拾ったのか、いい感じに真っ直ぐな棒を振りながら歩いている。棍棒ではない。

旅は始まったばかり、意気衝天。

キラキラした目で弾むように歩いている。

 

それをにこにこと眺めながら歩く男女、ブルとルサルナ。

夫婦のように寄り添い歩いている。

ブルが特に何も言わないことをいいことに、ルサルナは順調に距離を詰めていた。

 

まるで年若い夫婦のように見える三人。

目的地はスメイル。出発した町であるアルヒに比べれば、小さな町である。

 

 

 

 

∇

 

それなりの距離を歩いた頃。

 

 

「うぅ…つかれた」

 

上機嫌に歩いていたウルは疲れていた。

ウルは幼いために、どうしても体力が少ない。

棒が鞄に放り込まれ、鼻歌が止まり、跳ねるような歩き方は既にない。とぼとぼしている。

 

ギリギリまで見守っているブルとルサルナ。

ブルが抱き上げようとするのをルサルナは止めている。

 

複数人で旅をするとなると、助け合いが大切だとルサルナは考える。

そのために助けられるのではなく、自分の弱さを認め、助けを求めることをしてほしい。

甘えすぎるのも問題になるため、鋼の意志でその辺りの調整していくことをルサルナは決めていた。

隣から聞こえる歯を食いしばる音を聞こえないふりして。

 

 

「にぃ、おねぇちゃん…」

 

疲れたウルは迷っている。

休憩を言い出して言いのか、それとももう少し頑張るべきか。

聡明なウルは理解している。

自分の体力に合わせると、旅が全く進まなくなること。

長く続ければそれなりに体力はつくだろうが、それでも二人からすれば、まだまだ足りない。

自分のために考えてくれて、自分も望んだ旅であるために、なおさら自分からは言い出し辛い。

 

もう甘えたい、でも頑張りたい。でも、でも…

 

 

そうして思考の板挟みになったウルは静かに泣き出した。

 

 

 

ブルとルサルナは首を傾げる。

俯いてとぼとぼと歩くウルが小さく震えたのだ。

様子が気になり、隣まで足を進める。

 

そして二人してぎょっとした。

ウルは声も出さずに涙を流していた。

 

「ウ、ウル!どうしたんた!?」

「どうしたの!?」

 

思わず抱き上げるブル、覗き込むルサルナ。

小さく嗚咽を漏らすウルは言葉が出ない。

 

慌てるブルはウルとルサルナを交互に見る。

ルサルナもまさか泣き出すとは思わず、わたわたしている。

暫く二人してあわあわとしていたが、ウルがつっかえながら話し出すのを聞き、静かにする。

 

「わ、わたしが…っく、あしをひっ…ひっぱるから、っ…がんばろうって…おもっ、おもったのにっ…」

 

 

泣きながら話す言葉は酷く聞きづらい。

聞きづらいが、ウルがこの短時間でとても悩んだことがよく伝わってくる。

ブルはそっと抱き締め、ルサルナは優しく撫でた。

 

「ごめんね、ウルちゃん。私が言い出したの。早いうちに助けを求められることも大事だからって。」

「俺も確かにって思ったんだ。俺は何も分からなくて、甘やかすことしか頭になかった。」

「ひっく…」

 

ウルは黙って聞いていた。

申し訳ない気持ちと嬉しいという気持ちが、ぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。

 

 

「疲れたら言っても大丈夫なの。甘えすぎるのは駄目だけどね。

その辺りは…お互い少しずつ学べはいいから。」

「そうだな…俺もなるべく我慢する。だから遠慮せずに言ってくれ。」

「うん…!」

 

二人が自分を想っていることが嬉しくて、気遣わせるのが申し訳なくて、ウルは涙を流しながら笑ってみせた。

 

 

 

∇

 

ウルは疲れから、そのままブルの腕の中で眠っている。

二人はそんなウルを見ながら微笑んでいる。

 

 

旅はまだ始まったばかりだった。

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