なんかよくある話   作:天和

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美男美女の話

 

美人というものは得を得やすい。

美人だけでなく美男、美少女、美少年も。

それは人が得る情報のほとんどを視覚から得るためにある。

初めての人に会ったとき、顔つきや目つき、仕草、色、距離といったものは全て視覚によって得られる。

見た目が美しかったり、可愛かったり、格好いいと言うのは、それだけで好意を得やすかったりする。

 

勿論他の要素もある。

それぞれの匂いであったり、声であったり、温度もある。

初見でなければ人柄や地位なども含まれるだろう。

 

しかし何でも得をするかといえば、そんなことはない。

 

美男美女であるから起こるものもあるという話

 

 

 

 

∇

 

 

 

 

「みえたー!」

 

ウルはようやく見えてきた町に興奮している。

先程までブルの背中でお昼寝をしていた少女は元気いっぱい。

 

遠目に見えるのは小さな町、スメイル。

特に何か強みがある町ではない。

魔獣もあまり出ず、そのために衛兵は練度が低く、傭兵は少ない。

 

強いて言えば、とても料理の美味い小さな店があるということ。

とても美人な看板娘付きで。

 

 

 

「おぉ…」

 

 

見えてから思ったよりも歩いて疲れているウルは声を漏らす。

なんだか嬉しさよりも、やっと着いたという気持ちが多い気がする。

そんなウルを見て、つい失笑してしまう二人。

 

思わず吹き出してしまった二人を見て、少し恥ずかしくなったウルは二人を急かす。

 

なんとも和やかな雰囲気であった。

 

 

 

「そういえば、確かすっごく美味しい料理屋があったわね。」

「おいしい…」

「へぇ、よく知ってるな。」

「この近隣じゃ結構有名なのよ。」

 

以前に寄った際は保存食だけ買って出たブル。

ルサルナはブルほど悲しい旅路ではないために、細かな情報を知ってる。

ウルはちょっとよだれを垂らしている。

 

 

「まぁいつも行列が出来るって言うし、早めに行きましょう。」

「ウルも食べたそうだしな。」

「っ!たべたい!」

 

手拭いでよだれをさっと拭きながらルサルナ。出来る女。

袖で拭こうとしたブル。細かな物は持っていない。

ほんのり頬を赤くウル。

 

 

周囲に人がいれば、この会話に待ったをかけたかもしれない。

しかし、幸か不幸か周囲に誰もいなかった。

 

 

 

 

∇

 

とても美味いと評判の料理屋エストロ、その店の前。

なんだか柄の悪い男達が屯していた。

 

 

「…ルサルナ、あれ客だと思うか?」

「…もしかしたら並んでるかもしれないじゃない」

「ちがうとおもう」

 

困惑するブル。

予想外に頭を抱えるルサルナ。

二人にじとっとした目を向けるウル。

 

努めてウルの目を見ないようにしている二人。

その手は誤魔化すようにウルの頭を撫でている。

 

「よし、行くか!」

「そうね!」

 

ウルのしっとりした視線に耐えられない二人は歩き出した。

ウルは二人がいれば大丈夫と思っているので、特に何も言わず手を引かれるままについていった。

 

 

 

「よぉ、そこのあんたら。この店は閉店中だ。他を当たんな。」

 

 

柄の悪い男の一人が声をかけてくる。

しかし、店内からは会話が聞こえてくる。

怒鳴りつける声、抗っているような男性の声、悲鳴を上げる女性の声。

 

明らかに悪意をもって事を為しているのが分かる。

 

 

三人は顔を見合わせる。

ウルの二人と繋ぐ手がぎゅっと握られる。

ブルはそっとウルの頭を撫でて前へ出る。

 

「お兄さんらよぉ、店はしっかりとやってるみたいなんだが?」

「閉店だっつってんだろ。可愛い嫁と娘の前で情けねぇ姿を見せたいのか?」

 

ブルが振り返る。

ルサルナは首をかっ切るような仕草を見せる。

首を傾げるウル。知らなくていい世界。

 

それを見たブルがにこやかに男に近づく。

 

「うちの嫁と娘がお腹減ったって言ってんだよ。並んでねぇなら退いてくれや。」

「ははは!旦那、俺には下品な仕草した嫁さんしか見えなかったぜ?」

 

振り向く。とてもいい笑顔のルサルナ。青筋が浮かんでいる。

ウルはその笑顔を見て固まっている。

 

「とっても腹が減ってるらしい。残念なことだ。」

 

ブルは言うやいなや顔を鷲掴みにし持ち上げる。

 

驚愕と痛みに叫ぶ男。

周りにいた男達もいきりたつ。

 

叩きつけ。

とても重たいものが叩きつけられる音が響き、沈黙が流れる。

 

 

「安心してくれ…俺はいい感じに手加減するのが得意なんだ。」

 

 

ブルの足元にいる男はびくっ、びくっと震えている。

 

あれは死んでないか…?

ぞっとする男達だが、一人が喚くように言う。

 

「囲め!嫁や娘ともどもやっちまえ!」

 

 

男が数人、ルサルナとウルのもとへ向かう。

 

ルサルナが軽くつま先で地面を突く。

地面から先の丸い土の棒が伸び、男達を突き上げる。

なんとも痛ましいことに、突いた位置は腹ではなく、股。

 

 

声にならない叫びを上げ地面に沈む男達。

ブルは縮み上がる感覚を覚えながら、ルサルナの恐ろしさを知った。

 

願わくば、ウルに教えませんように…

 

 

沈黙が包む場へ、店より男が三人出てくる。

 

「うるせぇんだよ!おちおち話し合」

 

ごっ、と鈍い音。続いて二度同じような音が鳴り、倒れる音。

出てきた男は地面に叩きつけられ、隣にいた二人は両腕の裏拳によりぶん殴られ、吹っ飛んでいた。

 

「じゃあ、ご飯にしましょうか。」

「そ、そうだな…」

「?」

 

何もなかったように言うルサルナ。

ちょっとルサルナを怖がるブル。

そんなブルを不思議がるウル。

 

 

三人はそれぞれの心境で店内に入っていった。

 

 

 

「あんたらに頼みがある…」

 

 

殴られた跡のある店主の男は三人に言う。

 

少し前から先程の男達が娘に言いより、娘が拒否したことで、腹いせに営業を妨害するようになったこと。

男達はこの町で幅を利かせており、衛兵も見てみぬふりをしていること。

このままいけば娘は無理矢理手篭めにされてしまうであろうこと。

 

涙ながらに話す店主。

 

ウルは手籠めと言うのは分からなかったが、無理矢理ブルとルサルナから引き離されるようなことだと説明されて悲しくなっている。

 

ルサルナは女として許せないものがあった。

ブルは娘を守ろうとする店主に共感していた。

 

 

つまり、三人はなんとかすることに決めた。

とても美味しい料理に舌鼓を打ちながら。

 

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