なんかよくある話   作:天和

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ヤバいのに交わればヤバくなる話

 

料理屋エストロ、その店内。

 

三人は食事を取っていた。

 

 

「さて、どうする?」

「あなたが全部ぶっ殺せばいいじゃない。」

「正気か?」

 

至極真面目な顔で言うルサルナ。若干本気。

胡乱な目つきでルサルナを見るブル。

頬を膨らませて食べているウル。我、関せず。

 

「あなたは案があるの?」

「ルサルナが股間に土の棒ぶち込んだらどうだ?」

「まずあなたにぶち込んでやろうかしら。」

 

ブル、沈黙する。お前が言い出したくせに、とか思ってる。

ルサルナはにこやかに見つめている。次からこうやって脅そうと思っている。

ウルは食べている。聞こえない聞こえない。

 

「そういや、表に捨てたままの奴らはどうするか…」

「逃げられないように埋めとくわ。」

 

そう言って席を立つルサルナ。

扉を開けて一歩踏み出し、そのまま戻ってきた。

 

「埋めておいたわ。」

「やっぱお前やべぇよ。」

「あなたには言われたくないわね。」

 

ルサルナは先程の一歩で地面に干渉し、全ての男を埋めていた。

店前に生首が生える料理店。

 

自分のことを棚に上げ始めるブル。

同じく上げ始めるルサルナ。

ウルは薄々どちらも常人とは違うことに気が付いているが、大好きな二人のために言わない。

自分も既に逸脱していることは気が付いていない。

 

「俺がウルを抱っこして、ルサルナが突っ込んで全部肥料にする…」

「私がウルと遊んでる間に、ブルが全部蹴散らす…」

 

ブルとルサルナが同時に呟く。

 

ルサルナは今の自分なら出来ると思ってしまった。

ブルも同じく余裕で出来ると思っている。

 

つまりは、全部ぶっ飛ばして解決するか、全部肥料にして解決するかである。

 

協力することは考えていない。

それは、どちらもウルを一人にさせるつもりがないからだ。

 

ルサルナはウルが大事だというのと、何かあった際にいくつ町がなくなるか分からないから。

ブルはウルに構いたいから。

 

考えることは大分違うが、結論は同じである。

 

 

 

「というより、ぶっ飛ばしたところで解決しないじゃない。」

「あ?何でだ?」

「私達がやったところで、いなくなったら報復するでしょ?」

「牢屋にぶち込めばいいんじゃないか?」

「死ぬまでなんか入れてられないわよ…重犯罪者でもないのに。」

 

二人とも皆殺しにするつもりはない。

ウルの教育に悪いからである。

 

二人して犯罪者として追われることには何も思っていない。

全てぶっ飛ばせると思っているから。大体ブルが。

 

 

うーん、と二人して悩む。

ウルは差し出されたおやつに目を輝かせている。

 

「店主さん、この町にこだわりはあるかしら?」

 

ふと、ルサルナが聞く。

逃した方が後々も含め楽なことに思い至ったのだ。

 

「亡き妻も眠るこの町にこだわる気持ちもありますが…娘の為ならどうということはありません。娘も説得いたします。」

 

意味を察して、覚悟が決めている店主。

なにがなんでも娘を守りたい気持ちを持つ親は強い。

 

 

「ブル、やりましょう。」

「どこに逃がすんだ?」

「ウルには悪いけど、アルヒに逃しましょう。」

「…まぁ、あそこなら頼める奴もいるしな…」

 

二人の頭にはハスタが浮かんでいる。

善人であるが故に苦労させられるのだ。

 

ウルは満足そうにお腹を擦っている。

 

「ウルは…それでも大丈夫そうだな…」

「…そうね」

 

ちょっと駄々を捏ねる姿も見てみたかったが、平然とお腹を擦っている様子を見て二人は呟く。

 

ウルはとても賢く、優しかった。

 

 

 

「じゃ、とりあえずやることがあるな。」

「そうね、ウルは待っていてね?」

「わかった」

 

ウルは察する。

見ては駄目なやつだ、と。

 

店主はさり気なく果実水をウルの前に置いている。

 

 

 

 

 

 

店を出た二人は悪漢どもを拘束したまま少しだけ離れる。

動けない悪漢達の前にブルが立ち、ルサルナが小石を数個渡している。

 

「お前がこいつらの首魁なのか?」

「はっ!そうだと言ったら?」

「お前らのねぐらを教えな。」

「馬鹿が!誰がそう簡単に教えるかよ!死んでも言わねぇ!」

「そうか、聞き方を変えるとするよ。」

 

 

かろ、ころ、と鳴らしていた小石を握り潰す。

手から零れる砂。

ちょっと青褪める悪漢達だが、口を開く様子はない。

 

「ルサルナ、手。」

「はいはい」

 

土の拘束が動き、悪漢達の手だけ開放される。

 

「なにを…?」

「お前、どの指が一番大事か知ってるか?」

 

悪漢が何かを理解し強く手を握りしめる。

ブルは意にも介さず手を開かせる。

 

「やめろ!」

「俺が思うに大事なのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親指だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に強く握られ、軋み始める親指。

増していく痛みに堪らず悪漢は言う。

 

 

「分かった!止めてくれ!もうあそこを襲ったりしねぇ!だから離してくれ!」

 

ブルは一旦強めるのを止めて、一言。

 

 

「聞いてんのはねぐらの位置だよ」

 

 

ブルの手は中に何もないように握り締められ、絶叫が響き渡る。

小枝の折れるような音や湿った音が鳴り、ブルの指の隙間から血が滴る。

ルサルナが煩いとばかりに土を操り、口を塞ぐ。

 

ブルは手の中に残った残骸を捨て、隣の男の前に行き、指を握る。

 

 

「お前らのねぐらはどこだ?」

「ぁ、ああぁ…」

 

目を疑うような光景に、尋ねられた男は声が出ない。

ブルはそのまま握り潰し、次へ。

 

ルサルナは潰された指を火で炙り止血している。

 

 

 

男達は思う。

 

これは同じ人じゃない。

人の皮を被った悪魔だ、と。

 

 

 

 

 

 

 

「汚れちまった…水頼めるか?」

「千切れるまで握るからよ、全く。やりすぎじゃない?」

「あんだけすりゃ、多分やり返しも考えんだろ。というか、ルサルナも大概だろ…」

「あれは止血するためよ。」

 

ブルとルサルナは何事もなかったように会話する。

後ろには叫ぶ気力もなくなった男達。

 

 

「とりあえず、こいつらのねぐらに行くか。」

「そうね。嘘ついてるかもだし、確認しないとね。」

「…ルサルナ、行ってくれないか?」

「あなたが行きなさいよ。そっちのが速いでしょ?」

 

わーわー言い合う二人の姿は後ろの光景にはまるで合っていないものだった。

 

皆殺しにするよりも、教育に悪いかもしれないということを二人は考えていない。

命あっての物種だから。

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