なんかよくある話   作:天和

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大都市に入る話

 

狼や猿、大きな鳥のような魔獣がそれぞれ襲いかかる。

 

クレアがいの一番に飛び込み、それをウルとルサルナが支援するように魔法を放つ。

 

ブルはウルの後ろで腕を組んで頷いている。

 

「あはっ!楽しいねー!」

「あーもう!突っ込みすぎないでよ!」

「むむ…」

 

クレアがその機動力を活かし過ぎてはいるが、ルサルナは上手く魔法を使い分け支援している。

ウルはまだ難しいらしく、機会がなかなか掴めていない。

 

ブルは未だ腕を組み佇んでいる。

 

「ほっ、やっ、っとぉ!」

「えい!」

「おお!いいぞウル!」

「あなたも働きなさい!」

 

クレアが跳ね回り、ウルがなんとか魔法を放つ。

ブルはそれを見て歓声を上げている。

ルサルナは我慢できなくなって叱りつけた。

 

渋々といった様子で石を拾い上げるブル。

 

「んー…クレアー、当たんなよー?」

「え゛っ」

「え?ちょっと!?」

「おらっ」

 

クレアはかけられた言葉に自分の耳を疑う。

ルサルナは洒落にならないと止めようとするが、遅かった。

 

ぼっ、というよく分からない音とともに投げ放たれた石は、クレアを掠めるように飛んで魔獣へ突き刺さった。

 

へたり込むクレア。

その隙に食らいつこうとする魔獣は、全てブルの投石によって葬られた。

 

「こ、この馬鹿!!」

「おっ…なにすんだよ?」

 

ルサルナは思い切り拳骨を落とした。

落とした手と落とされた頭のどちらが痛いかは言うまでもない。

ルサルナは落とした手を軽く痛めている。

 

「くぅぅ…石頭ぁ…」

「流石に俺も当てねぇよ、多分

「た、多分!?当たるかもしんなかったの!?」

 

少しばかり小声になったが、確実に聞き取った。

言葉に反応して直ぐに顔の横を掠めていったのだ。

ほんの少しずれていれば魔獣の変わりにクレアが並んでいた。

 

クレアは堪らず涙目でルサルナへ抱きつきにいった。

 

「ルナ姉ぇ…」

「いたた…あーよしよし怖かったわね…」

「ふぁ…この弾力…癖になるぅ…」

 

以前折られた心と今回の恐怖心は早々に何処かへ去ったようで、クレアは感触に夢中になっている。

ルサルナはその様子よりも拳の痛みに気を取られている。

 

「にぃ、うまくできてた?」

「おお、勿論ばっちりだったぞ!」

「えへへ、もっとがんばるね」

「ウルは偉いなぁ!」

 

わしゃわしゃと撫で始めるブルとくすぐったそうなウル。

どちらとも微笑ましいはずなのだが、クレアは何か怪しい気配を醸し出している。

 

「ところで、魔獣がなんだか多くないかしら?」

「あー、まぁそうだな…分かる範囲にはもういないが…」

 

ルサルナは疑問に思う。

普段の旅よりも襲撃が少し多い。

ブルはなんとも思ってなさそうだが。

 

「んー、まぁナシクで情報収集してもいいかもね」

「お前が言うならそうするか」

 

若干の違和感を感じつつ、まずは旅を進めることにする二人。

 

真面目な話をしている間、クレアはルサルナの胸を堪能していた。

既に母性というものに魅了されている。

ウルは早くに抱っこされ満足げ。

 

 

時々足を休めながらも、一行は順調に大都市ナシクへ近づいていた。

 

 

 

 

 

「うぁ…!おっきい…!」

 

時折魔獣が襲撃してくるのを返り討ちにしつつ、一行はナシクが見える距離まで来ていた。

ウルは都市を囲む壁や、その向こうに見える塔などに目を奪われている。

 

「あれが大都市ナシクよ。そこらの都市とは比べ物にならないわね」

「久しぶりだー!一度だけ見たことあるんだよねー!」

「とはいえ、まだ案外歩かないと駄目だけどね」

 

大きさ故に、見えてからの距離が遠い。

のんびりと歩いていれば日が暮れてしまうだろう。

 

「さっさと行こうか」

「おー」

 

ブルの言葉にウルが手を上げ反応する。

一行はそれから何もなく巨大な門の前にたどり着いた。

 

門の前には商人などの人達だろうか。

少し列が出来ている。

 

荒くれのような連中もいるが、衛兵も目を光らせている。

流石に難癖などつける輩はいないだろう。

 

とはいえ、美人に美少女、可愛らしい幼子まで連れているブルはもの凄い視線を受けている。

のろのろとしていれば衛兵がいても突っ掛かる連中が出てきそうな雰囲気だ。

いくら来られても丸ごと吹き飛ばせそうだが、都市に入れなくなる可能性が否定できない。

 

ルサルナやクレアも周りと目を合わさず直ぐに列へ並ぶようにした。

 

 

 

「へへっ、いい嫁さんだなぁ旦那?」

「夜もお盛んなんじゃないか?」

「ははは!ちげぇねぇ!でなきゃこんな大きな娘おらんだろうに!」

 

 

衛兵も見ているため大丈夫だというのは甘かったらしい。

手は出してこないが、舐めるように身体を見回し、げらげら笑いながら話しかけてくる。

 

そのうちルサルナやクレアの堪忍袋が破裂しそうだ。

ブルは行動に出ることにした。

 

「あぁ、そうだな。こんないい女なんだ、分かるだろ?」

 

ルサルナの肩に手を回し、抱き寄せながらの一言。

ウルは片手に抱いたままで、クレアはルサルナの腕に抱きついている。

 

「ひゃぁぁ…」

「お母さんは美人だからねー。あんたたちじゃ高嶺の花じゃない?」

「いつまで経っても初々しい反応でなぁ…いつでも最高なんだ。ははっ、羨ましいか?」

 

ルサルナは痛恨の一撃を受けた。

クレアはブルに乗っかり嫌味を言っている。

 

ウルは見るのも嫌なのか胸に顔を押し付けている。

 

 

「ちっ…」

「口の悪ぃガキが…」

「はん!そんだけ自慢するなら俺にも味わわせろや!」

 

口々に悪態を吐きながら詰め寄る荒くれ。

ブル達は衛兵をちらりと見るが動く様子はない。

 

「あれー?衛兵さんは動かないんだねー?あくまで都市の外だっていうつもりなのかなー?」

 

クレアが衛兵に聞こえるように嫌味を吐くが、衛兵は動かない。

 

つまりは多少ボコボコにしても問題ない訳だ。

ブルはそう考えた。

ウルをルサルナに預け、肩を回す。

クレアもルサルナから離れ、楽しそうに笑っている。

 

「あんたら、呑気に詰め寄ってきてるが…やるつもりでいいのか?」

「あはっ!玉無しだからびびってんじゃない?負け組って臭いがぷんぷんするもん」

「んだとガキぁ!」

 

クレアの挑発に堪らず掴みかかるも、それより速く股間に蹴り上げが決まる。

声も出せず蹲る男。

 

「あ、ごめーん。玉あったんだ。なくなったかもだけど。」

 

容赦のない一撃に場の動きが止まる。

ルサルナとウルで慣れたブルはいち早く動き出す。

とある男の胸ぐらを掴み上げ、持ち上げる。

 

「よぉ、てめぇ味わわせろとか言ったよなぁ」

「ぐっ、離せクソ野郎!」

 

ジタバタと足掻く男だが、ブルはびくともしない。

 

「てめぇごときがなぁ、手を出せる女じゃねぇ…ぞ!」

 

ブルは男をそのまま地面に叩きつける。

 

…少しヤバい音がなったかもしれない。

呼吸は…弱いがある。

 

「危ねぇ…貧弱過ぎて殺しちまうとこだった…」

「えー?向こうからやってきたし、良くない?」

「馬鹿、ウルの教育に良くないだろ」

「え…今更言うの…?」

 

クレアは別に良いだろうと思ったが、殺さない理由に聞いて呆れる。

数人殺した程度今更じゃないのかと。

 

挑発した男達は既に逃げ始めている。

容赦なく去勢する少女に、かなり手加減した上でなお殺しかける脳筋。

 

流石に相手していられなかった。

 

ともあれ障害は全てなくなった。

やや引き気味の衛兵たちに笑顔を返しながら、一行は都市内へ入っていった。

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