なんかよくある話   作:天和

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危険物の取り扱いの話

 

「ここ、すごいね…」

「まぁ前のとことは比べもんにならんな」

 

ウルは圧倒されている。

 

人で言えば都市リロイも、港町ポールンも多かった。

ここでも同じように多いが、家屋の作りや並び、道の舗装などはより洗練されている。

まるで違う世界に入り込んだように感じるかもしれない。

 

ウルは次第に好奇心が膨れ上がっていた。

 

「宿屋とったら情報収集でもしとくか?」

「そうねぇ、早いうちから始めましょう」

「えー?まずは休みたいなー」

「いろんなとこみたい…」

 

真面目に話し合う二人と子供らしい二人。

お子様たちはそわそわとしている。

 

「…別れて行動するか?」

「そこまで急ぐつもりはないしね…」

「じゃ、今日はゆっくりしとくか?俺はウル連れて少し見て回るが」

「迷子になるんじゃないの?」

「区画も分けられてるし大丈夫だろ…多分」

 

ウルとクレアがじっとルサルナを見る。

ため息を吐くルサルナ。

 

「はぁ…もう。宿屋とってからね」

「やったー!」

「やったー」

 

二人の視線に耐えられなかったルサルナは許可を出す。

ウルにブルがついていれば大丈夫だろうし、自分とクレアが一緒なら大抵のことはなんとかできる自信がある。

 

ウルについてもそこらの暴漢なら一人で撃退は容易いのだ。

ウルは悪意ある人へ対する攻撃に躊躇はしない。

流石に殺しはしないが、それぞれの町や都市での経験が活きてきている。

 

悪いことも相応に。

 

 

 

「ふぁぁ…もうやめらんないぃ…」

「この子、いつの間にこんな甘えん坊に…?」

「くぅねえのとくべつ、ふにふに」

 

運良く空いていてそこそこ良い宿屋を取ることが出来た一行。

部屋に入った途端、クレアはルサルナをベッドに座らせ胸元に飛び込んでいた。

 

多分お前がクレアの何かをへし折ってからだよ。

そんなふうにブルは思うが口には出さない。

 

「わたしのとくべつはにぃだもんね」

 

そんなことよりウルを愛でねばならないから。

 

 

 

「えへへ…にぃそろそろいきたい」

「よし!行くか!」

 

撫でくり回していたブルがウルの言葉で正気に戻る。

腕は撫で続けているため戻りきってないが。

 

「気をつけてね」

「おう」

「はーい」

「んふへへ…」

 

クレアを抱えて寝転んだルサルナから一言。

抱えられたクレアは夢と愛に包まれ眠っていた。

 

宿屋を出て、特に目的もないため歩き回ることにした二人。

装飾品を冷やかし、ウルのお腹が鳴くために焼き菓子を買い、首が痛くなるほど見上げなければならない時計塔の近くまで移動した。

時計塔の周囲は広場になっており、噴水や長椅子が設置されていた。

そこでブルとウルは少し休憩を取ることにした。

 

両手で焼菓子を持ち、美味しそうに頬張っているウル。

それを嬉しそうに、にこにこと眺めるブル。

 

穏やかな時間が流れていたが、そこに一人歩み寄る者がいた。

 

「あんたずっと見てた奴だよな?なんか用でもあんのか?」

「気づかれておったか。流石は“猪”といったとこかのぅ」

「そう呼ばれんのは懐かしいんだが…何かしてくるならぶっ飛ばすぞ」

 

ブルは気づいていた。

都市に入ってから遠巻きに監視されていた。

恐らくルサルナとクレアにも監視がついているだろう。

どちらにしても危害を加えるつもりなら容赦はしない。

 

ウルはぶっ飛ばすと聞いてそわそわしていた。

美味しい焼き菓子を食べてる途中なのだ。

ちょっと腹が立ったし、嫌なことしてくるなら倒す。

 

ウルは見事にブルのように成長していた。

 

 

「あぁいや…こちらから手を出すようなことは早々ないはずじゃ。儂からまず聞きたいことがあるんじゃが…」

 

やや腰の曲がった老齢の男は、幼子からも危ない空気を感じ、少し慌てて話し出す。

ちょっと残念そうに耳が垂れるウル。

 

「なんだ?言ってみろ」

「お主、“寅”を覚えておるか?」

 

老齢の男の緊張感が高まる。

ブルは少し黙った後に口にした。

 

「誰だそれ?」

「と、“寅”を覚えておらんのか!?お主ら何度か戦っとるじゃろう!?」

 

ブルは覚えていなかった。

いちいち戦った奴の事なんて覚えていない。

特にウルと出会う前なんかは尚更に。

 

「なんと……お主大森林を半分吹き飛ばした事を覚えておるか?」

「大森林…?ぁ、あー…なんかやったような気がする…」

「その時戦った奴が“寅”じゃ。思い出せんか?」

「なんかでっかい奴だった気が…」

 

必死に思い出そうとするもぼんやりとしか浮かばない。

…こちらを見上げるウルのほっぺに焼き菓子がついている。

 

そんなのより天使を見ている方がよっぽど有意義だな。

 

秒で思い出すことをやめウルの世話を焼き始めることにしたブル。

その姿を見て関心の欠片も無い事を悟った老齢の男は、それならばと誘導することにする。

 

「そいつはのぅ、お主に強い敵対心を持っていての。もしかするとお主らを狙ってくるかもしれん」

「あ?埋めるか」

「待て待て…今のところお主らは知られていない。条件付きじゃがお主に奴の居場所を教えよう」

 

ブルはお主らと聞いて殺すことを決めたが、老齢の男の言葉に動きを止める。

ウルは早く終わらないかと待っている。

 

「…条件は?」

「奴を殺さないこと。勿論出来ることなら五体満足でじゃ。しかし、お主が殺されるのであれば別。殺さなければ危ないなら殺して良い…どうじゃ?」

「……受けよう」

 

ホッとする老齢の男。

叩きのめしても来るようなら殺そうと、殺る気満々のブル。

 

「破ったならば、お主らは二度と都市に入れんと思いなさい。」

「ああ」

「よろしい…場所は、都市の闘技場じゃ。そこ以外で戦うのであれば都市から離れてもらわんといかんからのぅ」

 

ブルは静かに頷いた。

ウルは退屈してブルの足へ倒れ込んでいる。

お腹も良い感じに膨れて眠くなっている。

 

「いつでもいいか?」

「闘技場が使われてる時間ならの」

「分かった。連れにも話しておく」

 

ブルはウトウトし始めたウルを抱き上げ、歩き始めた。

 

 

幼子を優しく抱き上げ去って行く背を見送る。

老齢の男は最悪は避けれるかとため息を吐いた。

 

まるで眠る獅子。

起こさなければ良いが、起こせば終わり。

 

今の様子では、とても“猪”と呼ばれるほど暴れ回ったとは信じられない。

 

とりあえず情報共有のため、戻らなければならない。

しかし…

 

「少し休ませて貰おうか…」

 

老齢の男は緊張のあまり疲れ切っていた。

しばし長椅子へ腰掛け震えそうな足を休ませていた。

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