なんかよくある話   作:天和

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1話から順に、少しずつ修正しています。
大筋は変わらないと思います。


武器の話

 

「こ、これは…!」

 

目の前に置かれた物を見て戦慄くブル。

ブルの前には数日前に依頼した金棒が置かれている。

 

ブルは震える手で金棒を持ち上げる。

 

程よい重量、ブルの半分ほどの長さ、丁寧に巻かれた滑り止めの皮は手に吸い付くように馴染む。

そして棘や輪のような飾りなど一切ない無骨な見た目。

 

有り余る力で敵を粉砕、圧倒するためだけの目的で作られた打撃武器。

 

 

とても簡単に説明するなら棒状の金属である。

 

 

「ふふふ…どうだ?気に入ったか?」

 

筋骨隆々の禿げ親父、名前をギャガという。

腕を組み、不敵な笑みを浮かべている。

 

「あぁ!俺は正直武器の良し悪しや金属の違いは分からんが…これは、良いものだ」

 

今にも振り回しそうな雰囲気を醸し出しながらブルは言う。

 

「そいつは今発見されている中で、一番重くて強靭な鉱石のみを使って作ったんだ。」

 

現在ブルは片手で軽々と持っているが、先程運ばれてきたときはギャガが重そうに抱えてきていた。

金棒を置かれた勘定台もみしみしと軋んでいるほどだった。

 

ひょいと片手で持ち上げたブルを見て、ギャガは同じ人類か一瞬悩んでいた。

 

「その分加工の難易度も段違いの鉱石だったんだが…クソつまらん仕事をありがとうよ」

 

よく見るとギャガの目には光がない。

 

なかなか使う機会がない鉱石をただの棒に仕上げたからだろうか。

それとも、加工の難しい鉱石をただの棒にしなければいけなかったからだろうか。

 

何にせよ恐らくは心底楽しくなかったのだろう。

 

ルサルナはなんだか申し訳なくなり、そっと視線を逸した。

ブルは気にも止めずにはしゃいでいる。

 

少しだけ距離を置いたウルは冷たい目。

なんか前のよりもっと格好悪くなったと思っている。

 

「私も持ってみたい!」

「待て!…頼むからそういうことは裏でやってくれ。武器を試し切りとか出来る場所があるからそっちでな」

 

興味本位でクレアが持ちたいと言うも、ギャガが焦ったように制止する。

華奢な少女に持てるとは微塵も思わなかった。

 

支えきれずに床に落としたら穴が空く。

 

見目麗しい少女が怪我するのもどうかと思ったが、店を壊される方が正直嫌だった。

 

 

店の裏は、確かに武器を振る程度は問題ない広さがあった。

 

しかし武器を振るうのはブルだ。

生半端な広さでは足りないと、ルサルナは思う。

 

ブルから手渡されたクレアは、あまりの重さに案の定落としてしまい、その重さで地面にめり込む金棒を見て冷や汗を流していた。

 

笑いながら金棒を拾い上げるブル。

見ている分には、まるで薪でも拾っているかのように見える。

 

あ、これヤバい。

クレアは思った。

 

「おう、そこの丸太に思いっきり降ってみな!」

「お、いいのか?じゃあ遠慮なく」

「振り下ろしだけにしなさいよ!」

「あいよー」

 

ギャガとブルのやり取りに嫌な予感しかしないルサルナ。

横薙ぎなどやられたらエライことになりそうなため、せめてと振り下ろしを指示する。

 

ブルは軽く金棒を振って、藁を巻いた丸太に向かって構える。

 

「…ギャガさん、もっと下がったほうが良いと思うわ」

 

ルサルナはウルとクレアを抱き寄せ、かなり後ろに下がっていた。

ギャガはもしかしたらとんでもない提案をしてしまったのではと焦る。

 

しかし今更辞めてくれなど言えない。

急いで距離を取るように下がり、ブルの方を見る。

 

 

肩に担ぐように構えるブルが不自然に大きく見える。

ブルが大きく一歩踏み出す。

 

強烈すぎる踏み込みによって揺れたように感じた瞬間、形容し難い奇妙で、大きな音が鳴り響いた。

 

ギャガは目を疑う。

 

踏み込んだ足元は大きく沈み、その周囲を割っている。

金棒の太さに合わせて裂かれたような丸太。

途中で止めたのか、金棒は丸太の根本近くで止まっている。

 

「いい…いいぞコイツは!今までで一番だ!」

「にぃすごいね!」

 

一層はしゃぐブルの姿。

いつの間にかウルがその足元で喜んでいる。

武器は格好悪くても、にぃは凄いのだ。

 

 

はしゃぐ二人を尻目に、ルサルナとクレア、ギャガが丸太に近づく。

 

「……多分だが、潰れて埋まってやがる」

「何をどうしたら、こんなことになるのよ…?」

「お兄さんって…やっぱおかしいよね」

 

丸太は金棒の幅の分だけ抉り取るように裂かれている。

幾らか細かい破片が散っているが、明らかに少ない。

 

その根本は穴になっており、棒を突っ込んでみたところ、奥に硬い何かがある。

恐らくは圧縮されてめり込んだ丸太が埋まっているのだろう。

 

三人はウルを抱き上げ嬉しそうに話すブルを見る。

ヤバい奴にヤバい物を与えてしまったとルサルナとクレアは思った。

 

ギャガはゴテゴテと棘だの輪だのつけなくて良かったと思った。

どれだけ強靭だと言っても、なんか簡単に折られそうと思ったのだ。

 

 

 

「にぃ…わたしもぶきほしい」

 

ある程度はしゃいだ後、ウルは言った。

ブルは金棒、ルサルナは身の丈ほどの大きな杖、クレアはメイスに短剣に針にと、やたらいっぱい。

 

三人を見ていたら自分も欲しくなったのだ。

 

「ウル!もしかして金棒が」

「ださいのやだ」

 

今のを見てもしかして、と思ったブルは一撃で膝を付く。

懲りない男である。

 

「ウルが使えそうなのだと…杖くらいかしら?」

「あんまりお高いのは狙われるよねー」

 

ウルは獣人のために、幼い割に力は強い。

幼い割に、というものなので金属製だとどうしても小さいものでないと扱いきれない。

一番重要なのは失敗して怪我するのが怖い。

 

そういうことで、ウルは魔法の補助となる杖が良いだろうと二人は考える。

 

しかしあまり良いものを持たせるのも気が引ける。

大抵ブルかルサルナがべったりではあるが、以前のように逸れることもある。

 

そうなったとき、高価な物を持たせていると余計に悪い虫が寄ってくるだろう。

 

頭を悩ます二人の耳に可愛らしい音が聞こえる。

目を向けるとお腹を抑えたウルの姿。

 

「先に美味しいお店を探さないとね」

「そだね!私もお腹減ったー」

「んぅ…ぶき…」

 

武器も欲しいが、食いしん坊のウルはご飯の方が魅力的に思える。

僅かに迷うも直ぐにご飯に天秤が傾くのだった。

 

 

動かないブルに、ウルが怒りの体当たりを決行するまであと少し。





ブルの武器のイメージは金属バットです。
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