誤字報告ありがとうございます。
少し体調が崩れ気味で更新が遅れています。
翌日、ブル一行は野党が拠点としているであろう場所まで来ていた。
正確には拠点をある程度監視できる位置だが。
そこそこの人数がいるようで、ざっと偵察しただけでも数十はいる。
簡易的な櫓や丸太の防壁も作られており、多少の戦力であれば簡単に防衛出来るだろう。
「さて、どうする?」
ブルが口を開く。
ぶっちゃけ正面から叩き潰すのが一番早いと思っている。
「ぶっちゃけ正面から叩き潰せるよね」
クレアが心を読んだかのような一言。
正直ブルもルサルナもそう思っている。
「もやしちゃだめ?」
ここにきてウルの無垢な一言。
木で出来てるし、燃やしたら簡単だよね、と。
ブルとルサルナの視線がクレアに突き刺さる。
要らんことを教えたな、と。
クレアは必死に首を横に振っている。
「ウル、あのね?こういう場所で火を使うのは良くないの。もし、人質がいたり、飛び火したりで周りに燃え広がったら無駄に被害が出ちゃうからね」
「それにせっかくの物資まで燃えちまうのは勿体ない」
「そーなんだ…」
ちょっと落ち込むウル。
耳もなんだか垂れている。
それを見て、すかさず伸びる二本の手。
「今回は違う方法でやるけどな、そうやって意見を出してくれることは嬉しい。」
「そうよ。そしたらもっといい方法が出るかもしれないから、遠慮せずにどんどん言ってね?」
「…うん!」
優しく撫でる二人。
萎れた耳も俯いた顔もあっという間に元気になる。
クレアはちょっと面白くない。
面白くないからウルを巻き込みつつ、ブルとルサルナに抱きついた。
町中なら絵になる光景も、この場所では場違いなのは間違いない。
ほんわかとした空気が広がっている。
暫くして。
「ぱっと見出入り口は一つ。隠し通路やらは分からんな…」
「櫓を潰して、ブルとクレアが中に侵入して、私とウルが出入り口を固めるわ」
「迅速に制圧して、逃げ道がないか探せばいいってことね?任せて!」
「るぅねえといっしょ」
結局、力業に持ち込む一行。
何事も単純なのが一番である。
「奥の櫓は俺が潰す。後は建物内の制圧を中心にやる」
「私はそこらをプチプチ潰せばいいのねー」
「ウル、手前側の櫓は任せるわ。大丈夫、もし難しいなら手伝うわ」
「がんばる…!」
「そんじゃま、手前の櫓を潰したら突入する。クレア、ちゃちな門は吹き飛ばしてやるから俺に続け」
「はいはーい!お願いね、お兄さん!」
ぴしっ、ぱきっと凍りつき、罅割れる音。
集中するウルの頭上には円錐形の大きな氷。
ウルがカッと目を見開いた直後、勢いよく射出される氷。
それは櫓を支える柱を大きく抉りとった。
「て、敵襲だ!あ、うおあぁぁ!」
逃げること叶わず櫓とともに落ちていく野党を見送る。
ウルはそれを見ても特に思うことはない。
当てる自信があれば直接人を狙おうとしていたほどだったが、遠距離では自信がないため、櫓本体を狙ったのだ。
崩れた櫓が地面に落ちた直後、拠点の門が吹き飛ばされる。
金棒すら使わない、ブルのブチかましである。
ブルは勢いそのままに拠点の奥へ駆けていく。
混乱で動けずにいた野党の背後には、笑顔のクレア。
「な、あ…ぇ?」
野党は痛みを感じて視線を下げると、胸を貫く針がある。
体から力が抜けて倒れる男の目には、可憐な少女が容赦なく仲間を殺す姿が映っていた。
「あはっあははは!楽しいねぇ!ほらぁ!もっと頑張ってよ!」
逃げ惑う野党をクレアが追い回している。
ここ最近の鬱憤を存分に晴らしているようだ。
魔法が飛び、針が飛び、クレア自身が飛んでくる。
入り口の方に逃げようとした男たちは女と幼子の変な二人組の魔法で倒されている。
この場にいれば暴れ回る少女に殺される。
建物に逃げ込もうにも建物ごと粉砕している化け物がいる。
出入り口は近づく前に魔法で吹き飛ばされる。
野党たちは武器を投げ出し、膝をついた。
ブル達が生き残りを全員縛り物資やらを集め終えた頃、出入り口に兵士たちが集まってきた。
どうやらあの老人が手配したらしい。
「後はこちらに任せてください。後ほどまた伺わせて頂きますので」
「なら頼む。正直面倒だったんだ」
「いえ、仕事ですので。…討伐ありがとうございます」
「こっちも仕事だ。たがまぁ、どういたしまして」
後片付けを兵士たちに任せ、ブル一行は帰路につく。
規模は大きかったが、敵の練度は高くなかったために楽な仕事だった。
そこそこに溜め込んだものもあったため、臨時収入としても悪くない。
ブルは抱っこしているウルを見る。
いつの間にかお菓子を取り出して美味しそうに食べている。
ウルは櫓にいた者や、出入り口に逃げてきた者を魔法で迎撃している。
それは容赦のないもので、ちらりと見ただけだが恐らく数人は殺している。
初めて人を殺したときは多少は精神的にクるものがあるはずだが、この様子を見ると全くなさそうだ。
なんとなくクレアと並んで笑いながら殲滅するウルが思い浮かぶ。
悪くはないように思えるのだが、最初に思い描いたものとはかなり違う。
やはりクレアには釘を刺さねば。
そんなことを考えるブルだった。
その時、ルサルナも同じことを考えており、クレアは謎の悪寒に襲われていた。