なんかよくある話   作:天和

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贈り物と再開する話

 

「うぅ…?」

 

いつもよりなんか安心感が薄い。ついでに平たい。

ふと起きたウルはクレアに絡みつかれていた。

 

「むむ…むぅ…」

「んー…んふふ…」

 

逃げ出そうとするも良い感じに抱きしめられ抜け出せない。

ゴソゴソと動いているうちにクレアにもっとぎゅっと抱きしめられ、どんどん動けなくなる。

 

暫く続けていたが、そのうちウルは諦めて寝ることにした。

寝心地はあまり良くない。

 

 

 

「なんか苦しそうだな…」

「まぁ…寝心地は悪そうよね」

「ぅぅ…」

 

ブルとルサルナが起きると、なんだか苦しそうな声が聞こえた。

そちらへ目を向けると、幸せそうに絡みつくクレアと、なんとも言えない表情で絡みつかれるウルがいた。

 

「…起こすか?」

「自分達で起きてアレに気づいてほしいのだけど…」

 

二人が寝ているそばには、手紙と箱が置かれている。

手紙にはウルとクレアの名前が書かれている。

 

つまりは贈り物だった。

 

どうせなら自分達で起きて気づいてほしい。

ここで起こして気づく…というのはなんとも座りが悪い。

ウルには悪いが、なんて考えつつ、二人はそっと部屋を出ていった。

 

 

「にぃ!みてみて!」

「ルナ姉!見て!」

 

ブルとルサルナが食堂でのんびりとご飯を食べていると、ドタバタと慌ただしい足音が響き、ウルとクレアが飛び込んでくる。

 

それぞれ大事そうに持っているものがある。

 

ウルは魔法の補助のための杖。

短剣と言うには長く、全体に装飾が掘られている。

ルサルナに助言を頂きながら、ブルが購入したもの。

 

クレアは髪飾りだった。

ウルと対になるような太陽の装飾。

先日ルサルナがこっそりと買ったものだった。

 

「えへへ…にぃありがとー」

「ふへへ…ありがとルナ姉」

 

ルサルナの胸に顔をうずめるクレアから、なんだか怪しげな笑い声。

無垢っぽいウルの様子とはかなり違う。

 

それぞれきゃっきゃとはしゃぎ、食事もとった後で、ブルとルサルナが切り出す。

 

「そろそろここを出発しようと思う」

「結構長居してるからね」

 

ウルがなかなかに気に入っていたため、住み続けてもいいのではないかと、二人も考えていた。

しかしせっかくなので、もっと色んなところを見せてあげたいと考えたのだ。

その上でやはりこの都市が良いと思うのなら、ここに戻ってくればいい。

 

ブルとルサルナは最終的にそう考えた。

もちろん強く反対が出るようならば、このまま暫く滞在することにする。

 

それに大男も回復したようなので、いつまた現れるか心配なのもある。

あの老人が上手いこと手を回しているようではあるが…

 

 

「わすれてた…」

「私はどっちでも大丈夫!」

 

ウルは今が楽しくて旅を忘れていた模様。

なんとなく耳を垂れさせながらブルをちらりちらりと見ている。

ブルはすぐさま撫で回した。

 

クレアはルサルナに抱きついたまま。

やんわりと引き剥がされることに抵抗している。

 

「たび…たのしみ、だよ?」

「ウル…!なんて偉い子なんだ…!」

 

ウルの言葉にブルは感動を滲ませる。前がよく見えない。

いつも通りの光景に見つつ、クレアを引き剥がすルサルナ。

クレアは別の意味で涙を滲ませている。

 

 

「では寅に見つからぬよう、上手く抜け出せるように手引きせねばならんのう」

「爺さん、そういうことだ。頼むわ」

 

平然と返すブルだが、他の三人は驚き固まっている。

老人は気づけばいつも近くにいるのだ。

それにはまだ慣れる事ができていない。

 

「ほっほっほ…お主は驚かぬからつまらんのぅ」

「もっと上手くやれば驚くかもな」

「ほほ、爺に無茶を言うでない。保存食など買っておったな?いつ出るのかのぅ?」

「今からだな…そういう予定だった」

「そうかそうか…ではついてきなさい。なぁに、焼き菓子もしっかりと買えるから心配はなさんな」

 

三人が驚いている間に話は進む。

そうして老人が席を立ち、ブルもウルを抱えて立ち上がる。

ルサルナもはっとして、クレアを引っ張り後をついていく。

 

 

焼き菓子を幾らか購入し、すいすいと裏通りを進んでいくと、何事もなく都市の出入り口に到着した。

何かしら待ち受けているかと思いきや、拍子抜けであった。

 

振り向いた老人が話し始める。

 

「最近魔獣が多いと各地で報告があっての。この周辺でもやはり目撃や被害が増えておる。お主らも気をつけなさい」

「各地で、ねぇ。急にそんな話をしてどうしたの?」

「ほほ…旅のついでに、原因があるかないかを探してほしいのじゃよ。旅のついでに、のぅ」

「うわぁ」

「うぅ…?」

 

面倒そうな予感のしたルサルナは案の定だと思う。

クレアも世話になった分、断りにくい上に、ついでと念押ししてくることに顔を引き攣らせる。

ウルはあんまり良く分かっていない。

 

「何かあれば依頼屋に連絡を頼むの。猪からであれば分かるからのぅ」

「爺さん、あくまでついでだからな。分かったときは連絡する」

「それで十分じゃよ…では、気を付けてな」

 

老人はいつものように雑踏へ消えていく。

その姿を見ながら、ルサルナとクレアはほっと息を吐く。

 

「はぁ、出発前から疲れるわ…」

「全くだよねー。あのお爺さん怖すぎだよ」

「まぁ出発しよう。さっさと出ねぇと“アレ”がきても困る」

「早く行きましょうか」

「“アレ”は勘弁だねー」

 

ブルの一言で歩き始める一行。

流石に大男まで相手にしたくはなかった。

 

少しずつ遠ざかっていく大都市ナシク。

離れてもまるですぐそこに思えるほど大きな都市。

 

 

いつか、またいきたい。

 

ウルはブルの肩の上から、その光景を目に焼き付けていた。

 

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