なんかよくある話   作:天和

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ほのぼの旅する話

 

耳はしなだれ、背は曲がり、足には鉛がついたよう。

端的に言うと、ウルは疲れていた。

 

「にぃー…つかれちゃった…」

「おぉよしよし…兄ちゃんが抱っこしてやるからな」

 

ぷよぷよなウルは疲れやすい。

 

甘やかし過ぎじゃないかと問われたブルは、年齢もあるだろと声高に主張した。

もちろんウルだって頑張っている。

 

ただ暫くの都市生活で、もちもちぷよぷよになってしまっているだけである。

魔法とお勉強と食事は頑張ったが、運動は頑張らなかっただけなのだ。

もちろん肥え太っているわけではなく、健康的な身体つきになっている。

 

「くぅ…」

「…寝たな」

「ルナ姉私も疲れたー!ふぎゃっ!」

「あなたもちょっと甘えすぎよ」

  

抱っこされて瞬く間に旅立つウル。

きっと夢の中でも抱っこされている。

 

便乗して甘えようとしたクレアは素っ気なくあしらわれている。さもありなん。

 

「しっかし、魔獣が多いらしいが…そんな感じはないな」

「まぁどこもかしこもって訳でもないし、もし多ければ調査するくらいでいいでしょ?」

「そーだよ。わざわざ調べる必要ないじゃん」

 

都市を出発してからは平和そのものだ。

時折ブルが石を投げる程度で撃退出来ている。

都市に入る直前に群れと遭遇しているため、また世話になった老人が言っていたために、ブルはそこそこ気にしていた。

 

ルサルナとクレアは出来れば面倒事には関わりたくないので、そもそも群れなどに遭遇したくないのではあるが。

 

「そうだな…ない方がそりゃいいよな」

「そうよ」

「そうそう!」

「んみゅ…」

 

もぞもぞとウルが動き、寝やすい位置を探す。

いい位置があったのか、ふにゃりとした顔でまたすやすやと眠り始めた。

その様子をじっと見ていたブルが口を開く。

 

「わざわざ危ないとこに行く必要はない。このまま平和にいこう」

「ブル…」

「お兄さん…」

 

最近またウルに甘くなってきている、そう二人は思う。

確かにウルをわざわざ危ない場所に連れて行く必要はないし、面倒事に首を突っ込む必要はない。

ないのだが、なんとなく納得できない。

 

残念なことにブルはウル至上主義のため、二人の様子など気にしていない。

ウルが良ければ全ていいのだ。

 

はぁ…とため息を漏らすルサルナ。

好機とばかりに擦り寄るクレア。

 

今日も一行は平常運転である。

 

 

 

 

「ふんふんふーん」

「るーるーるーん」

 

少し眠って回復したのか、上機嫌なウル。

真新しい杖をぶんぶんと振り回している。

 

隣ではしれっと手を繋いだクレアがメイスを振り回している。

可愛らしい姿と裏腹に、なんだか血生臭い感じが振り払えない。

実際拭ききれていない魔獣の血がメイスに付着したままである。

 

きらきらとぎとぎとが混ざり合う、不思議な光景を作り出している。

 

「可愛いのに…なんでかしらね」

「暴力の申し子なんじゃねぇの?」

「それはあなたでしょ」

「人のこと言えねぇだろ」

 

暴力を人型に固めたような男と、躊躇なく急所を狙う女が話している。

会話の殴り合い。

 

後ろの保護者っぽい二人は、間違いなく暴力の申し子である。

投げたものが倍ほどになって返ってきているとは思ってもいない。

既にウルも足を踏み入れているが、贔屓目しかないブルとルサルナには見えていない。

 

「お、これは…魔獣だな。数は二匹か」

「はいこれ」

 

ブルの感覚が魔獣を捉える。

流れるように石を渡すルサルナ。

 

「助かる…おらっ!」

「はいもう一つ」

 

ぶん投げた石の行く先を聞く前に、またも流れるように石を渡すルサルナ。

常識はとうに石と一緒に投げ捨てている。

 

「よし、ありがとな…おらぁ!」

「最低限だけ素材の確保しましょうか」

 

当たったかは聞く必要もない。恐らく当たっている。

剥ぎ取り用の小刀の点検を早々に行っているルサルナには何の感慨もない。

 

前方の二人も特に驚いたりしていない。

初めのうちこそ、ほとんど視認も出来ない殺傷力抜群の投石にびびっていたクレアだが、今ではスレスレでもなければ慣れたものだ。

ちなみにウルは初めからびびってなどいなかった。

いつか自分もやってみたいとは考えている。

実はたまに練習しているが、今でも変わらずにヘロヘロとした投石である。

 

クレアは牽制くらいには使える程度の力量である。

色んな物を投げてきた経験があり、投げ物にはそこそこ強い。

 

ルサルナはやはりというべきか、そこまでの威力はない。

そこらのチンピラであれば使える程度である。

一応頭脳派のため、身体能力的なものはそこまで高くない。

飛ばすのは魔法で間に合っている。

 

「ウルちゃん、一緒にやろっか?」

「っ!やる!やりたい!」

 

むん、と気合の握り拳。

ふんすふんすと鼻息荒く進むウルは、微笑ましさに溢れている。

くすくすと笑うクレアも、今は血生臭くはない。

後ろの二人もこれにはにっこりである。

 

 

「んむ!うぅぅん…!」

「あはっ!ちょっと力が足りないねー」

 

顔を真っ赤にして頑張るウルだが、如何せん力が足りない。

教えてもらいながら、なんとか解体しようとするも進まない。

 

「にぃたすけて…」

「よし任せろ」

 

ずっと後ろでそわそわしていたブルが参戦する。

痛くないように手を添えつつ、手早く解体していく。

ウルが手掛けたところは、お察しである。

 

「ありがと」

「どういたしまして。もうちょい力がついてからだな」

 

ぷぅと頬を膨らませるウル。

寄ってたかって突っつきに来る三人。

 

ウルが帯電するまで後少しである。

 

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