なんかよくある話   作:天和

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行いは自分に返ってくるという話

 

どよどよとざわめきが収まらぬ野次馬を引き連れ、一行は町へと戻った。

ざわめきの内容は称賛と疑問。

 

つまり、すげぇやべぇといったものと、本当に人なのかという声。

ちらりとブルが目を向けるとたちまち静かになる。

 

 

「あーあー結局やられるだけかー」

「最後ちゃんと反応できてたじゃねぇか」

 

やはり連携以前に個人としての力量が…などと真面目に考えるクレアにブルの声がかかる。

 

「確かに、最後しっかり反応してたものね。すごいわ」

「ふふん、まぁ?私にかかればあの程度」

「じゃあ次からあの程度で手合わせな?」

「すいませんでした…」

 

ルサルナに褒められ調子に乗るクレアだが、伸びた鼻は数秒でへし折られる。

 

「ルサルナのも厄介だったが…やっぱりウルだな!流石ウルだ!」

「ふふん、まぁわたしにかかればあのていど」

「くぅ…!食っちゃ寝ばっかのくせにぃ…!」

 

ブルがウルを褒めながら高い高いとする。

伸び盛りのウルは鼻高々。クレアの真似をしている。

 

「俺は良いとこなしですわ…」

 

巻き込まれた男、カニス。

半ば強引に巻き込まれた上に大した活躍できず。

 

「カニ君は…まぁ頑張ってたよ」

「カニはそうね…頑張ってたわ」

「そういう気遣いは一番辛いんですよ…あと俺はカニスです」

 

初撃を受け流され投げられて、後ろに回り込むも隙はなく、そのまま反応できずに掴まれた。

 

褒めるところをあげるのならば、後ろで圧をかけたくらいだろうか。

 

「あー、まぁカス君は」

「カス…?」

「悪い、強さ的にカス君は」

「ここまで悪びれない人は初めてっすよ」

 

大して役に立たないままウルに媚びを売る男を許さないみみっちい男、ブル。

平然と吐かれた悪態に流石に突っ込むカニス。

 

「後ろで虫みてぇにウザったかったのは評価するわ」

「そんなに俺のことが嫌いか…?」

 

口の悪い男からウルを取り上げるルサルナ。

あぁ…とブルが伸ばす手を払い落としている。

 

ウルはさよならを告げるように手を振っている。

 

「ウル、あんなふうに人を貶したら駄目だからね」

「けなし…?」

「ウルちゃんはあんな悪口言ったら駄目だよーってこと」

「なるほど…うるはまたひとつかしこくなってしまった」

「本当にどこで覚えてくるのかしら…」

「くぅね」

「そこら辺の人の会話じゃないかなぁ?」

 

ウルが暴露する前に口を塞ぐクレア。そして視線は明後日の方向。

隙間を縫うようにして、ウルに変なことを教えるのが楽しくて止められない。

 

なお、ブルもルサルナも直接見ていないだけで大体分かっている。

もし現行犯で捕まろうものなら、暫くブルによる’可愛がり‘が行われるだろう。

 

 

焼き菓子をそっと手渡し口止めし、ウルを引っ張りそそくさと先に歩き始めるクレア。

 

「あぁ…」

 

後ろから聞こえるものすごく切なげな声を聞き流しながら。

 

この世の終わりのような顔をしたブルの肩をルサルナが叩く。

カニスもその場の雰囲気で叩いている。

 

がっ、とブルがカニスを捕まえる。

 

「ひぇ!調子こいてましたすいません!」

「カニスぅ……飲むぞ」

「…はぇ?」

 

悪鬼のような姿に謝るカニス。

続くブルの言葉に理解が追いつかない。

 

「辛いとき、悲しいときは…酒を飲むんだろ」

「え、いや…それだけじゃないですけど」

「飲むんだろ」

「その通りデス」

「まぁ…好きにしたらいいけど…やらかさないでよ?」

 

ウルを取り上げた手前、ちょっと止めにくいルサルナ。

何かやらかしてくるだろうという確信はある。

正直あれだけでこうなるとは思っていなかったが。

 

「行くぞカニス」

「助けて…あぁ…」

 

伸ばされる手はルサルナに払い落とされる。

先と同じような姿なのに絶望感があまりに違う。

巻き込まれたくないために払い落としたが、なんだかすごい罪悪感があった。

 

「…いつでも逃げれるようにしなきゃ」

 

 

罪悪感か、それとも更地になった町からか。

更地だけは勘弁してほしいなと、ルサルナは思った。

 

 

 

 

 

 

とろとろと歩きクレア達に追いつく。

ウルがクレアに何かしらを吹き込まれている。

ため息を吐きながらクレアに声をかける。

 

「また変なこと教えてるの?」

「そ、そんなんじゃないよー?ね、ウルちゃん?」

「むぐむぐ…ばれないうそのつきかた…あれ?にぃは?」

「口止めしたのに…!」

 

さらりと教えられたことを暴露するウル。

今、腹の中に収まった口止め料はさっきの分である。

ウルはお高い女なので、口止め料はその都度必要であった。

 

軽い拳骨を落としつつ、ルサルナはウルに返す。

 

「カニとお酒飲みに行ったわ」

「おさけ」

「痛ぁ…お酒なんて飲むんだね」

 

ルサルナは素直に伝える。

そうしたほうがウルが納得するだろうと。

 

「わたしもおさけのみたい」

「子供のうちに飲むと体に良くないのよ。ウルが体を壊したら…ブルが悲しむわ」

 

一瞬言い淀むルサルナ。悲しむだけで済むはずがない。

ブルが悲しむと聞いて諦めるウル。優しく素直。

ぽんぽんと頭を撫でるクレア。

 

「お子様にはちょぉっと早いかなー?」

「くぅねぇもおこさまたいけい?だもんね」

「かはっ」

「変なことばかり教えるからよ」

 

からかうクレアをウルが切り捨てる。切れ味は鋭くなるばかり。

鋭すぎる切り返しに平野を抑えて苦しむクレア。

 

「まだ…まだ余地は残ってるもん」

「そうね、そうだといいわね…」

「わたしとおそろい」

 

残酷な未来から目を背けるルサルナ。

似たような体型が嬉しいのか、にこにこのウル。

 

気遣いが刺さり、無垢な喜びが心を撫で切りにしていく。

 

「そんな、酷い…うぅ…」

 

ほろりと零れる雫。少しわざとらしい。

 

「なみだはおんなのぶき、ってくぅねぇいってた」

「同情の余地は残ってないわね」

 

またしても行われた暴露。この状況では致命的であった。

 

 

自らの行いは自らに返ってくるという。

良いこと悪いことそれぞれに。

 

 

しかしそれにしても、返ってきた行いが強くなりすぎている。

こういうのは同じくらいで返ってくるはずじゃなかったのか。

 

ちょっとした悪戯が…ウルも楽しんでいたのに、どうして?

 

 

クレアの目から、本心からの一雫が零れ落ちた。

 

 

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