なんかよくある話   作:天和

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買い物と勉強の話

 

目が覚めた。外はまだ暗い。腕が痺れている。

…いつの間にか左腕を枕にされてる。

そろそろと腕と枕を入れ替える。唸っているが起きない、良し。

 

ちゃちゃっと用を足すことにしよう、ブルは急いだ。

 

戻り際、なんだかざわざわと心が波打つ。

なんとなく分かる。ウルが起きたな、と。早足で部屋まで。

 

そろっと中を覗くと、淡い緑色のぱっちりとした目がこちらを見ていた。

…視線に縫い付けられそうだ。目で殺すとでも言うのだろうか。

 

すすっと何でもないようにベットに近づく。瞬きもせずに視線が追ってくる。手の届く範囲まで来た途端、わしっと掴まれベットに引き倒される。見事な身のこなし、素晴らしい。ウルはいそいそと毛布を被り、ブルの腕の位置を調整し、枕にしてすやすやと寝始めた。

ブルは考える。寝る前には用を足しておこうと。心臓に悪い。

 

 

 

 

 

「んやぅ、む、むぅ」

 

起床後、ウルの顔をわしわしと拭きながら、ブルは今日は何をするか考えていた。

昨日の依頼でそれなりの額は稼げている。以前であれば依頼を受けに行くか、宿で寝ているかが多かった。

んー、と悩んでいるとぺしぺしと腕を叩かれる。もう十分のようだ。じとっとした目がこっちを見ている。

古着に身を包んだ姿。

 

閃いた。

 

ウルになんか買ってあげよう。

 

 

 

大きめの服飾店に入り、ウルと見て回る。男は服の良し悪しなど分からない。手を繋いだウルに聞いてみる。

 

「ウル、どうだ?着たいもんとかあるか?」

「ん?…わかんない。」

 

ウルも分からなかった。今は古着を着ているが、つい数日前まで襤褸切れを被って服にしていたのだ。寒さを凌げればいい。その程度の認識。

 

「そうかぁ…」

 

どうすっかなぁと悩んでいると、仕事の出来そうな女と目が合う。互いに頷く。

 

「この子にいくつか選んでやって欲しい。下着の方も。動きやすいのもひと揃い頼みたい。これだけあれば足りるか?」

「問題ありません。まとめて購入していただくのであれば、こちらも勉強させていただきますので。」

「え?」

 

頷きあう。そっとウルの背を押す。ウルは困惑している。

 

「え、にぃ?」

「さぁ、こちらへどうぞ。もっと可愛くなって、お兄さんを魅了しましょう。」

「はわわわ…」

「楽しみに待ってるからな。」

 

流れるように案内されるウルに手を振る。長くなりそうだし、装飾品でも見ることにしよう。

 

 

 

「お待たせいたしました。」

 

その言葉に振り返る。衝撃。とても良い意味で。

薄い茶色のキャスケット、服は白を基調とした上下一体のもの。

 

大きめの茶色い襟、胸元にはリボンが付いている。腕は長袖、ひらひらふわふわとしている。腰元の帯がいい味を出している。足元は膝丈で、こちらも裾にひらひらが付いている。白色と茶色のふんわりとした衣服は、絶妙にウルに合っている。靴下も膝上まであるのだろうか。長いものを履いている。靴は黒、ストラップで足に固定するようだ。

 

ブルは思う。ただ素晴らしい、と。語彙力はどこかに走り去っていった。

静かに膝をつくと、一言。よく似合っている、と。

ウルは少しきょとんとしていたが、やがて顔を綻ばせた。

 

 

「その他はこちらに纏めております。」

「ありがとう。最高の仕事だった。」

「いえ、当然のことですよ。またのご利用をお待ちしています。」

 

店を出る。ウルは女に小さく手を振っている。ブルは堪らず笑みが溢れた。

荷物を置くため宿屋へ。ついでに昼食を済ませる。ウルは隣に座って食べている。距離は近いが。

 

「なぁ、ウル。なんかしたいもんとかってあるか?」

「まほう」

 

即答だった。魔法とは誰もが使える技である。使うにはある程度練習も必要だが、それだけ。

 

「魔法かぁ、なんでだ?」

「まほうで、にぃのおてつだいしたい」

 

可愛いじゃねぇか。無意識に撫でまくる。ウルは手に擦りつく。しかし、困った。ブルは自分の強化しか出来ない。教えようにもどうすれば…困る?

 

「あ、依頼出そう。」

 

 

 

早速二人は依頼屋へやって来た。まっすぐに受付へ。

 

「依頼を出したい。この子に魔法の指導をしてもらいたいんだが、初めてのことで相場が分からん。それも聞きたい。」

「珍しい依頼だね。大抵は自分らでやるもんだけど、そうだね…1日でこれくらいかね。」

「それで頼む。」

 

教えて貰いつつ依頼書を作成し、提出。

まだ日は高くにある。何かないか。依頼屋を出て、歩きながら考える。そういえば、あった。

 

「ウル、一緒に」

「する」

「…」

「にぃといっしょならなんでもたのしい」

 

抱き上げ、ぎゅっと抱きしめる。

全世界にウルの素晴らしさを布教しなければ、などとブルは考えている。

皆さん、これがうちの子ですよ、と。

 

 

筆記具やらを買い揃え、宿に戻る。お勉強の時間。最低限の読み書き程度は教えられる。ブルのやる気は天井知らずだった。

 

 

 

 

勉強も一段落し、食事も終え、清拭や着替えも終えた。後は寝るだけ。

ベットでうつらうつらとしているウルを見る。

 

ウルは恐ろしい程に物覚えが良かった。近いうちに簡単な書物は一人で読めるだろう。なんとなくだが、魔法も直ぐに習得するだろう。身内贔屓だろうが、将来は人類上位の強さを得る、そんな気がしてならなかった。

 

しかしまぁ、ウルはウルだ、とブルは思う。

健やかに育ってほしい、と願う。寝る子は育つと言うし。

 

 

限界なのかベットに沈み始めたウルを見て、自分も寝るかとベットに潜り込んだ。

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