なんかよくある話   作:天和

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仲良しな話

 

ぷりぷり怒っていたウルはすやすやと寝始めた。

たっぷりの焼き菓子を食べてお腹いっぱいになったのだろう。

 

寝ている場所は勿論、土下座するブルの上。

 

クレアに対する仕返しも済んだウルは、それはもうよく食べた。

いつもの倍は可愛らしいぽんぽんを膨らまし、でろんとブルの上で伸びている。

 

噛み付かれたクレアは床に転がって動かなくなっていた。

 

アメリアはウルがうとうとし始めた頃からソワソワしていたが、その辺りからウルがブルの服を握り締め始めたので、運ぶことを躊躇していた。

 

完全にウルが寝付いたことを背中越しに認識するブル。

ほんの少しだけ体を浮かし、カサカサとでも聞こえてきそうな動きでベッドへ向かう。

 

「うわぁ…」

 

ドン引きするアメミア。

ゴミなどに群がる黒い虫を見るような目。

 

音も振動も微塵も感じさせない気遣い溢れる動きなのだが、嫌悪感だけは溢れるほどに感じさせる。

 

カサカサとベッドへ乗り込んでいくブル。

そのままベッドへ同化するように体を伸ばし横になっていく。

面積が大きくなり良い感じに寝やすくなったのか、ウルがますますでろんと伸びていく。

アメリアは顔の引き攣りが増している。

 

横になり、そろそろと毛布に手を伸ばしたブルは気づく。

 

「しまった…!手が届かねぇ…!」

「…はいどうぞ」

 

ウルの姿勢的に体制も変えづらく、クレアやルサルナも頼れない、そんな状況。

救いの手はすぐ側から差し出された。

 

どことなく引いた顔で毛布をかけてくれる、ここ何日かよく見る少女。

ウルを愛でるのに忙しく、名前も覚えていない金髪の少女。

 

「きんきら娘」

「…きんきらって私のこと!?アメリアと言います覚えてください!!」

 

何日も入り浸っているのに、名前も覚えていないブルに思わず声が大きくなるアメリア。

声を上げてからウルが寝ていることを思い出し、はっと口を抑えている。

うにうに言いながら起きる様子はない。非常に可愛い。

 

「てめぇ今ウルが起き…いや、まぁいい。助かる」

「起き…?いえ、お礼なら名前を覚えてください。アメリアと言いますから」

「気が向いたらな」

「それは覚えるつもりがないのでは…?え?もう寝たの?」

 

聞こえてくる、二人分の穏やかな寝息。

そろっと顔を覗き込むと、二人揃って良い夢を見ていそうな顔。

 

「はわわ…微笑ましぃ…」

「寝てるときは優しそうだよねー」

「ひゃわ!」

 

縁側で寄り添って眠る爺ちゃん婆ちゃんを連想させる、穏やかに眠る二人。

幾らか前までよく見ていたものだったが、村を出てからあまり見れなかった光景にアメリアもほんわかしている。

 

直後ににゅっと出て来たクレアに悲鳴を上げているが。

 

「もう!驚かさないでよ」

「驚かしたつもりなんてないもーん。勝手に驚いたんでしょー」

「あー!そんなこと言うんだ!このー!」

「きゃー!襲われるー!」

 

ぱたぱた、ぺちぺちとじゃれ始める二人。声量も動きも控えめ。

ただ覚醒が近かったのか、静かめに行われるそれに反応し目覚めるルサルナ。

 

「………」

 

夢見でも悪かったのだろうか。目付きの悪さが半端ではない。

垂れ下がった髪の間から覗く瞳。その姿は山姥も逃げ出すだろう。

数秒、ぼうっと手元を眺めていたルサルナは視線を動かす。

 

動いた先には、起き上がったルサルナに気づかずじゃれる二人。

 

「…ねぇ」

「あ、起き、ひぇ…!」

「あわわ…」

 

かけられた声にクレアが振り返ると、そこには幽鬼のようなルサルナ。

思わずアメリアに抱きつくクレア。

アメリアもまた、クレアにしがみつくように抱きついた。

 

「少しだけ、静かにしてくれないかしら」

「はい…」

「すいませんでした…」

 

普段より低い声で話すルサルナはぱっと見で非常に機嫌が悪い。

夢の中で穴という穴から血を垂れ流す化け物に付け回されていたためである。

 

その迫力、魔王の面目躍如と言ったところか。

震え上がったまま返事するクレアとアメリア。

 

ぽすんと枕に沈み込んだルサルナを見た後、抱き合ったまま顔を見合わせる。

 

「…クレアが驚かすから」

「その後はアメリアからやってきたじゃん」

「クレアだってむしろ煽ってきたもん」

「おー?」

「なによー?」

 

仲良く抱き合ったまま小声で言い合う二人。

とある視線がまたこちらに向いていることに気づいていない。

 

「おい…」

「はい!?」

「ひゃあ!?」

 

小さくも自然と耳に入ってくる低い声。

びくっと反応した二人とブルの視線がかち合う。

 

「仲が良いのは結構だが…今はウルがお休みなんだ。分かるな?」

「はいモチロン」

「理解してます…」

「仏の顔も三度まで、だ。いいな?」

「はぃ…」

「分かりました…」

 

音もなくまたベッドに徹し始めたブルを暫く眺める二人。

また抱き合ったまま顔を見合わせる。

 

「外、出よっか…」

「そうしましょ…」

 

ささっと準備を済ませて出ていく二人。

これ以上は誰を起こしても碌なことにならない。

 

 

「というか、仏の顔も三度までって…お兄さんが仏ならこの世は終わりだよねー」

「もーまたそんなこと言って。…まぁウルちゃんが絡むと異常に怖いよね」

「ウル第一主義だからね。ウルに出会う前とか見てみたかったなー」

「出会う前?妹さんか娘さんかと思ってたんだけど」

「あーそう言えばアメリアは何も知らないよねー。よっし、じゃあ私が教えて進ぜよう!まぁ私も途中からだけど。まずはー…」

 

 

波長が合うのか、何なのか。

キャッキャと仲良く話しながら歩く二人。

 

ご機嫌取りのお土産もバッチリであった。

 

 

 

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