なんかよくある話   作:天和

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3/18 ウルの台詞 りぁねぇ→りあねぇに変更してます。


一番強い者はという話

 

 

外壁内に侵入していた最後の魔獣が討ち取られ、少し静まり返った後、爆発したように勝鬨が上がる。

 

都市を守り抜いたこと、単純に生き残れたこと。

各々理由は違えど、疲労がにじむ顔をほころばせ、肩を組んで喜んでいる。

 

「ふぅ…お疲れ様。いやぁ激戦だったね…特に最後の方は色々飛んでくるし」

「なぁに、結局は当たらずに済んだであろう?それに鬼神の如き働きっぷりで、吾輩達も結局は楽だったであろう?」

「それはそうだけどね…」

 

笑いながら話し合うシャルとジェロはブルの方を見る。

 

ブルは頭から血を被ったように返り血にまみれ、少し荒くなった息を整えている。

無茶苦茶に暴れ回ったことが伺える出で立ちであった。

 

「…どうやったら勝てると思う?」

「息が乱れているところをみるに…物量で攻めるか、持久戦か」

「物量は文字通り消し飛ばしているし、持久戦に持っていく前にこっちが持ちそうにないね…」

 

底が見えないほどの力を見せつけられても、ウルを諦めきれないシャル。

もはや意地になっている。

 

クレアに関してブルは過剰に反応しないだろう、と予想するジェロはそこまで深刻に考えてはいない。

それに実は、いつの間にかブル側に付いているアメリアのことも気になっている。

 

ジェロの好みは、大人と言うには幼い程度の美少女であるのだ。

 

 

 

「なんかすごく嫌な感じがした」

「奇遇ねクレア、私もよ」

 

折り重なって地面に伸びているクレアとアメリア。

どこかねっとりとしたような、生理的に厳しい何かを感じ取っていた。

 

「生理的に駄目そうな感じが…」

「ね。なんかねっちょりした感じ…」

 

起き上がる気力もないまま話す二人にかかる影。

顔を上げた二人の目の前には、返り血まみれのブル。

 

「あー…こういうのじゃないんだよねー」

「分かる。もっとこう、付け回されてるような感じ」

「…何言ってんだ?まぁいい、行くぞ」

 

ブルは疲れ切った二人の会話に困惑している。

動けなさそうな二人の様子を見て、とりあえずそれぞれ小脇に抱えて搬送することにした。

ルサルナとウルが格闘している馬車は、遠目に確認済みである。

 

「お兄さんが…置いていかない、だと?」

「でも運び方に文句しかないです…」

「捨てんぞ、クソガキ共」

「またまたぁ、優しいお兄さんはなんだかんだ運んで…あ、ごめんなさい投げないで」

「とっても良い運び方です文句なんてないです」

 

今ならイケるんじゃないかと軽口を叩いたクレアとアメリア。

諸共振りかぶられ、両者とも早々に白旗を振っている。

 

ため息を吐きながら抱え直すブル。

以前であれば、投げるまでいかなくとも落としていたかもしれないが、動物との触れ合いを試みてから、急激に人間性が育っていた。

 

「ウルちゃん以外にも優しくできるのね、この人」

「お兄さんから人の温もりが…あ、あ、投げないでぇ…アメリアも言ったじゃんかぁ…!」

「ちょ、あ、やめ…もう言いませんからぁ…!」

 

ブルは本気で放り投げてやろうかと振りかぶったが、先程よりも必死な懇願に迷いに迷って止めている。

以前よりもずっと、身内認定を下した者には甘くなっている。

 

それはそうと、三度目は容赦なくぶん投げるつもり満々である。

 

流石にこれ以上はヤバいと感じたのか、二人は大人しく垂れ下がっていた。

 

 

 

 

少し離れて、馬車の位置。

 

「あいたた…ごめんねウル、もう許して?」

「むぅぅ…!」

 

ぷっくりと膨れたウルにぽこぽこと叩かれているルサルナ。

すやすやなウルを構い尽くし起こしてしまい、結果抗議の拳を全面的に受け入れている。

なお、拳の威力はお察しである。

 

「むぅ…?あ、にぃ!にぃー!」

 

ぽこぽこ叩いていたウルが歩いてくるブル達を察知する。

ぴょこんと御者台を飛び出し一直線。

 

「ウル!ウルー!」

「あいだぁ!」

「へぶっ!」

 

ブルは堪らず手を広げ、受け止める姿勢。

その際、抱えたものが地面にびたんと落ちたが気にしない。

 

「にぃー!ぃ、ぅ?」

「ど、どうしたウル?」

 

ウルがブルに近づくにつれ急減速していき、飛び込む少し手前にて完全に足が止まる。

飛びついてくると待ち構えていたブルは困惑している。

 

ウルはブルを上から下までじっくりと見ている。

 

「…にぃ、きたないからだっこはあとにするね?」

「きたない…?き、汚い…だと…」

 

すいっとブルの横を抜けていくウル。

ブルはあまりの衝撃に既に膝を付き、体を震わせ呆然としている。

何かを抱きしめるように閉じられた腕が物悲しい。

 

ブルの横を抜けたウルは、痛みに転げ回るクレアの前に立っていた。

つんつんと杖でクレアを突っつきながら、呟く。

 

「くぅねぇ…もなんかこぎたない…」

「あんまりだ…こんな、酷い…」

「くぅねぇ?あれ?うごかなくなっちゃった…」

 

落とされて地面に叩きつけられた自分を慰めたり、心配してくれるのかと思いきやこの仕打ち。

クレアは自らの心を守るために丸くなり、動かなくなった。

 

何度かクレアを突っついたウルは、そのまま放置してアメリアのもとへ進む。

痛みに悶えながらも無垢で残酷な所業を目の当たりにしたアメリアは震えている。

もう戦いは終わったというのに冷や汗が止まらない。

 

「りあねぇ…はまだだいじょう、ぶ!」

「いや待っ、ふぐぅ…!」

 

ウルの検査を合格し、ほっとしかけたアメリアの目に映る、飛び込んでくるウル。

言葉が飛び出すのとほぼ同時、ウルの空中殺法がアメリアに炸裂した。

アメリアの口から、何か出てはいけないものが出ているように感じてしまう程の見事な技であった。

 

追い打ちをかけて回ったように見えるウルの行動だが、ウルもしっかりと考えて行ったものだ。

少しばかり泣いてしまい心配をかけたと考え、もう大丈夫ということを伝えるために行ったのだ。

 

実行しようとした際、ブルとクレアが思った以上に血みどろだったために、まだマシなアメリアへと矛先が向かっただけである。

決して悪意ある行動ではないのだが、悪意がないからこそ、強烈な一撃になり得る。

 

ルサルナは小言を浴びせてやろうかと考えていたが、わざわざ死体蹴りをするような趣味はない。

地面を操り、ブルとクレアをウルから見えないように馬車の影へ運んでいた。

そうして動かない二人に思いっきり水を浴びせかけ、大まかな汚れを流し、馬車内に運んで着替えを用意しと、せっせとお世話し始めている。

 

 

「やっぱり、くぅねぇよりもふわふわしてる」

 

ウルはアメリアの胸元やお腹をぺたぺた触り、その柔らかさの評価中である。

今のところ間違いなく、クレアよりも高評価。

 

 

 

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