なんかよくある話   作:天和

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移動中の話

 

森の中に長年の往来によって踏み固められた道が続いている。

通る人は少ないが、雨垂れが岩を穿つように長い年月をかけて出来上がった道である。

 

その道中に立ち往生する馬車があり、少女の声が響いている。

 

「くっ!やぁ!」

 

魔獣二匹の攻撃を上手く盾で捌きつつ戦う少女、アメリア。

魔獣の襲撃に際し、やる気満々で飛び出していた。

 

なお三匹での襲来だったが、寒気がするほどの速度と精度の投石により、一匹は早々に爆散していた。

 

「ちゃっちゃと倒せー」

「腰の使い方が甘いんじゃないのー?」

「ちょっとは手伝ってよ!?」

 

堅実に戦闘を進めるアメリアに飛んでくる野次。

早々に一匹を爆散させたブルと、やる気が出ないと言って垂れているクレアからである。

 

ウルはアメリアの奮闘を尻目に近場の木に石を投げている。

投げた石はひょろひょろと何処かに飛んでいっている。

速度も精度も距離も今一つ。

 

ルサルナは何時でも手助けできるようには構えている。

構えているだけ、とも言うが。

 

「俺はちゃんと仕留めてんぞ」

「ブルさんじゃなくてそこの馬鹿たれです!!」

「ルナ姉、言われてるよー」

「何もかも埋めてやろうかしら」

「ちち違う違う違います!?あ!!…っぶない!」

「ほらほらー、余所見してる暇ないよー」

「口だけはよく動くよね…!!」

 

集中力を削がれ続けるアメリア。

緊張感の感じられない、ダラけた野次は一層アメリアから集中力を奪っている。

 

ちらほらと視界に入る、ひょろひょろと石を投げるウルの姿もそれを助長していた。

 

「ああもう!!これでも喰らいなさい!!」

 

叫ぶアメリアが飛び込んできた魔獣を盾でぶん殴る。

ただの打撃かと思われたそれは、激しい音と一瞬の閃光をもって魔獣を打ち据えた。

 

打ち据えられた魔獣は体を硬直させ、もう一匹は音と光に警戒して距離を取る。

 

その隙を見逃すアメリアではない。

すかさず硬直した魔獣を切り捨てる。

 

「お?なんだ今のすげぇな」

「“招雷撃”!私の必殺技です!」

「殺せてなかったが」

「…得意技です!!すごく疲れるからここぞというときだけの!!」

 

言うやいなや距離を取った魔獣へ突貫するアメリア。

魔獣の迎撃を躱し、僅かな隙に力を溜める。

 

剣から炎が溢れ出る。

 

「招炎撃!!」

 

気合の入った宣言とともに放たれた鋭い斬撃は盾の時とは違い、切り裂く音と焼けるような音のみを発して魔獣を両断した。

 

 

「……、ふぅ…決まりました…」

 

残心を解き、一息ついて剣を振り払い納刀するアメリア。

なかなかに様になっているその姿は普段の様子からは想像も出来ない。

 

ウルがなんか変な顔でアメリアを見ている。

 

「りあねぇがすごくかっこいい…なんかへん…」

「変じゃないよ!?ねぇちょっとウルちゃん!!」

 

格好良い騎士少女は消え失せ、ただの喚く少女へ成り下がるアメリア。

ウルはそそくさとブルの背中へ避難していく。

 

「こ、こら!そこは卑怯でしょ!?」

「アメリアぁ…何か文句でもあんのか…?」

「いえ!そんなことは!?」

「むふふ…」

 

凄むブル、小さくなるアメリア、勝ち誇るウル。

ウルは頼れるお兄ちゃんを悪用する術を身に付けていた。

 

そんな姿を横目に、ルサルナはアメリアが倒した魔獣を検分している。

クレアも若干やる気が戻ったのか、しげしげと魔獣の死体を調べていた。

 

「焼き斬った…って感じかしら。魔核まで真っ二つね…」

「こっちは普通に斬ってるけど、盾で殴ったときの感じはウルの魔法に似てたねー」

 

ルサルナが調べる魔獣からは焼けたような臭いが漂っている。

血液も両断したにしては量が少なく見える。

焼けたことで傷口が塞がったのだろうか。

 

それにしても見事なまでの両断である。

アメリアは確かに力は強いが、容易く骨ごと両断する程の力はない。

ぱっと見では分からないが、かなりの熱量をもっていたのだろう。

斬撃が通り過ぎる、その僅かな時間で断面が焼けていることからも察せられる。

 

「武器に魔法を纏わせる…面白い発想ね、考えたことなかったわ」

「距離を取ったり、意表を突くところが利点だもんねー。というか、近接戦闘が出来ないと意味がないし、ルナ姉くらいの腕前なら使うことなんてなさそうだけど」

「身に付けられれば、いざというの時の保険になるわ。武器しか使えない、なんて場面だってあるものよ」

「ルナ姉が言うと説得力がないんだよねー。お兄さんの力を魔法に全ツッパしたみたいな人じゃん」

「誰が暴力の化身だって?」

「言ってないけど…もしかして自覚なかった…?あ、やっば…」

 

口を滑らしたクレアが駆け出す。

惚れ惚れするような判断力と健脚である。

 

しかし、残念なことにルサルナに対して多少距離を取ったところで意味はない。

 

瞬く間に生き物のように蠢く大地に捕らえられている。

 

「みぎゃぁーー!?」

 

森の中に捕えられたクレアの悲鳴が響き渡る。

事件性の高そうな悲鳴だが、残念なことにブル達以外誰も聞く者はいない。

ルサルナは勿論、ブルとアメリアも助けはしない。

 

唯一ウルが近づこうとしたが、ブルから離れた瞬間にアメリアに捕獲されていた。

 

 

それから暫く、森の中には許しを乞う声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブル一行はまた、森の中を進んでいた。

歩いているのはブルとルサルナ、アメリアの三人。

 

クレアは折檻が効いたのか馬車の中で静かにうつ伏せになっている。

ウルはそんなクレアを下敷きにお休み中である。

 

「そういやそろそろ着くか?」

「そうね。このまま行けば明日には着くわね」

 

ブルとルサルナの会話に、アメリアが寄ってくる。

 

「あのー…次の都市ってどんな所なんですか?二人は行ったことあるみたいですけど…」

「俺はあんま覚えてねぇな」

「あなたって人は…まぁ自然と上手く共存しているところね。都市というより町のようなものかしら。後は…お楽しみね」

「うー…気になります…」

「近くなったら分かるわ」

「はぁい」

 

気になるものの、教えてはくれそうにないルサルナと本当に覚えてなさそうなブルである。

 

ブルの方に聞いても恐らく無駄。

アメリアは残念そうに引き下がった。

 

 

 

到着予定は明日、気になるもののすぐである。

アメリアはまだ見ぬ景色に胸を躍らせている。

 

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