ぼっち・ざ・ハーレム!   作:ぼざろが面白い部

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第二話 ぼっちちゃんと伊地知虹夏

 

 私、伊地知虹夏は現在下北沢高校の2年生―――「結束バンド」という微妙なネーミングセンスのバンドを親友の山田リョウ(担当ベース)と組んでいる。

 担当はドラム、今日は自分の姉が店長をしているライブハウスで演奏することになってなんだけど……急遽、同じバンド内のギターの子と連絡つかなくなっちゃった……

 ライブではドラムとベースだけじゃ機能しないから、現在代わりのギターの子を探して市内を走り回っている。

 下北沢ではライブハウスの数は多い方だと思う。なのでライブ公演前までには見つかるだろうと思っていたが……なかなか見つけられない。

 

 そうこうしている内に早くギターを探さないとライブに間に合わない。肥大に増していく焦燥感を胸に抱きながら、私はライブハウス近くの公園までやってきた。

 

 公園には腰の位置まである長い綺麗なピンク髪にそれと同じ色のジャージを着ている 女の子がギターケースを背負いながら、ブランコに座っていた。

 

「あーーーーー!!ギターーーーーーー!!!!!!」

 

 見つけたと同時にピンクの子は帰ろうとしていたので、大声を出して呼び止める。

 

「それギターだよね!? 弾け…………るの…………」

 

 私は言葉を失った。その子とは一瞬だけ目があってすぐに視線を逸らされたが、体を突き抜ける衝撃は今でも忘れそうにない。

 彼女の表情は暗かった。おそらく目線を合わせないのを見ると、対人慣れしておらず友達とか失礼ではあるがいなさそうだった。オシャレとも言えない服装にハイライトさんが外出しているあたり、彼女は所謂根暗とか陰キャとかよくネットでみる部類に当たるだろう。しかし、

 

 

(この子とっても可愛い!!)

 

 

 人を見て可愛いと心の底から思ったのは初めての経験だった。いや、可愛いだけではない。黒く濁った眼だが何かを成し遂げようとする意志があり、今にも消えてしましそうな儚げでもあり、そして、何といっても小動物のような守ってあげたくなるようなそんな存在。

 

 今も目線すら合わせず、雨の日に濡れた子犬のようにプルプル震えている子に思わず

 

 

「今からバンドに入って、なんやかんやで私と添い遂げてーーー!!」

 

 

 告白してしまった。なんやかんやって何だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ど、どうも後藤ひとりです……

 ぼっち歴=年齢の陰キャコミュ障で下北沢のツチノコです。

 公園でギターを背負いながら哀愁に浸っていると、金髪サイドテールの可愛い女の子から告白されました…………えっ?それただの妄想じゃないかって?そ、そんなわけないよギタ男くん!ちゃんと「バンド組んで添い遂げて!」と言われ……あれ?そもそも学校でも話しかけられないダメダメぼっちが告白されるのかな……?というか、これって愛の告白?添い遂げるとは一体(哲学)…………そ、それならもしかしてこの目の前の美少女は私を騙してバンド(隠語)に引き込もうとする…………悪いバンドマン!?

 

 

 

 

 太陽も段々と西の地平線に落ちていこうとする中、相対しているピンクのジャージぼっちと金髪サイドテールの女子高生伊地知虹夏。

 少しの沈黙の後、ひとりは目の前で自分の失言にあたふたしている悪のバンドマン(仮名)から逃げ出したく嘘をつく。

 

「いえ、これは釣り用具なんで……これで失礼します」

 

 ひとりは久々にどもらずにハキハキと喋れたことに、少しの感動を覚えながらも踵を返しその場を逃げ出した―――――!

 

「……いや、ギターケースに釣り用具入れた女子高生なんかいないでしょ!?」

 

 しかし回りこまれてしまった―――!

 

「……さっきはごめんね?変なこと言っちゃって……と、とりあえず今困っていることがあるの……」

 

「えっ、えーーと…………あっ、すみませんこのギター……いえボロい釣り竿は差し上げますので……命だけはなにとぞなにとぞ……!」

 

「いらないよ!? 私を何だと思っているの!? というか、まだ私を騙せると思っているの!?」

 

「あっ、えと……その……」

 

 

 面と向かって「この……悪いバンドさん☆」とか言うと何をされるか分からないので、しどろもどろになるひとり。

 段々と顔が崩壊してくるひとりを見て、虹夏は小さくため息をつき、

 

 

「私は下北沢高校2年の伊地知 虹夏」

 

「あっ、後藤ひとりです」

 

「私、今バンド組んでドラムやってるんだ」

 

「へ、へえそうなんですね……」

 

 

 楽しそうにドラムを叩くマネをしている虹夏を見て、ひとりは(あ、本当に本物のバンドしてるのかも)と思い警戒心が解ける。

 ひとりちゃんは人慣れしてないためびっくりするほどチョロいのである。そこのところを理解していただきたい。

 

 

「ところでひとりちゃんはどれだけ弾けるの?」

 

「あっ、そこそこ……」

 

「そっか! なら今からサポートギターをしてもらうね!」

 

(…………あれ!? 拒否権は!?)

 

 

 自己紹介からの強制勧誘、あまりにも速い展開にひとりは置いて行かれる。

 

 

「ありがとう!! 早速ライブハウスにGO!」

 

「むむむむむむむむむむ………………!!!」

 

 

 ひとりの手を持って引っ張ながら進む虹夏とそれに力一杯にプルプルと震えて抵抗するひとり。しかし、悲しいかな……ひとりの腕力で虹夏に敵うことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ライブハウスに向かって俯きながら歩くひとりと上機嫌な虹夏。

少しの間抵抗していた後藤ひとりも抗えないことが分かり、トボトボと少し斜め後ろをついてくる。まあ、手をがっちり握られているので逃れることはできないが。

 

 二人の傍を自転車が何台も行き来しながら、そういえばと思いひとりは尋ねる。

 

 

「あ、あの……」

 

「んー? なーに?」

 

「そ、そのサポートギターって……何をサポートするんですか?」

 

「ああ、そういえばまだ言ってなかったね。今からライブハウスで演奏するんだよ!」

 

「ライブハウス!?」

 

「うぉっ! びっくりした……ひとりちゃんって大きな声出せるんだね」

 

「むむむむむ無理ですよ……! 私に突然ライブなんて!」

 

「お願い! そこをなんとか! 突然ギターの子が来れなくなって本当に困っているの!」

 

 

 お願い!と手を合わせ頭を下げる虹夏。それに対してひとりは「むむむむむ!」と言いながら、高速で首を横に振り強い拒否を示す。

 

 

 

 

 

 

 

「…………ねえどうしてもだめ?」

 

 

 虹夏は静かに言った。ひとりは首を振るのを止めて彼女を見る。俯き影を落とす虹夏の瞳に映るのは……後悔と悲しみそして強い悔しさだった。

それを見てしまった後藤ひとりは心の中で呟く

 

 

 

(ああ……私、これ知ってる)

 

 

 後藤ひとりはこの感情をいつも味わってきた。学校でいつも一人ぼっちでいる悲しみ、同級生達は次第に親密になっていく中で取り残される焦燥感、受け身ばかりでいる後悔、そして悔しさ。

 ひとりは自問自答する。なぜ、ギターを弾いているのか……あの時テレビで見たバンドマンを思い出す。自分と境遇が同じで暗い学生生活を送っていたとインタビューに答えていた彼はギターを弾いていた。彼はギターを弾き、バンド活動することで変わっていった。そんな風になりたいから―――

 

 

(そうだ、私も変わりたくて……自分を変えたくてギターを弾いてるんだ……!だから……!)

 

 

「に、虹夏ちゃん……!」

 

 

 ひとりは虹夏の手を握る。その行動に虹夏は驚き顔を上げひとりを見ると、ひとりは真っすぐに見つめ返していた。虹夏はその真剣な表情に不意を突かれて、何故か鼓動が早くなった。

 

 

「わ、私バンドやりたい! 虹夏ちゃんとバンドやりたい! だ、だからギターを任せて……くれたら……嬉しいなって…………」

 

 

「思いますはい……」

 

 

 ひとりは最初まで威勢が良かったが、やがて力を使い果たしたのか俯き目を逸らしていった。

 そんな彼女を見て虹夏は

 

 

「…………あはは! ありがとね、ひとりちゃん」

 

 

 そう言いながら彼女は回れ右して、少し早足で目的地まで歩き出した。

 

 

「えっ、ま、待ってください……!」

 

 

 突然、歩き出した虹夏をひとりはカルガモの雛のようについていく中で、虹夏は心の中で(本当にありがとう)と呟きながら、火照った顔を見られないように先導していくのであった。

 

 

―――――――――――――――――

―――――――――――

――――――

 

 

 数分後、ようやく目的地のライブハウス「STAARY」にたどり着いた虹夏とひとり。そのライブハウスはビルの地下一階にあり、外から階段を降りていく中に入れる仕組みになっている。

 

「それじゃ入ろうか」

 

 落ち着きを取り戻した虹夏は階段を降り扉のドアノブに手をかける。ごくりと喉をならし緊張気味のひとりに対して、

 

「大丈夫だって! みんないい人だからすぐに慣れるよ!」

 

 ひとりの緊張を和らげるため虹夏はフォローしながら扉を開けた。

 

 

 

「やっと帰ってきた」

 

「リョウ~~~~~」

 

 そこには青い髪の女性が立っていた。

無表情というよりもクールな印象を受け、何よりも顔つきが整った所謂かっこいい系の女性であった。

 

 

「紹介するね、この子はベースの山田リョウだよ」

 

「こんにちは」

 

「こ、こんにちは……」

 

「まだ時間があるからスタジオに入って練習しよう。あと勝手に抜け出して店長怒ってたよ」

 

「ひぃ! それを早く言ってよ~! リョウのバカ!アホ!女たらし!なんか草食べてそう!」

 

「語彙力なさす……今なんて言った?」

 

 二人のやり取りをみてひとりは思う。

 

(現実は怖い……でも)

 

(これから楽しいことが待ってそうなきがする!)

 

「ほら、ひとりちゃん早く練習しよう!」

 

「あっはい」

 

 

 ひとりは少しずつ変わっていく世界に希望を抱きながらスタジオに入っていった―――

 

 

 

 

 




遅くなってすまねえ

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