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「ほうひえば」
時刻はお昼休み。毎度おなじみのお弁当屋さんの日替わり配達弁当(500円)を食べながらふと気が付いたことがあった。口に含んでいたにんじん入りはんぺんをごくんと飲み込む。
「ここの派出所って、かなり最近できたんですよね?」
「そうよ~。建物自体去年出来たばかりで本格稼働するのはリーちゃんが来てからだったの」
私の疑問には銀さんが答えをくれた。そう、いま私たちが勤めているこの日本ウマ娘トレーニングセンター学園前派出所、略してトレセン学園前派出所はここ最近できたばかりの建物である。設備が全体的にきれいだし、ウマ娘が安心して勤められる工夫がいたるところにしてあり、正直びっくりするくらい好待遇なのだ。
「…なんでこんなにいい設備を使っているんでしょうか」
「そうか、お前にはまだそのあたり説明していなかったな。ここの仕事にある程度慣れたことを見てからしようと思っていたが…、お前ならそれなりに優秀だから大丈夫だろう」
ずず、とお茶を飲んでからミチカケル隊長が話し始める。…そういえばあのお茶も備品だけどかなり良い品では…?
「リー、お前もうすうす感じていたかと思うが、普通の警察署では今私が飲んでいるようなこんなにいいものは置かない。そもそも、警察などのいわゆる公務員は基本的に会社のお金…国の予算で我々が飲食するための食料品を買うことは基本的にない。あるとすれば…災害に備えた非常食を自治体で置いておくくらいか」
「はい、それは警察学校時代に学びました。あくまで税金を元とした予算が組まれているためだと」
「そうだ、さすがにしっかりと覚えているな。なので、普通は希望者の給料から天引きしたお金からお茶やコーヒーなどをまとめ買いするのが一般的だ。私も最初ここに配属になったときはだがここはそこから大きな違いがあるんだ…」
ゴクリ…と、私は続きが気になりつばを飲み込む。銀さんは食べ終わったのかこちらもお茶を飲み始め、リオ先輩も食べ終わったのかウマホを使ってゲームしている。
「まず、この派出所はトレセン学園及び複数の名のある家から出資がなされている」
「出資!?」
「ああ、私がトレセン学園側との定例会議に出席しているのもそのためだ。ここの派出所ができた一番の理由が学園長からの要請があったからというのが一番大きな理由だがな」
「そ、そうなんですか…」
正直、出資といわれても…という気持ちと、確かにあの設備やこの設備が派出所の中にあるのはまさかという気持ちが横一線ドゴーンして宇宙猫みたいな顔をしている気がする。支給されたあほみたいに高額の警備用品(高出力スタンロッドや軽量かつ高性能の防弾ベストなど)が一式ピシッとそろっている理由が分かったところで話は進んでいく。
「そういえばリーとリオはトレセン学園の卒業生だったな。懐かしかったのではないか?」
「まぁ、懐かしいといえばそうですが、それよりも帰ってきちゃったなあといった気持ちの方が大きかったです」
「右に同じく~」
「そういうものか?まぁいい、話を戻すぞ。…実はこの体系、諸外国ではむしろ一般的だ。税金で働く公務員だけに頼るのでは効率が悪い、だからこそ十全な装備としっかりとした仕事意識を持ってもらい事に当たってもらう。といった形だな」
なるほど。なんとなくだけれど、諸外国の流れに取り残されないように、というところで学園側と警察側で意見が一致したためといったところが大きいのは理解できた。うーん、だけどそれは一つ疑問がある。せっかくだし聞こう。
「隊長、一つ疑問が」
「なんだ?」
「なぜ、それをトレセン学園内で働いている警備員側で行わないのでしょうか。現状のままでも別段問題はないかと考えられますが」
そう、通っていた者は知っている。基本的にトレセン学園は日本中の名家や、有名となった選手が数多く在籍する場所。となれば、警備は厳重になされている。正門、東門、西門、搬入業者用通用口、裏門など複数の入り口が存在するが、各門には警備員が常駐している。外周には大きな柵というか、フェンスがあり、有刺鉄線に赤外線センサーなど外的要因を排除するようにできている。中にはウマ娘の警備員もおり、トレセン学園のOBが多く在籍していたりする(私も一時期スカウトされていた)。
「まぁそう思うのは当然だな。いくつか理由はある。学園も色んなところから寄付や推薦など受けて人事を優先したりすることはある関係上、どうしても息のかかった何枚も裏のある人物が入ってきてしまうことがある。また、あくまで警備員には逮捕権がない。あからさまな犯罪が確認されれば別だが…、捕らえた侵入者が困った家の腐ったやつだった場合、警備員が責任を問われて解雇、最悪裁判沙汰になったりする」
「はぁ?!そんなのもくるんですかトレセン学園。私の周りは平和…で…、いや、そうだったそうでした。リオ先輩が巻き込まれたあの事件」
「…思い出した?そーそー、あのくそやろうの事件もその一環だよ。胸糞悪いよねー」
リオ先輩が巻き込まれた事件。それはある意味トレセン学園のありようが問われた一つの事件でもあった。事件の流れを簡単に言うと、資産家のドラ息子に一目ぼれされ付きまとわれた。これと言って裕福な家でもなく後ろ盾がない先輩は目を付けられ、複数人に襲われそうになったのだ。まぁ、リオ先輩得意のキックボクシングで返り討ち&一網打尽したのだが。しかし犯人の親である資産家と裏で繋がりがあった警察、URAとの間で癒着がありなぜかリオ先輩が悪者として扱われる。その後なんやかんやあって、リオ先輩は芸能会への道をバッサリ切り捨て今の職へ就職した経緯があった。
「結局、トレセン学園の卒業生でもありURAの上層部へ上り詰めたシンザンさんがいてくれたおかげで首謀者は職権乱用で軒並み逮捕。関係者も芋づる式に検挙されたんでしたね」
「そーそー、シンザンさんには頭上がらないねー。おかげで私の前科も消えたーしー」
「そう、その事件からトレセン学園は生徒を守ることに対してより多くの予算をかけることにした。それまでは、どうしても寄付元やURA幹部、国会議員や地方議員からの圧力に弱かった。それを変えようとする動きが数年前…理事長が前任の長老、いや仙人ウマ娘から、今の見た目子供理事長に代替わりしてからは特にな」
仙人と言った時、一瞬だけだがの隊長の目元がとても穏やかになった気がした。
「そういった経緯があったのですね。うーん、そうなると、とっても面倒な事件とかお金と権力に物を言わせた事件とか起きそうな気がするのですが」
「そういったものの抑止力となるためにこの派出所はできた。日々パトロールしている時にでも思い出しながら行動してほしい。まぁ、我々が並大抵の武力に屈するとは思えんから、下手に威圧感を出すなよ」
隊長が話し終えてひと段落ついたとき、パン、と乾いた柏手の音が響く。私、リオ先輩、隊長の目線が音の元、銀さんへ向く。
「はい、難しいお話はそこまでにしましょ~。今日は桜餅を自作してきたのでデザートにどうですか~」
「いただきます!」「ほしー」「いただこう」
午後もお仕事ガンバルゾー!とりあえず桜餅ウマーい!
「午後は私とリーでこの派出所最大の出資者であらせられる学園長に挨拶に行く。2B装備、待機して待っていてくれ、一緒に行くぞ」
「えぁ、い」
ががが、がんばるじょー。
※私の方で適当に作りました造語でございます。
0S パトロール用の軽装。動きやすさ重視。
1A よくテレビで見る警察官の制服。
2B 正装1番+警棒、防弾チョッキ、無線など装備
3C いわゆる重装備。防弾盾、ヘルメット装備。
UU ウマ娘ごとに特化した特殊兵装