笑顔は笑顔を作らない   作:クレナイハルハ

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日常と始まりと

 

 

笑顔は難しい。

 

その人物の捉え方次第では色々な解釈が出来る。

 

喜しいようにも、愛おしいようにも

 

煽るようにも、悲しいようにも

 

耐えるようにも、偽るようにも

 

怒ったようにも、何も考えていない様にも。

 

そんな、沢山の捉え方がある。

 

今から皆さんが読むのは、そんな笑顔が中心となる物語だ。

 

これは笑うことを辞めた()()()()()

 

そんな少女を笑わせようとする一人の少年の

 

二人の日常と、非日常を描く物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

目が覚める、窓から差し込むはずの日差しは窓を覆うカーテンに阻まれ部屋を照らすことは叶わない。

 

目の前に映る見慣れた天井を少し眺めた後枕元に置かれたボタンを操作する。

 

ベットから機械音が聞こえるとゆっくりとベッドが変形していき私の上半身を起こした。

 

動かない足を眺めてから枕元に置いておいた携帯電話を手に取り、いつも通りにあの人へと連絡を掛ける。1コール後に通話に出た彼女に起きたことを伝えるとすぐに向かうと返事をもらい通話を切る。

 

ため息を付きながら不便となった自身の足を見下ろす。

 

待つこと数秒後、部屋の扉がノックされ返事を返すと扉が開き部屋に入ってきたのは今時珍しい和服を着た綺麗な黒髪の女性だった。

 

「おはようにゃ、エム」

 

「おはようございます、黒音(コクネ)さん」

 

歌川 黒音(ウタカワ コクネ)、私の家に住み込みで家政婦さんと私の世話と言う名の介護をしてくれている人。

 

彼女に両腕を上げてバンザイのポーズをすると、彼女は私の体を抱き締める形でベットから立ち上がらせると、近くに置かれた車椅子へと下ろしてくれた。

 

「よいしょっと、それじゃあ制服に着替えるにゃよ」

 

黒音さんに手伝って貰いながら制服に着替えていく。Yシャツの袖に手を通しブラウスを来てからリボンを結ぶ。黒音さんに手伝って貰いながらビスチェ・スカートを履いてから靴下を履かせて貰う。

 

「いつもありがとうございます」

 

「これが仕事だからにゃ」

 

黒音さんに車椅子を押してもらい、自分の部屋を出て台所のテーブルに向かい用意してもらった朝御飯を食べる。

 

「明日は雨か、洗濯物が干せなくてこまるにゃぁ」

 

「そうですね………ご馳走さまでした」

 

雑談しながら朝食を食べ終えた私は部屋から持ってきていたリュックサックに黒音さんに作ってもらったお弁当を入れてから忘れ物が無いか軽くリュックサックの中身を確認する。

 

「それではいってきます」

 

そう言いながら車椅子の肘掛けに配置されたレバーを操作して家を出る。

 

「気を付けて帰ってくるにゃんよ~」

 

黒音さんの言葉を背に道を行く、周囲から私をみる目は多い。感じるのは、哀れみと同情ばかりだ。

 

「あのこ、目があったのに挨拶は愚か会釈すらしないなんて」

 

「これだから最近の子は……」

 

「確かに、全然笑わないわね」

 

「バカ!貴方知らないの!?あの娘は──」

 

「それ本当なの!?」

 

「あの娘、いつも笑顔だったのに……可哀想」

 

ヒソヒソと話す近所の人たちを横目に車椅子を走らせる。

 

人が歩くと変わらない速度の車椅子を走らせていくと、やがて自分と同じ制服を着た少年少女が歩いているのを見かけ始めた。

 

後少しで学校につくから当たり前だろう、しばらく進むと見えてきたのは、通い慣れた自身の通う学校である駒王学園。

 

誰に話しかけられる事もなく自身の教室へと入り机の前に椅子を固定する。

 

リュックを机の横に掛けて教科書を取り出して机の中にしまう。筆箱を机の上に置き、図書室で借りた文庫本を開く。

 

「なぁ、エム!こっちを見てくれ!!」

 

読もうと思った瞬間、聞きなれた声が聞こえて文庫本を閉じて顔を上げるとそこには変顔をしている私のクラスメイト、兵藤一誠(ヒョウドウ イッセイ)の姿があった。

 

「また、ですか?兵藤くん」

 

「くっ!ま、まだだ!元浜、松田!あれやるぞ!」

 

「おう!」

 

「任せろ!!」

 

そう言いながら、何故か私の前でコントや漫才をする彼らを何故か見せられる。何故彼らはこうして私に対してこのような行動を取るのだろうか?

 

私の記憶が正しければ、1年生の時の彼らは私を気にすることもなく彼らの趣味であるR18系の雑誌や話で盛り上がっていたはずだ。

 

そう思いながら私は朝のホームルームが始まるまで、彼らの漫才や変顔、コントを見せられ続けた。

 

何故彼らは諦めずに私を笑わせようとしてくるのだろうか?いつになったら、諦めるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵藤一誠side

 

 

昼休み、一人でノートに書いていたネタを見直す。アイツを笑わす為に作りあげたコントのネタや漫才のネタを読み直しどうしたらもっと面白くなるか考える。

 

「また駄目だったようだね、兵藤?」

 

橙色の髪を三つ編みにし眼鏡をかけたクラスメイトの少女、桐生 藍華(キリュウ アイカ)

 

「桐生……」

 

「クラスの人たちや外の生徒は笑ってたし、今朝のは中々傑作だったと思うよ」

 

今朝、披露した元浜と松田とのコントを見て笑うクラスメイトや通りがかった先生達を思い出す。

 

確かに、みんなが笑っていた。

 

自分なりにと今朝のは面白いと思っていた。

 

でもたった一人、目の前に座っていた少女は笑ってくれなかった。

 

「でも、駄目だったんだよ……」

 

「………エムっち、全く笑わなかったね」

 

今朝、笑わず無表情のまま俺たちのコントを眺める彼女の顔を思い出して悲しくなる。

 

「仕方ないよ、あんな事があったんだから」

 

「なんで、気付けなかったんだろうな」

 

「それは………」

 

俺たちが気付いた頃には、事件は既に終わっていた。

 

彼女が浮かべていたあの明るくて、見ていて元気になるような笑顔を思い出して自身の胸が締め付けられるような感覚に襲われる。

 

俺のクラスメイトである彼女は、中学生の時に知り合った。

 

彼女は常に笑顔だった。

 

俺や桐生、元浜や松田に対しても笑顔で接してくれていた。当時から、女子の着替えを覗き、教室でエロ本をひろげて騒いでいた俺たちにでも。

 

そんな彼女と同じ高校、駒王学園へと入学できたと知った時は凄く嬉しかった。

 

いつも笑顔で、元気な彼女と共に過ごす学園での新生活は楽しくて、俺は好きだった。

 

一年前に報道されたこの街のニュース、それは一人の少女に対しての虐め、そしてその少女の救急搬送だった。

 

今でも覚えてる、元浜や松田と共に帰り道を歩き雑談する俺たちの横を救急車とパトカーが凄い勢いで走り抜けていった。

 

当時の俺は、きっと何処かで車が事故った程度だと考えていた。

 

家に帰ってから知ったのは、自身のクラスメイトが突き飛ばされて屋上から落ちて大怪我したと言う事と暫くの間学校が休学するという学校からの連絡があったことだ。

 

テレビでも報道された。

 

芋づる式に出てきた、彼女に対して行われてきた数々の虐めに、俺は悔しかった。

 

いつも笑顔の彼女が、虐めを受けていたことに気付けなかった事が自分が恨めしかった。

 

病院へと何度も、何度もお見舞いに行った。

 

何度も病室で眠る彼女の元へと向かった、彼女のベッドの横で彼女が目覚めることを祈った。

 

彼女のお父さんは、いつも会いに来てくれてありがとう。そう言ってベットに眠る彼女を見つめていた。

 

そして、彼女が眠ったまま月日が流れ一年がたった。

 

そんなある日の学校のホームルームで、彼女が復学することを知った。ずっと空いていた教室の中にある一つの机が埋まる、また彼女の笑顔が見れる。

 

そう思った、だけど。

 

『エムさん、入って来ても大丈夫ですよ』

 

そう言いながら担任の先生が教室の扉を開く、入ってきた彼女は車椅子に乗っていた。

 

俺は言葉を失った。

 

それは彼女が車椅子に乗っている事に対してじゃない、彼女がもし目が覚めても下半身が動かないであろうと言う言葉を、彼女の父から聞いていた。

 

何故言葉を失ったか、それは彼女が何の表情も見せず無表情でいたからだった。

 

『一年遅れですが勉強面は問題ありませんので心配はいりません』

 

教室の誰もが彼女の表情に言葉を失っていた。

 

それから彼女が学校で笑った所は見たことが無かった。

 

俺は、彼女に笑って欲しい。

 

そう思い変顔したり、面白い話やニュースを調べて彼女と話した。でも駄目だった、彼女は無表情のまま俺を見つめるだけだった。

 

元浜や松田が彼女を笑わせる事に協力してくれる事になった。コントだったり、漫才だったりで、とにかく彼女を笑わせようと必死だった。

 

女子の着替えを覗く時間も、放課後に雑誌を見に行く時間も全て使って彼女を笑わせるためのネタや漫才を考えては三人で練習した。

 

でも駄目だった、今のところ彼女が笑ったところは見たことがない。

 

でも絶対に俺は諦めない、アイツを絶対に笑わせて見せる。

 

改めて決意し、暗くなった時間に学校を出たときだった。

 

「あの、兵藤一誠さん!!」

 

呼びもめられて振り替えると、そこには内の学校の制服ではなく、他校の制服を着た美少女がいた。

 

「えっと、俺?」

 

「私と付き合ってください!!」

 

「へ?」

 

これが、彼女との出会いが後にあんな事になるなんて俺は知らなかった。

 

 

 






書きたかったから書いてしまった。

次回は小猫が出るかもしれない

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