時過ぎて(大人悪魔ほむら×大人さやか短編集)   作:さんかく@

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アニレコ二期一話直後の二人。

※誤ってR18にUPしたので削除してこちらにUPしなおしました。


眼鏡の奥の(番外編)

「あんたさあ、謝ってばかりじゃなくてもうちょっとその…」

「え?」

「さ、さやかちゃん…せっかく3人で協力したばかりなのに」

「あ~、悪いそう言う事じゃなくて…」

 

美樹さやかはかりかりと乱暴に頭を掻いた。そうして腰に手をあてて困った様に夜空を見上げる。月は3人を祝福するかのように輝いているが、さやかは何かどうしてか気分は今一つ晴れてないようで。もう一度何か言いたげな顔をしてほむらの方を振り向くが、その気弱そうな表情を見てはあ、とため息ひとつつくと変身を解いた。それに合わせてまどかとほむらも制服姿に戻る。夜の駅はとても静かで。

 

「ま、いっか、さ帰ろ帰ろ、明日も学校だぞ~!」

 

そう言って二人に笑いかけるとさやかはスタスタと歩き出した。ほむらに笑いかける様になっただけでもだいぶ進展しているのだが、どうにもさやかの態度が腑に落ちなくてまどかもさっきまでの高揚が嘘のように沈んでいく。それを察しておどおどと声をかけるほむら。

 

「鹿目さん…」

「ん?あ、私達も帰ろっか」

 

にこやかに微笑みかけてくれるのだが、どうにも晴れやかでないその笑顔にほむらの顔も曇る。だが違うのは――魔女を倒す前と明らかに違うのは、ほむらがそこで顔をあげて――

 

 

 

―――

 

あ~調子狂うなあ…

 

どうしてだか、この眼鏡の――最近学校にやってきた――転校生のことがさやかは苦手だった。いつもおどおどしているし、足は引っ張るし、幼馴染のまどかにいつもべったりだしでどうにも…そうどうにも仲良くできなかった。たぶんにして嫉妬の様な気持ちもあると思うし、存外自分は心が狭いのだと嫌でも気づかされてさやか自身落ち込んでもいる。だがそれも先ほどの魔女との戦いで少しは変わったはずで――

 

『はい、さっきはサンキュ』

『ありがとうございます』

 

グリーフシードを渡した時に初めて握った手――さやかは自分の左手を眺める。

 

「み、美樹さん!」

「わ、びっくりした!何よ」

 

気づけばさやかのすぐ後ろにほむらが立っていて。

 

「あ、あの今日は美樹さんのおかげで魔女を倒すことができました…ありがとうございます」

「何言ってんのさ、あたしだけじゃなくて、まどかやあんたがいてくれたおかげだって」

「で、でも…」

「あ~もうそう言うところがさ…」

「え?」

 

きょとんとした表情のほむらを見つめ、そこでさやかはまた言葉を濁らせる。困ったように眉を下げたれ気味の目をほむらの背後に向けるとまどかと目があって。

 

「さやかちゃん…何か言いたいことがあるんだったらちゃんと言って欲しいな」

「あ~まあ…」

 

視線をほむらの方へ移せば、今度は彼女と目があった。眼鏡の奥の瞳は紫色で。

 

――綺麗

 

ものすごく落ち着いたまなざしにさやかは思わず驚く。

 

――本当はこいつ…

 

「あ、あの美樹さん私に何か言いたい事があるなら…言って欲しいです…」

「……」

「そうしてもらわなければ私…」

 

落ち着いた眼差し、だがその瞳は揺れていて。彼女も必死なんだとようやくさやかは気づく。

ぽん、とほむらの肩にさやかは手を置いた。

 

「…美樹さん?」

「悪かったわよ、なんか言いにくくてさ、あんた…」

「はい」

「もうちょっと、堂々としなよ」

「え?」

 

きょとんとするほむらの肩をまたぽんぽん、とさやかは叩いて、笑った。

 

「あたしって馬鹿だからさ、なんでもはっきり言ってもらわないとわかんないんだ、こいつ何考えてるのかな~とか、頭痛くなっちゃうし、あんたがおどおどしてたらほんとどうしていいかわかんなくなる…」

「美樹さん…」

「だからさ、あんたにはもっと堂々としてもらいたいんだ、勝手なお願いだけどさ」

「い、いいえ、いいえそんなこと…ないです」

 

首を思いっきり振るほむらを見て苦笑するさやか。

 

「まあ、でも案外あんたも…あたしが思ってるよりしっかりしてる気がするしね」

「は、はい、私…頑張ります」

「よかったあ…これでさやかちゃんもほむらちゃんと友達だね」

「え、ま、まあ改めて言われると変な感じだけど、そうだね」

 

頭を掻くさやかに満面の笑みのまどか、そして口元を緩めているほむら、先ほどの魔女を倒した直後の和やかな雰囲気に戻っていて。

 

「それじゃあ改めてよろしく転校生」

 

手を差し出すさやか、だがほむらはなかなか手を取らない。不思議そうにさやかがその顔を見つめると、ほむらが右手を胸にあてながら囁いた。

 

「名前…」

「え?」

「名前…で呼んでもらいたいです…」

「ああ…」

 

癖なのだろう、またさやかは頭を掻いて、そして珍しく固まった。

 

「どうしたのさやかちゃん?」

 

不思議そうに首をかしげるまどか。ほむらはさやかの顔をじい、と見つめ口を開いた。

 

「美樹さん…」

「な、何?」

 

一歩ほむらがさやかの元へ近づいた。

 

「もしかして…照れてます?」

「な…」

 

さやかが驚いた顔でほむらの顔を見つめる。

眼鏡の奥のその目は細められ、口元は綻んで――まるで

 

――別人?

 

さっきまでの雰囲気とは全く違う少女、だが一瞬でそれは消えて。

 

「い、嫌なら…無理しなくても」

「あ…ああ、そんなことないって」

 

そうしてさやかは顔を赤らめながら再び右手を差し出すと「ほむら」と小さく囁いた。

 

「はい」

 

嬉しそうに微笑むほむら。そうして二人は手を繋ぐ。

 

「よろしくお願いします、美樹さん」

「あ、う、うん、よろしく」

 

少し戸惑うさやか。現金な話だが、握手をした瞬間もう苦手意識はもうなくなっていて。その代わり――

 

「ど、どうしたんです、私の顔…何かついてます?」

「あ、ううん、なんでもないけど」

「けど?」

 

さやかは赤くなった頬を軽く叩いて、ほむらに向かって、ニヤリと笑う。

 

「ええい内緒だー!」

「きゃあ!?」

「さやかちゃん?」

 

幼馴染にするように、さやかはほむらに抱きついた。

 

「み…美樹さん…」

「ほむらもあたしの嫁になるのだー!」

「ちょ、ちょっとさやかちゃん?ほむらちゃん嫌がってるよ?」

 

変な悲鳴をあげながら体をよじるほむらとしっかり抱きつくさやか、そして傍でおろおろするまどか、三人の少女達は輝く月の下楽しそうにじゃれ合っていた。

 

「……」

 

だが、抱きつかれた眼鏡の少女の表情はほんの少しだけ――

 

 

 

 

END

 

 

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