時過ぎて(大人悪魔ほむら×大人さやか短編集)   作:さんかく@

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スキンシップ

「まどかは私の嫁になるのだ~」

 

この光景を何度見た事か、実際傍にいて目の当たりにしていたわけでなく遠目からこの光景を何度も繰り返し見ていたわけだが、まさかこの年になって間近でこの光景を見ることになろうとは。暁美ほむらは二人に気づかれない様に息を吐いた。

 

「やめなさい、美樹さやか、まどかが嫌がっているわ」

「マジ?」

「え…いや、私は…別に」

 

驚いて後ろから覗き込んでくるさやかを見つめ、顔をほのかに赤くしているまどかは戸惑ったように口ごもる。

 

「お?その顔はまんざらでもないと?とぉ!」

 

歓声の様な小さな悲鳴。まるで中学生のあの頃の様にじゃれ合う二人。外見はもう立派な大人の女性であるが、そのはしゃぎようは変わらない。

 

「まったく…飲みすぎたわね…」

 

再びほむらはため息をついた。

 

 

 

『ねえ、三人で飲みにいかない?』

 

そう久しぶりにまどかから誘いを受けて、彼女のお気に入りの居酒屋で飲んだのが3時間前のことだった。大学生になって、ことあるごとにほむらとまどか、そしてさやかは三人で出かけることが多くなったが、短大生だったまどかが一足早く就職し、今日はそれを肴に酒とお喋りを満喫していた。そうして今は街の喧騒を楽しみながら帰路についている所だ。だが二人は飲みすぎたらしい。いや、私もだ、とほむらは己の顔を軽く撫でる。どうにも顔が火照って熱い。飲み始めた頃よりも酒に強くなった気がしていたのだが、そうではなかったようだ。まだじゃれ合っている二人をぼんやりと眺めて。

 

 

あれからもう8年経った――

 

パーカーにジーンズというラフな格好の蒼い髪の女性と、可愛らしいワンピース姿の女性のじゃれ合っている姿にあの頃の中学の制服を身に着けた少女の姿が重なる。

 

彼女達は変わった――

 

ひゅうと風が吹いて、ほむらの黒いワンピースの裾が揺らめいた。そっとそれを抑えた後、今度は艶のある長い黒髪を梳く。左耳のイヤーカフスが一瞬煌めいて。

 

では私は――?

 

もう誰とも関わらず、ただまどかの幸せだけを祈って生きていくはずだったのに、こうして表面上は大人になった今では当たり前の様に二人に関わっている。特に――

こちらを間抜けな顔で見つめている蒼い髪の女性をほむらは睨んだ。

 

「何を見ているの?」

「いや…別に」

 

どこか戸惑ったように、顔を背けるさやか、その顔が赤いのは酔いのせいか、それとも――ほむらはふ、と失笑する。そうして実感するのだ、ああ、やはり自分は変わったのだと。以前はこんな風に彼女を見つめた事もないし、何を思っているのかなんて考えたこともない。だが今はそういうことがとても愉快で。

 

「ふふ…さやかちゃん、ほむらちゃんにも抱きつきたいんだよね?」

「え?」

「な?ま、まどか?」

 

気づけばまどかが満面も笑みを浮かべ、ほむらとさやかを交互に見つめていた。更に真っ赤になるさやかを見て、ほむらも笑う。

 

「あら、そうなの?」

 

固まるさやかを見て更に愉快になる。まるで思春期の中学生の様だ。

 

「まどかとはできて、私とはできないの?ほんと腰抜けね」

「ちょっと…何よそれ」

 

むっとした顔のさやかを楽しそうに見つめるほむら。妙に自分を意識しているさやかの姿が滑稽で面白い。二人のじゃれ合いを眺めていた時の隔絶感はもう消えていて。

 

「じゃあ、やってみたら?」

 

腕を組んで、さやかを見上げる。たぶん自分は今満面の笑みを浮かべているのだろう、とほむらは思った。だってさやかの顔がとても悔しそうだから。両手を驚かすように挙げ、熊と言わんばかりの体勢で迫ってくるも、やはり躊躇してほむらに抱きつくことができないさやか。

 

――意気地なし

 

心でそう呟いて、ほむらは手を伸ばした。さやかの息を飲む声がして、ふ、と笑う。その手はしっかりとさやかの背中に回されて。そうしてほむらはぎゅっと彼女の身体を締め付けた。さやかの息が頬に触れて。

 

「あ、あんた!距離感、距離感バグってるわよ!」

 

慌てる声を聞きながら、ほむらはその胸元に頭をもたれさせた。ミントの様な爽やかな香りがして、口元を緩める。元鞄持ちの身体は抱き心地が良い。

 

――ああ、だいぶ私も酔っているらしい

 

そう思いながら、悪魔は気持ちよさそうに目を瞑った――

 

 

 

 

END

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