時過ぎて(大人悪魔ほむら×大人さやか短編集)   作:さんかく@

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「THE LOVERS」(R18)の後日談。甘々(当社比)



恋人

 

「何しているの?「リーディング」って奴?」

 

美樹さやかはコーヒーカップを二つ持ったまま、黒髪の女性に声をかけた。

 

「そうよ」

 

黒髪の美しい女性――暁美ほむらは、白いテーブルに座りタロットに興じていた。そうして、口元を緩めながら、相方であるさやかに一枚のカードを見せる。

 

恋人――THE LOVERS

 

ああ、と声をあげながら、さやかはコーヒーをほむらの元へ置く。そうして横並びに椅子に座った。あの、波乱に満ちた大学のゼミ旅行にOGとして参加した時、後輩に二人の相性を占ってもらったが、その時に出てきたカードが同じく、恋人――THE LOVERSだったのだ。

 

「うわ、なんか照れるわねえ」

 

天使の元に二人の男女がまるで祝福されていかのように立っている。そんなカードを見て、へらへらと嬉しそうに相方が笑うものだから、ほむらは、はあ、とこれみよがしにため息をついた。

 

「貴方の先行きが心配になってきたわ…」

「なんでよ!」

 

ほむらはまたもう一枚のカードをさやかに見せた。こちらも同じく「恋人」のカードだ。

 

「あれ?」

「気付いた?」

 

にやり、と笑うほむら。

気付いたも何も、先ほどのカードは一組みの男女だったが、今、ほむらが手にしているカードは、一人の男を囲むように両脇に二人の女が立っていた。頭上に天使がいるのは変わりないが。

 

「これ、三人なのね」

「そう…そしてこれが初期のタロットなのよ」

 

 

『恋人の意味は「選択」の意味もあるのよ』

 

 

あの時、ほむらに言われた言葉をさやかは思い出す。

男を囲む女性の内、右側はなんらかしらの権威を持っているような女性、そして左側は若い女性。身動きが取れない男の図。二人に囲まれた男は右側の女に顔を向け、そして左側の女に体を向けている。

 

「どちらとも選べない男は正に「優柔不断」そして「決断」を表すのよ」

「へえ…」

 

ほむらの言葉にさやかは頷く。確かに、初期のタロットと今のタロットでは少し意味合いが違う気になる。

 

『貴方は誰を選ぶの?美樹さやか』

 

そう言って、あの時彼女は笑った。今、ほむらは何を言いたくて自分にこのカードを見せているのだろう?さやかは不思議に思った。

 

「ねえ、どうしてそのカードを私に見せたの?」

「さあ?」

 

くすくすと笑って、ほむらはカードを伏せた。二人の女に囲まれた男の立場をさやかと仮定して、おそらく一人の女はほむらだろう。そしてもう一人は、おそらく桃色の髪の幼馴染だ。逆に男の立場をほむらと仮定した場合は、さやかは誰を当てはめていいか思い浮かばない。何故なら、彼女の場合選択の余地などないのだ。すべてが鹿目まどか一点に絞られていく。さやかは、はあ、とため息をついて相方に体を寄せた。

 

「ほむら、私はあの時言ったわ」

「何を?」

 

面白そうに目を細めて、黒髪の美女はさやかを見つめる。二人の距離はもうほんの数センチ。さやかは両手を伸ばして、そうして相方を抱き寄せた。彼女の耳元で何かを囁く。しばらくして、バツが悪そうに体を離したのもさやかだった。顔は紅潮していた。面白そうに眺めるほむら。

 

「――選択の余地なんて無いって」

「ねえ、ちゃんと言って…」

 

今度はほむらがさやかを抱き寄せる。再び二言三言、さやかはほむらの耳元で囁いた。その言葉にほむらはくっ、くっ、と喉を鳴らして笑う。

 

「その言葉が聞きたかったのよ」

「……意地悪」

 

顔を真っ赤にする相方を悪魔はさも嬉しそうに抱きしめ続ける。

そう、この言葉を再び聞くために、彼女はこのカードを見せたのだ。二人はどちらともなく立ち上がり、ベッドのある部屋の奥へ移動した。

 

テーブルのカードが片づけられたのは、それから数時間後のことだったという――。

 

 

END

 

 

 

 

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