時過ぎて(大人悪魔ほむら×大人さやか短編集)   作:さんかく@

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新年あけましておめでとうございます。
こちらでは初めてのお正月ですが、まだまだ好き放題書いていく予定ですのでうちの大人さやほむをどうぞよろしくお願いします。


満天の星の下

「はあ…」

「どうしたの?」

 

黒髪の女性は目を細めながら美樹さやかを見つめた。先ほどの怒りを湛えた表情はもうどこにもなく、そこには穏やかな表情の美しい悪魔がいるだけだった。

 

「いや、なんかあっという間に新年を迎えちゃったなあって」

 

左手の腕時計をちょんちょんと人差し指で示しながら、さやかは微笑んだ。照れ笑いだ。ああ、と美しい悪魔――暁美ほむらはつぶやいて、口元を緩めた。

 

「あら、いいじゃない私とキスしながら年を越せたんだから」

「キ…っちょ、ちょっとそれは!」

「事実でしょ?」

 

しれっと涼し気にほむらはそう言うと、流れるようにさやかの肩に頭をもたれさせた。さやかはというと、顔を赤くさせたまま何も言えない様子で。ただ唇に指をあてて、夜空を見上げた。満天の星は二人を見つめて微笑んでいる様で。

 

「私ね」

 

ほむらが急に語りだした。おとなしく耳を傾けるさやか。

 

「昔ここでまどかに優しくしてもらったの」

 

ひゅう、と風が吹いて、ほむらの髪が揺れる。何も言わず視線だけほむらに移すさやか。

 

「あの時、私は決めたのよ、あの子は絶対に幸せにしてみせるって」

 

ほむらの本音の吐露、それはとても――さやかにとってはとても嬉しいことだった。かつて彼女がこんな風に自らの想いをさやかに語ってくれたことなど皆無に近い。もちろんそれは自分にも問題があったことは今のさやかにならわかる。こんな風に彼女が心を開いてくれることがまさに奇跡なのだと。ほむらほどではないが、さやかもまた『時』の偉大さを感じていた。10年という歳月が二人の関係を変化させてくれたのだと。

 

「私もまどかには幸せになって欲しい」

 

それがさやかの本音。今、自分の肩に頭をもたれさせている黒髪の女性が世界を改変した時は正直幼馴染の幸せのことまで考えていなかった。ただ、幼馴染が築き上げたシステムを壊されたことに怒りを感じていただけだった。

 

「それなら私達の目的は同じね」

 

どこか嬉しそうな響きを含んだほむらの声にさやかは思わず口元を緩める。

 

「そうだね…あのさ、ほむら」

「何?」

 

肩にもたれながら、ほむらが上目遣いでさやかを見上げる。そんなほむらをいつになく優しくさやかは見つめ、囁いた。

 

「ありがとう」

 

何も言わず見つめ返すほむら。

 

――ぱちん

 

「あいたっ」

 

さやかが額を抑える。器用にもほむらが掌でそこを軽く叩いたのだ。目を丸くしているかばん持ちを見上げ、ほむらは肩を揺らして笑った。当然さやかの身体も揺れる。

 

「もう…何さ、人がせっかく」

「初日の出」

「え?」

「ここで見るのと家で見るのどっちが良いかしら?」

 

質問の意図がよくわからず、一瞬戸惑いながらさやかは答える。

 

「そりゃあまだ時間はあるし、ここだと寒いから家がいいわ」

「決まりね」

 

 

ほむらは身体を離すと再び羽根を広げた。大きな黒い翼がふわりと上下に動いて。

 

「え、もしかして飛ぶの?」

「あら、タクシーでも呼んで帰るつもり?」

「いや…そうじゃないけ…わあ!待って!」

「待っている暇はないわ、鞄持ちさん」

 

珍しく楽しそうに笑い、ほむらは羽ばたいた。その両手にはしっかりとさやかを抱えて。

 

「ひぃ、高!」

 

思わずしがみつくさやかを見て愉快そうに笑うほむら。先ほどまでの陰鬱な雰囲気が嘘の様に消えていて。

 

「もっと高く飛ぶわよ」

「お、お、落とさないでよ!」

 

普段ならほむらの顔を見るだけで赤くなるさやかだが、命がかかるとなるとまた別なのだろう、必死にほむらの細い腰を抱きしめる。

 

「情けない顔ね」

 

鞄持ちの顔を眺めながら、さも楽しそうに悪魔は空を飛ぶ。

 

「ねえ、さやか」

「な、何」

 

さやかの耳元にほむらは口を寄せ、何事か囁いた。こくこくと頷くさやか。

 

「ふふふ…」

 

ほむらはそれから大事そうにさやかを抱えると、もう何も言わずに空を飛び続けた――

 

 

――ねえ、さやか

――な、何

――今年もよろしくね

 

 

END

 

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