時過ぎて(大人悪魔ほむら×大人さやか短編集)   作:さんかく@

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大人になった三浦旭と美樹さやかが出会う話。
彼女達が出会う場所は――




向こう側のひと(番外編)

妙齢を迎えた今、旭は魔法少女という単語をあまり(というかほとんど)使わなくなった。それは「少女」という単語が果たして成人した自分に通用するものかどうかはなはだ疑問だし、どうもこそばゆい気がしたからである。自分の納得のいく呼称を思いつけばそれを使いたいと思っているのだが、果たしてそれも思い浮かばず今に至っている。だがまさかこんな思いもよらぬ場所で良いアイディアを見つけるとは――

 

旭は目の前のスーツ姿の女性を見つめた。

 

 

――10分前のこと

 

〇県警察本部生活安全課は本部ビルの4階にあった。その無機質な廊下をデニムとシャツというその場に不似合いな服装の女性が歩いている。

 

「あの、生活安全課はどちらでありますか」

 

向こう側から歩いてくるスーツ姿の男性に女性は涼やかな声で尋ねた。三白眼の男はじろりと睨んだ後「用件は?」と聞き返す。女性は特に気にする様子もなく小首をかしげて

 

「猟銃等講習会の受講申し込みに来ました更新の方で」

「ああ…それなら」

 

言葉少なに男は右手で奥の方のドアを指す。女性は会釈して男の横を通り過ぎようとしたが、男が引き止め尋ねる。

 

「待て、もしかして身内がいるか?」

「いや?おりませんが何か?」

「…それならいい」

 

男は背を向けてすぐ傍にある執務室のドアを開いた。ドアにはなんの表札も無く何課なのかまったくわからない。女性は首をかしげその声と同じく涼やかで美しい顔を少しだけ曇らせた。それは男の不遜な態度からかあるいは入っていった名前の無い執務室が気になるのか、それとも両方か――だがしばらくして肩をすくめると女性は奥のドアへと向かった。

 

女性が生活安全課に入るとすぐに担当の刑事が現れた。

 

「ご用件は?」

「先ほど連絡した三浦です。猟銃等講習会の申し込みに来ました」

「ああ、三浦…三浦旭さんですね」

 

先ほどの無愛想極まりない刑事らしき男とは違い、こちらの担当刑事は愛想が良かった。天気の話題を振りながらカウンター下から書類を取り出すと女性――旭に一通り説明し手渡す。それから注意事項を聞いて旭は生活安全課を出た。書類を見つめながら廊下を歩いていると何かに衝突する。

 

「あいた」

「ああ、どうもすみません」

 

旭が顔をあげるとそこにはスーツ姿の女性がいた。旭のたれ気味の目が少しだけ見開かれる。ぶつかった女性もまた旭と似たようなたれ気味の目を見開いて互いに見つめ合った。

 

「あの」

「ええ」

 

背丈は同じか少し相手が大きいくらいだろう、旭は女性を観察した。空と同じ髪の色に目、そしてどこか間の抜けたようなお人よしそうな顔。ほんの少し旭の口元が緩んだ。そうして視線を相手の顔から胸へ移す。

 

S.Miki

 

「どっちが名前かわからないですな」

「ああ…まあ確かに」

 

 

女性は笑った。笑うとまた子供っぽくなるので、ふと旭は年下なのだろうかと考える。不思議な光景、警察官と一般人が廊下でぶつかってこんなに親し気に話し合うということはまずあり得ない。だがそれには理由があった。普通ならあり得ない理由が。

 

「あの、あなたは……ううん、違うわ」

 

言葉を濁しごほん、と蒼い髪の女性が咳をして、そうして意を決したように再び口を開く。

 

「あんたも「あれ」よね?」

「ええ、そうであります」

 

魔法少女――以前はだいぶ離れたところでもその存在を感知できたはずなのに、大人になった今では至近距離にならないと気づかないことも多い。ぶつかった瞬間に二人は互いが魔法少女であることを知ったのだ。蒼い髪の女性が右手の人差し指を立てながら小さな声で囁いた。

 

「大人魔法少女」

 

その瞬間旭が口元を緩め笑顔を見せた。驚く蒼い髪の女性。

 

「ああ、他意はありませんよただ…」

「ただ?」

「いい呼称だなあと思って、我も使っていいでありますか?」

 

自然と旭もいつもの口調に戻る。

 

「いいわよ、それじゃ」

 

蒼い髪の女性が笑って背を向ける。魔法少女同士会えただけでも全て通じ合えるのか会話はもう終了だ。だが女性がさっきの無愛想な男と同じ執務室へ向かっているのを見て旭はつい呼び止めた。

 

「あのそこは何課でありますか?」

「あ~…それは」

 

やってしまったといわんばかりの表情で頭を掻く女性。それを見て旭は何か納得したのか、いいですよ、といわんばかりに手を振った。

 

「我は何も見なかったであります」

「サンキュー」

 

蒼い髪の女性はニイと笑う。旭も笑うと思い出したように尋ねた。

 

「活動は一人で?」

「ずっと一緒に行動している仲間がひとりいるわ」

 

そうしてまたニイと笑うと付け加えた。

 

「すっごい美人なのよこれが」

 

ノロケの様な言葉を聞いて旭は苦笑する。そうしてこちらもとでも言う様に自慢げな顔をして旭は言った。

 

「我もずっと行動を共にしている仲間がおります、そのひとはとても――」

 

それを聞いて蒼い髪の女性はまるで自分のことの様に嬉しそうに笑った。その笑顔を見て旭はいつかその仲間を見てみたいものだと秘かに思った。

 

 

また二人は思いもよらぬ場所で再会するのだがそれはまた別の話――

 

 

END

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