終盤に現れるやたら強い助っ人 作:不逞浪士
頑張ります。
特異点F ①
目眩と暗闇の先は廃墟だった。
焼けた土の臭いが漂い、生きとし生けるものが片付けられた汚染都市。
火の手が広がり、営みの残骸がその醜態を晒すばかり。
通りを闊歩するのは肉が余らず削ぎ落ちた人間と、影法師のなり損ないたち。
屍共が跋扈する世界に生きたモノが、人類史の生き残りがいるとすれば。
彼らは全力を持ってそれを排除しにかかるだろう。
這いつくばって息を殺す男が一人、額から顎に垂れる冷や汗を拭った。
いたのだ、盾の娘の手を取った者の他にも。不幸にもこの特異点へとレイシフトされた人間が。
マスター番号28、ゼノン・スペリオル。
人理継続保障機関フィニス・カルデアのCチームに所属していた彼は、コフィンが集められたレイシフトルームにて、今日この日から一年が過ぎるまで生死をさ迷っているはずだった。
カッと視界が焔色に染まり、真っ暗闇に落とされたかと思えば、未だ前線基地も拠点もない人外魔境に足を踏み入れてしまっている。
あくまで予備隊だった彼に上等な装備などが与えられているわけもなく、手元には一般的な魔術師はまず持たない6インチ160gのスマートフォンと、レイシフト用に誂られた現場作業服のみだ。
一寸先は闇である。
恐らく危機に見舞われたコフィン──いや、カルデアの状況さえ分からず終いなのに、ここで命を失えばどうなってしまうのか。
ゼノンは薄板に震える指を這わせる。スマホに見えた顔は酷く青ざめていた。
指紋認証を終えたそれは少々の画面明滅の後、インジケーターを回してカルデアへと通信を試みるが、三桁の数字を短く表示して画面は消えた。
「クソ……」
弱々しい声が漏れる。
この廃墟の片隅──いや、世界の一欠片の中で息絶える他ないのか。
もちろん彼はまだ自分の命を諦めたくはない。
だが、何一つないのだ。己の生存を保証してくれるものが。
生き残れると信じるに値する根拠が、ただの一つも彼の目には映っていなかった。
諦観と絶望が頭を染め上げ、数分の黙考の後、ゼノンは瓦礫から腰を上げた。
最期に赤く燃える空を見上げようと、防備も警戒も置き去りに、身を廃墟の外へと移動させる。
黒煙と赤が天を彩る特異点は、さながら現世に浮上した地獄のようであり、最期の景色としては随分と相応しく思えてしまう。
もう、いいだろう。
自分にも、彼らにも、等しくできることはなかったのだ。
世界を救うなどという大望を、抱くべきではなかったのだ。
断頭台に顔を出した生き残りを、弓兵がみすみす見逃すはずもなかった。
遠目に見えるその表情に守護者としての自身を重ね、一抹の同情を感じながら、淀みなく弓を引き絞る。
歪んだ
人ごときに知覚できるはずもない、致命の一撃。
過たず、速やかに、その命を刈り取る──はずだった。
酷く鈍く、がなり立てるような音が響いた。
硬質な金属が超高速でぶつかり合う音が。
瞬間、ゼノンの正面には無から現れたとしか思えない鈍色の壁がせり上がっていた。
有象無象の魔術師を殺す程度の一射は、その堅固な盾の前にして、意義と存在を失った。
死を覚悟していたとはいえ、焦り、慌てふためいたゼノンの視界にスマートフォンが映る。
『01000110 01100101 01100001 01110010 00100000 01101110 01101111 01110100 00101110 00100000 01001001 00100000 01100001 01101101 00100000 01101000 01100101 01110010 01100101 00101110』
その画面には0と1が走り、何事かを彼に伝えようとしているのだった。
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人理定礎値:C+
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