終盤に現れるやたら強い助っ人 作:不逞浪士
『疑問。死を試みた理由の回答を要求』
礼装──【知識の匣】。
何百何千もの時と世代を重ねて情報を蓄え続ける百科事典。
家系に伝わるものではなく、所有者が次なる所有者に相応しい者を見定め継承される。
継承者に選ばれることは名誉なことであるが、それは家から切り離されることと同義であった。
編纂開始当初、礼装は皮で装丁された辞書の形をしていたが、移ろい変わる時代に合わせ、『知識』が集約されるに相応しいものへと中身を移す。
それが、ゼノン・スペリオルが手にしているスマートフォンの正体だ。
しかし、知識の匣は情報記録媒体として──ゼノンがいくつか外付けしたものこそあるが──必要最低限の機能しかない。
まして所有者を守るために壁を生じさせたり、継承者の行動に疑問を呈するなど、あるはずもない。
だが、内蔵されたスピーカーからは無機的で抑揚のない声が聞こえてくる。
ゼノンが発される音を意味あるものとして捉えるのにしばらくの時間を要したが、やがて静かに、乾ききった喉を鳴らした。
「助けて、くれたのか?」
『肯定。速やかな回答を要求』
早くしろと急かすスマホに少し待ってくれと浅く呼吸を繰り返す。
弓兵からの超長距離狙撃は衝突寸前、突如無から立ち上がった壁に防がれた。
壁は水のように形を失い、ゼノンの身体をすっぽりとつつみこみ、そのまま射線の通らない廃墟へと彼を引きずりこんだのである。
それら一連の行動を当機が実行したと主張する礼装に、彼は諦観がちに再び口を開いた。
はたして壊れてしまったのはコレか、己か。
「嫌になった。後続部隊だったのに俺一人で特異点にレイシフト、まだカルデアとも通信できない。どうやって戻る?どうやって解決する?」
孤立無援。
戦いの要たるサーヴァントを召喚できず、かと言って自分では抗する武器はおろか肉壁にすらなれない。
通信も絶たれ、付近にあるのは敵の気配ばかり。
「どうせ死ぬ。俺はここで死ぬしかない。今すぐだって後だって、何も変わりやしな──」
『否定』
抑揚は変わらずない。
そのサウンドにはえもいえない威圧感があった。
『暫定︰マスターの生命が絶たれる可能性、現時点0.00000001%。未観測のゆらぎを考慮した確率は──』
「マス、え……は?ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺が?お前の?」
『未確定。暫定︰マスターが当機との契約を了承次第、主従として関係が成立』
もちろんゼノンはサーヴァントを召喚した記憶などない。
召喚サークルや令呪さえ手元にない魔術師がどのようにしてサーヴァントを喚び出せるというのか。
そう質問すると、つらつらと淀みない説明がスピーカーから流れてくる。
『回答。暫定︰マスターは当機を未召喚。Aチームレイシフト5.75秒前、
「いやいい、もういい」
もう十分だとゼノンは大きくため息をつく。
どうあれ、まだ自分は生きられる望みがあるらしい。しかも確率は99%超え。
怪しさ以外欠片もないが、希望が微かにでも見えてしまえば人間、藁にでもすがりたくなってしまうのだ。
『提案。暫定︰マスター、生存を希望するのであれば契約を』
「……まだ生きれるんだよな、俺」
『肯定。当機は最善を尽くすことを宣誓』
選り好みをしている余裕はなかった。
絶望に蝕まれた自分の手を取ってくれるのであれば、誰でもいい。
ゼノンは画面に表示された指紋認証に指を添え、誓う。
「告げる。汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に」
『起動者登録──クリア。認証開始──完了』
スマートフォンには再び0と1が流れ出す。
一人と一機の契約を刻むべく、数字の群れはその意味を構築する。
「聖杯の寄るべに従い、この意 この理に従うならば──我に従え」
『第一宝具通常稼働開始。認識範囲及び自己補完機関、正常へ復帰』
彼らの間に路が開き、力が供給される。
当機と名乗るモノを縛める術はないが、それでも良い。
まずは生きる。
まだ生きれるのなら、一分一秒生き足掻いてみせる。
そのためなら────悪魔と契りを結んだって構わない。
世界を救うとか、そういう大層な願いは……後から考えることにした。
「ならばその命運、汝が“剣”に預けよう」
『パス形成・魔力流入を確認。サーヴァント・《悪魔》のキャスター、当機はゼノンを主と規定する』
【出典】史実、都市伝説、■■■、■■■■■■
【CLASS】キャスター
【真名】《悪魔》のキャスター
【性別】未確定
【身長・体重】6インチ・160g
【属性】中立・中庸・地・■
【ステータス】筋力E〜A 耐久E〜A敏捷 E〜A 魔力E〜A 幸運E〜A 宝具 EX