「なにィッ!?君は本当に東京へ行くのかい?」
M県S市杜王町。そこにあるとある一軒家で、1人の漫画家が眼前の学生に対して大声を上げた。叫ばれた学生は、その声の大きさに思わず耳を塞いでしまう。
「いや、前から言ってたじゃないっすか…。『ほぼ記念受験っすけど、受かったら向こう行く』って。なら受かったら行きますよそりゃ。」
「確かに…確かに君はそう言っていた。だがな、
「なんすか。」
ずびー、と紙パックのコーヒーを啜る学生─穰の肩を掴んで、漫画家は再び叫んだ。
「君がいなくなれば誰が僕の取材を手伝ってくれるんだい!?」
「知らねえっすよそんなこと。」
漫画家はまあまあ自分勝手だった。そしてそれと同じくらい学生も薄情だった。
「つか、先生は別に取材困らんでしょ。【ヘブンズ・ドアー】あるし。」
「…確かにそうなのかもしれない。だがなあ!そうじゃあないんだよ穰くん!」
「近い、近いっす露伴先生。ちょい離れてください。」
ショックを受けていたのも束の間、直ぐに立ち直って詰め寄ってくる漫画家─岸部露伴に、穰はすごく嫌そうな顔をした。
「君の【
「いや、だから【ヘブンズ・ドアー】あるじゃないっすか。あれでも似たようなことできるでしょ。」
割とこの男が暴走するのはいつものことなので、穰はもはや慣れきっていた。詰め寄ってくる露伴を適当にあしらうと、勝手にソファを陣取り始める。
「いやちがう!確かに【ヘブンズ・ドアー】ならものの情報を読み取れる。けどそうじゃあない!君の
「……わーお、すごい情熱。」
力説する露伴に対し、どこまでも穰は冷めきっていた。彼は露伴を冷ややかな目で見つめると、再び紙パックのコーヒーに口をつける。
「…ま、なんと言おうと俺は行きますよ、『高度育成高等学校』。せっかく受かったし。東京だし。」
「そんな!僕と君との仲じゃあないか!考え直してくれよ!」
「あんたどんだけ俺のスタンド頼りにしてるんすか…。てか、まあ考えてくださいよ。」
そう言って彼は飲み終えてゴミになった紙パックをゴミ箱に放り投げると、露伴の方へと向き直った。
「先生も流石にあの高校のことは知ってますよね?」
「ああ。在学中は外部に出られず、連絡も取れない。それでいて卒業生は進路を確約されている。正直謎に満ちた学校だな。僕も取材を申し込んだが断られたよ。」
「その通りっす。ってか、取材申し込んでたんすね。…で、なんすけどね。おれ、これからそこ通うんすよ?」
「な…まさか!」
そこで露伴は気づいた。これは絶好のチャンスなのではないかと。
「思いついたみたいっすね。連絡が取れない?そんなの表向きの話、パンピーならっすよ。スタンドさえ使えるなら俺は連絡が取れます。…このチャンス、先生は逃すんすか?」
そう言った穰の背後に、突然謎の人型が現れる。それは全身に幾何学模様が入っており、右手が赤色、左手が緑色をした何か。それが今、無言のまま穰の背後に佇んでいた。
「【T-E-L-E-phone】か…!…いや、なら君には是非行ってもらおう!あんな謎に満ちた学校の中を知れる機会なんてそうそうないからな!」
「OKっす。んじゃそう言うことで。4月から3年は会えないと思ってくださいね。」
「分かっているとも。何かあれば康一くんを頼らせてもらうとしよう。」
「家庭持ちを邪魔してんじゃないですよあんた。またしばかれますよ?」
呆れながらそう言うと、穰が立ち上がる。どうやらもう帰る気のようだ。
「なんだ、もう帰るのかい?」
帰ろうとする穰に露伴が声をかけた。その手には一つのよく熟れたオレンジ。一体どこから取り出したのだろうか。
「っす。荷造りとかあるんで。なんかやることあったんすか、俺。」
「ああ。ちょっと切られる瞬間のオレンジとの対話をしてみたいと思っていてね。それを頼もうと思っていたんだ。」
「先生さてはあの動画見ましたね?」
しばしの別れだと言うのに、
彼が入学するまで、あと一月。
主人公
『明星 穰』。星のアザは無い。割と珍しい生まれついてのスタンド使いの1人。
スタンドは【T-E-L-E-phone】。
【T-E-L-E-phone】
破壊力───C
スピード──A
射程距離──A(効果範囲)・E(移動距離)
精密動作性─A
持続力───B
成長性───D
能力は不明。『非生物との会話』が可能らしい。