予選決勝まで後3日
昨日は音無のことで色々あったけど、今日も元気に練習に励んでいる
しかし、昨日と違うのが
「あれ?冬海先生がいる」
「あ、ホントでやんすね」
珍しく顧問の冬海先生が練習に顔を出している。
そして土門が何やら落ち着かない様子であることだ
「どうした土門?なんか落ち着かない様だけど」
「べ、別になんでもねえよ。さあ!練習練習!」
声をかけてもこの調子だ。でも、土門が言わない以上俺から踏み込むべきではない。
そんなことを考えていた時、ふと冬海先生の方を見ると雷門が近づいて行った
「冬海先生。ちょっといいかしら?」
「これはこれは。いかがなさいましたか?」
基本的に冬海先生は上の立場の人にはへこへこしている。雷門も理事長の娘で学校の権力者でもあるし逆らえないのだろうが
「帝国戦の時に使うバスの調子が見たいの・・・動かしてもらってもよろしくて?」
「バ、バスですか!??」
ひどく取り乱す冬海先生。いったいどうしたのだろうか・・・
そして雷門に呼ばれ俺たちも一緒にバスのある車庫に向かうことになり冬海先生がバスに乗り込んだ
「いいですか?ちょっと発進させて止まるだけです」
「で、でも私は大型免許を持っておりませんし・・・」
「あら?ここは私有地ですし、その管理をしている私が許可しているんですから大丈夫ですよ。ハンドルは切らずに少し進めるだけですから先生でもできますよね?」
「は、はい・・・」
冬海先生はエンジンキーに手をかける。しかしいつまでもカチカチといじるだけでエンジンはかからない
「あ、あれ?おかしいな・・・・バッテリーでもあがってるのかな?」
「クサい芝居は結構です!!エンジンをかけなさい!!」
「は、はいい!!」
おお、おっかな。中学生とは思えない威圧感だ。この学校を任されるのも納得してしまうな
冬海先生は観念したのかエンジンをかけるがまたもたついていた
「なぜ動かさないのですか?」
「う、動かせません!!」
「どうしてですか?」
「どうしてもです!!」
冬海先生はハンドルに頭をつけてかたくなに車を動かさなかった。
そして雷門があきれながら
「はあ・・・・冬海先生。ここにあなたの犯罪行為を告発する手紙があります。あなたがバスに何かしらの細工をしたこともお見通しです」
「フッフッフ・・・・フッハハハハハハ!!!そうですよ。私がバスのブレーキオイルを抜きました」
とうとう白状した冬海先生に俺も含めて怒りがわいてくる
「なんのために?」
「あなた方が決勝戦に出ると不都合な方がいらっしゃるんですよ」
「だからって下手したら俺たちの命にかかわることじゃないですか!!それでも教師ですか!!」
「あなたたちはあの人の怖さを知らないんだ」
俺がそういっても悪びれる様子はない。
「あなたのような教師はこの学校に必要ありません!!即刻この学校から立ち去りなさい!!」
「ッハ!お払い箱というわけですか?いいでしょう・・・いい加減この生活にも飽き飽きしていたところです」
そう言って冬海先生は立ち去ろうとする。しかし去り際に大きな爆弾を残していった
「あ、そうそう。スパイが私だけとは思わないことですね・・・・ねえ、土門君?」
そう言って高笑いしながら去っていった。そして俺たちの視線は土門の方に向く
「本当なのか?土門・・・」
「そんなわけないっすよね?」
「そうでやんすよ。きっと冬海先生が嘘をついたでやんすよ」
円堂、壁山、栗松が土門に問う。土門は
「ああ、そうだよ。俺は帝国学園のスパイだ。皆の情報を流すのが仕事だった・・・・ごめん!!」
そう答えて逃げる様に立ち去ろうとする
しかし、お前がスパイなのは何となく感づいていた。俺は先回って土門の手をつかむ
「離してくれよ天野!!俺は」
「俺たちの命を救ってくれた・・・そうだろ?」
「えっ?」
土門がスパイである。そして雷門の持つ手紙。内部からの告発であれば同じ立場である人物が書いたものである可能性は高い
「あれを書いたの・・・土門じゃないのか?」
俺がそういうとみんなが手紙を見る。その字は紛れもなく土門の字であった。
「お前は、取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。でも、そんな情報を流されたくらいで俺たちは負けないし、お前は俺たちの命の恩人だ。それだけで十分じゃねえか?」
「天野・・・でも、俺は!!」
「いなくなることで罪滅ぼしになるのは大きな間違いだ。もし申し訳ないと思うんだったら俺たちがこの大会で日本一になるのに協力してくれよ。皆もそれでいいよな?」
俺の言葉に全員が賛同する。そして円堂が前に出てきて
「お前は俺たちの仲間の・・・雷門中サッカー部の土門飛鳥だよ!改めてよろしくな!!」
そう言って土門の目の前に手を差し出す。この時には土門も逃げようとしなくなっていたので俺も拘束を解いた
そして土門は涙を流しながら円堂の手をつかみ
「ありがとう・・・円堂、皆!」
そういいながら涙を流し続ける土門の表情は今までのとは違いホントの笑顔のようにも見えた
さてと、こっちの問題は解決したんだけど実はこれからなんだよなー
「えっ!?フットボールフロンティア規約?」
「そうだ。大会出場の為には顧問の先生、もしくは外部の監督が引率するのが絶対条件なんだよ」
頭に?を浮かべる円堂に俺が冷静に説明してやる
俺の説明に豪炎寺だけは頷いてくれてるが他のメンバーに関しては分かっていなかったようで
「じゃあ、俺たちはこのままじゃ決勝に出れないってこと?」
「そういうことになるね」
分かりやすく落ち込む皆。ちなみに冬海先生を追い出した雷門に目を向けると
「わ、私は、ももももちろん知ってたわよ!だから、あなたたちは早く新たな監督を見つけなさい!これは理事長からの言葉と思ってもらって構いません」
おいおい!お前も知らなかったのかよ・・・という事は一から探すわけだが決勝まで後3日しかない。
すると豪炎寺が
「円堂・・・雷々軒の親父はお前の祖父のことを知っていた。もしかしたら」
「そうか!サッカーの経験者かも。行ってみようぜ!!」
そう言って皆が走って出ていく。俺はせっかくだからと思い財布も持ち出した。あそこのラーメン旨いからなあ・・・いかんいかんよだれが出てきた
というわけで俺たちは雷々軒へとやってきた
「おじさん!!俺たちの監督になってください!!」
「・・・・仕事の邪魔だ」
円堂は入ったやいなや大声で雷々軒の店主に話す
幸い他に客はおらず落ち着いて話ができる絶好の機会なのだが店主はまともに取り合ってはくれない
しかし円堂の辞書に諦めるという文字はないのだ
「おじさんはじいちゃんやイナズマイレブンを知っていた。もしかしてサッカーやってたんじゃないの?」
「もしやそのイナズマイレブンだったりして」
「ホントか?土門!」
「勘だよ勘!」
いや、その勘もどうやら当たっているらしい。土門がしゃべった瞬間に店主の表情が変わったからな
しかし
「お前ら・・・・うちはラーメン屋だ!注文しないなら出てけ!!」
「じゃあ注文するもんね!!醤油ラーメンで!!」
「・・・はいよ」
円堂は意気揚々と注文し店主はラーメンを作り始める。しかしここで円堂がポケットの中を確認し
「財布・・・部室だ」
そして助けを求めるかの如く木野を見るが
「大丈夫!施錠はしてきたよ」
「いや・・・そうじゃなくて」
その様子に店主もガチギレし
「出て行けええ!!」
そう言って俺以外のメンバーは放り出された。すげえパワーだな。
「おい、坊主!お前も」
「俺は財布持ってきたよ。元々食事も兼ねてましたから」
「・・・生意気なガキだ」
そう言って厨房の方に戻っていった。全くなんていわれようだ。俺は純粋にここのラーメンを楽しみに来たのに
ちょうどそのころ円堂たちは部室へと帰ってきていた
「そういえば天野がいないな」
「天野君なら雷々軒に残ってるんじゃないかな。ついでにラーメン食べるって財布を持って行ってたから」
「あいつ・・・さすがだなー。おじさんが怒ることも想定して財布を持って行ったんだ!」
円堂はこうなることを見越して財布を持って行ったのだと感心し、他の部員も感心しているが全くの誤解であることは誰も知らない。天野はただ腹が減っていただけなのだから
「へいお待ち!」
俺の目の前に美味しそうな醤油ラーメンが運ばれる。麺はもちろん自家製麺でコシの強いちぢれ麵。スープは底が見えるほど透き通っているがそこから想像できないほどのコクがあり麺にマッチしている。具はメンマにチャーシュー、煮卵に薬味のネギとシンプルでこれまたラーメンの味を引き立てるものだ
「ああ・・・・旨い!!」
「お前はホントに何しに来たんだ?」
店主は俺の方を凝視しそう聞いてきた。まあ、円堂があんなに勢いよく言ってたからな
「単純に腹が減ってたから。円堂たちも財布持ってきたもんだと思ってたんで」
「俺を監督に誘うんじゃなかったのか?」
「まあ、それが目的でしたけど・・・・無理強いはしたくないんですよね。次の試合は帝国学園。生半可な人じゃ監督はつとまりませんから」
「!!!」
俺が帝国学園のことを口に出した瞬間に店主の表情が曇る
この時何となくだが感じた。この人は俺と同じ・・・いや、もしかしたら俺よりもよっぽどつらい理由でサッカーから離れたんだと
だからこそ確信できる。この人はサッカーが好きなのだと
俺はスープを飲み切り店を出て行こうとする
「ご馳走様でした・・・」
「・・・はいよ」
そして俺は立ち止まり
「俺も・・・・サッカーから離れていた時がありました」
「・・・だからなんだ?」
「練習しても勝てなくて・・・・勝手に絶望して。その時に俺をサッカーに戻してくれたのが円堂でした」
「何が言いたいんだ?」
「あいつは筋金入りのサッカーバカなんです・・・あきらめることを知りません。だからあいつはまたここに来ます。その時は話を聞いてやってください」
「・・・・」
店主は何も言わなかったが俺はお辞儀だけして店を後にする
そして雷門中に戻ると円堂は雷々軒に行ったのだと聞かされる
さすがに行動が早いな
ちなみに俺が雷々軒にいる間に円堂たちは鬼瓦さんという刑事さんと話をしていたらしく昔の雷門中サッカー部について教えてもらったらしい
当時の雷門中は無敵とまで言われておりイナズマイレブンと呼ばれていた。監督は円堂の祖父であり雷々軒の店主は正ゴールキーパーだったそうだ。それを聞いた円堂がキーパーなら話ができると飛び出していったらしい
「ま、それなら大丈夫かな」
「そういえば天野君は残って説得を続けてくれたんだよね。どうだった?」
「あ、ああ・・・。まあ、最初よりは話を聞いてくれるようになったかな。ははは・・・」
まあ、嘘はついてないよな・・・最後の方はちゃんと説得したし
ああ、皆の尊敬のまなざしが痛い。周りがこんなんだから説得の方がついでだったなんて口が裂けても言えないよな
そして翌日
「これからおまえたちの監督になる響木正剛だ。よろしく頼む」
円堂は説得を成功させ雷々軒の店主改め響木監督が俺たちの新しい監督となった
後から聞いた話だが円堂は響木監督にPK3本勝負を挑んだらしく響木監督のシュートを全て防ぎ切ったのだそうだ。まったく円堂らしいや
「決勝戦まであとわずかだ!それまで徹底的に鍛えてやるから覚悟しろよ!」
『おーーーー!!』
これだよこれ!今までの雷門にはこれがなかった。結果的に冬海先生が解任されて万々歳だよホント
他のチームでは当たり前の監督の号令。これほど気が引き締まるもんなんだなあ
まあ、何がともあれ決勝戦だ!待ってろよ帝国学園!!