六等星は強い光の下で輝く   作:大仏の暇つぶし

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第十六話 決戦に備えて

地区予選決勝戦当日

俺たちは帝国学園まで来ていたのだが

 

「学校じゃねえだろ・・・・これは」

 

目の前にあるのはまるで要塞のようで行き交う生徒の制服も軍服のようなものだった

御影専農中といい野生中といい普通の学校はないのだろうか

 

「皆、気をつけろ!!どこかに罠があるかもしれない。壁が迫ってくるかもしれない」

 

響木監督がそう言うと一年生を中心に床や壁を調べ始める

しかしマネージャーたちは

 

「響木監督も冗談を言うのね・・・」

「まあ、これが監督なりの気持ちのほぐし方なのかも」

 

そんなもんかね・・・

とまあそんなやり取りをしている間に雷門中の控室にたどり着く

そして扉を開けると

 

「よくここまでたどり着いたな」

 

そこに立っていたのは帝国学園のキャプテン鬼道有人だった

 

「まるで何か仕掛けたかのような言い方じゃねえか!!」

 

そして染岡を筆頭に鬼道に食って掛かる

俺も染岡たちの気持ちが分からないわけではない

なんてったって一番の大怪我を負わされたのは俺だからな

しかし染岡に続くように抗議の声があがる中、円堂だけは止めに入っていた

 

「なんで止めるんだ!!そいつが何か仕掛けたかもしれねえだろうが!!」

「鬼道はそんなことをするような奴じゃない!!」

「円堂?」

 

円堂の必死の形相に皆も鬼道を責めるのをやめる

鬼道は「すまなかった」とだけ言ってその場を去った

 

 

その後俺たちは試合に向けて準備を進める

先ほどのこともあってか皆ピリピリしていた

俺は先ほどのことを聞くために円堂の元に向かった

 

「天野、どうしたんだ」

「円堂・・・さっきはなんであんなことを言ったんだ?あいつが・・・あいつらが俺たちにどれだけのことをしたのか忘れたわけじゃねえだろ?」

 

俺の言葉にその場の空気がさらに重くなる。別に構わない。それよりもこんな状態で試合をするよりはましだと思ったからだ

 

「響木監督が来た次の日に鬼道に会ったんだ・・・。鬼道は土門や冬海先生のことで謝りに来たんだ。そして自分たちが影山のおかげで勝ててたんじゃないかって・・・雷門中がうらやましいとまで言ったんだ」

 

そんなことがあったのか・・・

確かにさっきの鬼道からは練習試合の時のような威圧感は感じなかった。

 

「それに鬼道のシュートを受けたからよく分かるんだ。あいつのサッカーへの思いがホンモノだってことが。だから全力で戦って勝ちたいし、いつかは一緒にプレーできたらって思ってるんだ!」

 

円堂は俺に向かって目を輝かせながら言う。全く円堂のこういうところには敵わんな・・・

でも、こんなやつだからついていこうと思えるのかもな

 

「俺はこうして帝国ともう一度戦えることが嬉しい。だから皆であの時とは違うって所を見せてやろうぜ!」

『おおーーーー!!!』

 

チームが一つになるのを感じる。正直帝国はまだ格上ではあるけどもこれなら戦えるだろう

さて、それじゃあトイレにでも行ってくるかな。試合までまだ時間あるし

俺は響木監督に断ってトイレへと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国学園は広く迷路のようだった

なんというか・・・・歩いても景色が同じなもんだからトイレにたどり着けたのはいいものの戻れなくなってしまった

 

「こんなことなら誰か連れてくるんだった・・・・・・ん?」

 

彷徨っていると向こうに鬼道の姿が見える。

円堂にはああ言われたものの俺にとっては音無のこともある為完全には割り切れていないが、この状況ではしょうがない

案内してもらう為に追いかけ道を曲がった瞬間だった

目の前に背の高い男が現れる

俺は勢い余ってぶつかってしまった

 

「す、すみません!」

「天野・・・・星矢君だね?」

「そうですが・・・」

「私は影山。この帝国学園の監督をしているものだ」

 

こいつが影山・・・・冬海や土門を使って卑怯な真似をした張本人!

俺は思わず身構えた

 

「おっと・・・どうしたのかね?」

「どうしたもこうしたもないだろ!あんたが全ての元凶だ。スパイ行為や練習試合で俺らを痛めつけたことも全部」

「人聞きの悪いことを言うな・・・私が指示した証拠でもあるのかね?」

「てめえ・・・・」

「私は選手やコーチなどのスタッフに必ず勝てとだけ指示を出している。まさか犯罪行為に手を染めるとは思っていなかったがね」

 

影山の言葉に怒りがこみあげてくる。だが影山の言っていることはごもっともだ。俺は悔しさを我慢してその場を去ろうとする

 

「おや?もう戻るのかい。それでは一つ耳寄りな情報を教えてあげよう」

「何?」

 

つい振り返ってしまった。こいつの言葉は聞かない方がいいのは分かっているが体が反応してしまったのだ。

 

「君たちのマネージャーの音無春奈のことだ。君は音無春奈と帝国の鬼道有人が兄弟であることは知っているかな?」

「だったらなんだよ・・・」

「それならば話が早い。実は鬼道は鬼道家に養子に入る際、養父にこんな条件を付けた・・・・帝国に入って3年間勝ち続けます。もし成し遂げたのなら妹を養子に入れてください・・・と」

「なっ!?」

「鬼道は妹と共に暮らすために中学の3年間を帝国にささげる覚悟を決めているのだ。それがもし負けたのならこの約束は破談。しかも地区大会で負けたともなれば鬼道家から追い出されるやもしれんな」

「そんな・・・・」

 

まさか鬼道がそこまでの思いでサッカーしてたなんて。音無だってホントは鬼道と一緒に暮らしたいはずだ。それも俺たちが勝ったら一生叶わない・・・

 

「分かったようだね・・・もし君たちが勝ったら兄弟に待つのは”破滅”だ」

 

破滅・・・・その2文字と一緒に泣き崩れる音無しの姿を想像する。

そのまま影山は去っていったが俺の頭の中はそのことばかりで他のことは考えられない

破滅・・・音無・・・・・俺たちが勝ったらあいつらは・・・・

 

「おい・・・・おい!」

 

朦朧とする中俺を呼ぶ声が聞こえる。ゆっくり上を見ると響木監督が呼びかけてくれていた

 

「監督・・・・」

「戻ってこないから来てみれば・・・・今話してたのは影山だな?何を言われたんだ?」

 

そうだ!このことを皆に・・・・・駄目だ、言う事は出来ない。言えば間違いなくパニックになって試合どころじゃなくなる。でも、あれ?俺は勝ちたいのか・・・・でも勝ったら・・・

 

「いや・・・・道を聞いただけ・・・です・・・」

「そうか・・・・ならいいんだが。あいつは勝つために何でもやってくる。何を言われても気にせず試合に集中しろよ!」

「・・・はい」

 

集中?できる訳がない・・・・俺は・・・どうすればいいんだ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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