試合当日
結局、イナズマ落としが完成することはなかった。俺の月光ドライブは対人でも使いこなせるようになり準備万端なんだけど・・・・こうなったら試合中に完成させることを願うしかないな。あくまで問題なのは壁山が怖って体勢を崩す事。それさえクリアすれば撃つことができるはずだ。頼んだぞ壁山!
野生中に到着した俺たち。本戦はフロンティアスタジアムっていうでっかい会場でやるんだけど地区予選は各学校が会場になる様だ
「ここが野生中かー」
「自然豊かな場所でやんすね」
少林と栗松が歩きながら話している。確かに東京では珍しい光景だ
他のメンバーもこうして外で試合をするのが久々なためかえらく緊張していたりそわそわ落ちつかないなどそれぞれ反応を見せている
そして俺たちは野生中のサッカーグラウンドにたどり着く
観客でもある野生中の生徒たちは周辺の木にぶら下がったり岩に上ったりして観戦している。本当に東京なのかここ・・・・相手の選手もなんかゴリラにサル、ヘビみたいな見た目をしている奴らばっかりだ
「よし!それじゃあスタメンはこれで行こう」
グラウンドのベンチにて円堂が中心となりスタメンを決める。普通なら顧問の先生や外部の監督やコーチが主体となるのだろうがうちは先生がそもそもやる気なしの為試合の指揮は俺たちでとるのが当たり前になっている
ちなみに土門は入部してから日が浅いため連携の観点から今回はベンチスタートとなっていた
というわけでスタメンは
FW 豪炎寺 染岡 天野
MF 松野 半田 少林寺
DF風丸 壁山 影野 栗松
GK 円堂
となっておりフォーメーションも尾刈斗中の時と同じだ
一方野生中は
FW 水前寺 五利 蛇丸
MF 鶏井 香芽 猿田 大鷲
DF 魚住 獅子王 蛙田
GK 猪口
というポジション取りでMFが雷門と比べ前に上がっているのが特徴の攻撃的なスタイルだ。
しかしだからと言ってDFが弱いわけではない。この大自然で育てられた豊富な運動量によってこれだけ前に出ていても後ろまでカバーできる。さすがは去年の準優勝校だ。
「さあ!!いよいよ始まりますフットボールフロンティア地区予選。帝国学園、尾刈斗中を破って勢いに乗る雷門イレブンの一回戦の相手は前回の地区大会で準優勝した強豪野生中!!自然の中で育てられた個々の身体能力は大会屈指です!果たして勝ち上がるのは雷門中か野生中か!実況は私、角間桂太がお送りします」
両校整列し挨拶を行った後ポジションについたところでおなじみ将棋部の角間桂太の実況付きで試合が開始する
てかあいつは公式戦でも実況するのか・・・俺たちと一緒のバスには乗ってなかったはずだけどどうやって来たのだろうか。
まあ、そんなことはどうでもいい。まずは試合に集中だ
試合は0-0のまま進んでいく
こちらは必殺シュートを打たせてもらえず相手のシュートは円堂が何とか防いでいる状態だ
しかし
「コンドルダイブ!!」
「熱血パンチ!!」
「ターザンキック!!」
「クソッ!!熱血パンチ!!」
さっきから撃たれっぱなしだ。円堂がはじいたボールをとろうにも相手の動きが速く先にとられシュートまでもっていかれる。こちらのシュートに関してはファイアトルネードは上から押さえられ地上から俺や染岡が撃とうとすればDFががっちり押さえてくる。試合開始から20分が経過していたがこちらはまだシュートを撃てていない。やはり勝つにはイナズマ落としが必要だ
「ふう・・・・」
「大丈夫か?円堂・・・」
「天野か・・・ヘーキヘーキ!何本でも止めて見せるぜ!!」
試合は0-0のまま前半が終了した。しかし流れは向こうにある。こちらはシュートを撃たせてもらえず相手はすでに10本ものシュートを放っているのだ
円堂の手はすでに腫れあがっていてこのままではジリ貧なのは明確
だからこそ早めに一点が欲しいのだが
「いいいい、イナズマ落としっすか!?むむむ、無理っす・・・」
壁山があの調子では託すことができない。やはり俺がやるしか
月光ドライブで相手を突破しシュートを決める。現状ドリブルとシュートの両方で必殺技が使えるのは俺だけ。やるしかない!
「安心しろ壁山!俺が決めてやる」
「天野センパイ・・・」
後半がスタートする。俺は相手のパスをカットし相手陣内に攻めあがる
立ちはだかるのは相手DFの魚住と蛙田
俺は月の光を纏い加速。
「行くぜ!!月光ドライブ」
俺は上下ジグザグに動き回り相手DFを突破。後はシュートを撃てば
「スターダストランス!!」
よし!今日初めてシュートを撃てた。これなら!
しかし
「ホーントレイン!!」
そこに割って入ったのがDFの獅子王。シュートの威力を弱めると
「ワイルドクロ―!!」
GK猪口が必殺技でキャッチする
クソが・・・・突破できてもあのDFをはがさないと得点できない。それならば
「染岡!!」
俺は月光ドライブで相手DFを突破し獅子王と一対一になった所で染岡にパスする
どうだ!これなら反応できないだろ
「ドラゴン・・・」
染岡はパスを受けシュート体勢に入る。すると俺の目の前から獅子王がすさまじいスピードれ染岡の方に向かい。体を丸め回転し加速する
「スーパーアルマジロ!!」
そのまま染岡にタックルをかまし染岡はフィールド外に飛ばされた。染岡は足を抑え立ち上がることができない。選手交代だ
染岡に代わって入ったのは土門。しかし、染岡がいない以上さっきの戦法は使えないし豪炎寺のファイアトルネードは完全に攻略されている。いよいよ後がなくなってきた
すると円堂が
「よし!壁山をFWにあげよう!」
「は?今なんて・・・」
「だから!壁山をFWにあげるんだよ!この試合を勝つためにはイナズマ落としを撃つしかない!」
まあ、そうなんだけどさ。どうも壁山が乗り気ではなさそうだ。円堂の勢いに押され渋々この提案を受け入れたようだが大丈夫なのだろうか・・・
試合再開直後チャンスは訪れる
俺がシュートを撃ったためかDFのマークが集中し始めたのだ
迷っている暇はない。今はイナズマ落としにかけるしかないんだ
「いけ!!豪炎寺、壁山!!」
俺のパスに合わせ2人が飛び上がる・・・しかし
「ひいいいい!!!」
やはり壁山は下を見てしまい落下。イナズマ落としは失敗だ
野生中にボールが渡り前半同様、怒涛の攻めが展開される
「ターザンキック!!」
「熱血パンチ!!・・・くっ!!」
引き続き円堂が止めてはいるが痛みに顔をゆがませている
限界はすでに超えているだろう。これ以上シュートを撃たせるわけにはいかない
「豪炎寺、壁山・・・・攻撃は任せるぞ」
「天野・・・何をする気だ?」
「俺がディフェンスに参加する。相手のシュートを一本でも多く止めて円堂まで届かない様にするんだ」
ここまで見て来て相手で必殺シュートが撃っているのは五利と大鷲だ。そしておそらくはFWの水前寺と蛇丸も必殺シュートが使えるとみていいだろう。俺が自陣のゴールまで戻れば一人に対して複数人でプレスがかけられる。相手のシュート数を極端に減らせるはずだ
「あ、天野センパイ・・・それなら俺をDFに戻してください」
「壁山・・・」
そうしたいのは山々なんだけどな・・・正直野生中から得点を取れるのはイナズマ落とししかない
でも、肝心の壁山が
「俺がここにいても何もできないっす。イナズマ落としも怖くて目をつぶってしまう・・・だから!」
やはりイナズマ落としを撃つ覚悟はないようだ。クソッ・・悔しいな。豪炎寺も俺も単体で決めることができない。自分の無力さに腹が立つ。気づけば俺は壁山の肩をつかんでいた
「壁山・・・・今はお前に託すしかないんだ。・・・・悔しいけど俺じゃ決められない。だから頼む!絶対につないでやるからな」
それだけ言って俺は円堂の元へと走った。これで勝てるかどうかなんて分からない。でも、やれるだけの事はやってやるんだ
「天野センパイ・・・」
「壁山・・・・お前はあれを見て何も感じないのか?」
天野の後姿を見る壁山に豪炎寺が語り掛ける
「い、いえ・・・・悔しそう・・・・だったっす」
「そうだ!あいつはこの状況でも勝つためにどうすればいいのか考えている。だからこそ俺たちのイナズマ落としに全てをかけるために天野はお前に対してあんなことを言ったんだ。それにあいつだけじゃない。円堂たちだって誰一人あきらめていないんだ」
「円堂!!」
「天野!!どうして」
「お前だけに全部背負わせない・・・・・皆でゴールを守るんだ!!」
「おおー--!!」
号令をかけ野生中に対しゾーンディフェンスを展開する。相手の選手のマークにつくのではなく中央を固め相手の攻撃に対応する戦術で相手の一人に対して複数のディフェンスが展開できる戦術だ。しかしデメリットもある。スタミナの消費が激しいのだ。そのため通常は勝負所で使う事が多い
しかしそれは控えがいる前提での話だ。雷門中には控えの選手が1人しかいない。
延長戦など考えていない。豪炎寺と壁山が必ず決めると信じてこの方法をとった
「諦めていない・・・・誰も・・・」
壁山は天野たちの覚悟を見てつぶやく
「信じてるからさ・・・・俺たちがゴールを決めるってな」
そして豪炎寺は畳みかける様に
「目を閉じるってことは恐怖から逃げるだけじゃない。あいつらの信頼を裏切ることにもなるんだ。そうしたいのか?」
「い、いやっす!!」
「ならやるぞ!!あいつらは必ず俺たちにボールをつなぐ。必ず決めるんだ!!」
「はいっす!!」
壁山の目に力が宿る。そして考え始めた。どうやったらイナズマ落としを決められるのか
必ず来るチャンスを一発でものにするために
後半も後わずかとなる
必死のディフェンスが功を奏して点はとられていないが俺を含め雷門側のスタミナは限界に近づいていた
だからこそ一瞬のスキができてしまう
野生中のFW水前寺がまるでチーターのようなスピードでディフェンスをかわした
「しまった!!」
「もらったぜ!!」
水前寺が飛び上がりオーバーヘッドの体制に入り
「ダイナマイトシュートおおお!!!
強烈な爆発と共にシュートが放たれる
間違いなく今までのシュートの中で最大威力のものだ。おそらく熱血パンチでは止められないだろう
となればゴッドハンドだがここまでシュートを受け続けた手で止めれるかは分からない
「円堂!!」
「任せろ!!うおおおおお!!!」
円堂は腰を落とし力をためる。そして
「ゴッドハンド!!」
円堂は痛みに耐えながらもシュートを止めにいく
そして、おそらく腫れあがっているであろう手でしっかりとキャッチした
「天野、後は頼むぜ・・・」
円堂はこちらにパスを出す。円堂の声色からして限界が来たのだろう。時間も後わずかでこれが最後のプレーだ
俺はドリブルで上がりDFと対峙する
円堂も守り切ったのだから俺もやらないとな
「月光ドライブ!!」
俺は上下左右ジグザグに高速移動を繰り返し相手選手を次々に突破した
しかし、必殺の連続使用はさすがに堪えるな・・・・まあ、円堂が死に物狂いで止めたボールだから泣き言は言えんのだけど・・・
そして俺は相手のDFを引き付け上空にパスを出す。ファイアトルネードの時よりも高く
壁山と豪炎寺が飛び上がる。頼むぜ!これが最後のプレーだ
「行くぞ!!壁山」
「はいっス!!」
豪炎寺と壁山は同時に飛び上がる。高さは十分。しかし後ろからMFの鳥井と大鷲が飛び上がる
「やらせるかコケ!!」
このままでは止められる。壁山は
「これを決めなきゃ勝てない・・・・確かに怖いっすけど・・・・でも!!」
恐怖と戦っていた。下を見そうになるのを必死でこらえていた
「みんなの期待を裏切りたくない。できる事をするっす!!!」
壁山は空中で体制を変え仰向けになる
そして豪炎寺は壁山の腹を土台にしてさらに高く飛び上がった
「これが俺の・・・イナズマ落としいいい!!!」
豪炎寺は相手の上からオーバーヘッドを叩き込む
ボールはイナズマを纏いゴールへと突き刺さった
「ゴーーーーール!!試合終了間際、豪炎寺と壁山の必殺シュートが炸裂うう!!」
同時にホイッスルが鳴り試合終了となる
「そして試合終了!!混戦となった試合を制したのは我らが雷門中!!2回戦に進出だあああ!!」
試合終了後雷門ベンチでは
「よくやったな壁山」
俺は壁山に声をかける
すると近くにいた豪炎寺も
「まさか腹とはな・・・お前にしかできないイナズマ落としだ」
「センパイ・・・・えへへ・・・」
「おーーーーい!!壁山!!」
「あ、キャプテン!」
喜ぶ壁山の元に円堂が走ってくる
そして壁山とハイタッチするのだが
「いってええええ!!」
円堂は手を抑え叫ぶ
「おい円堂・・・グローブをとってみろ」
「ああ」
円堂が痛がりながらゆっくりとグローブをとる
手は赤く腫れあがっていた。この状態であのシュートを止めていたのか・・・・すげえな
円堂は意味もないだろうにフーフーと息を吹きかけている
「いや、冷やせよ・・・」
「ははは・・・・それもそうだな」
円堂が氷嚢を取りに行こうとしたとき円堂の手に氷嚢が当てられる
氷嚢を持ってきたのは雷門夏未だった。てか、いつからいたの?
そして少し微笑むと
「こんなになるまでやるなんて・・・・・馬鹿ね・・・」
「ば、馬鹿ってなんだ、馬鹿って!!」
円堂は抗議するも雷門は去っていく・・・これはもしや・・・
「お嬢様も案外・・・」
「ん?天野・・・なんか言ったか?」
「いや、何も」
円堂には黙っとこう・・・木野も円堂のことが好きっぽいし
まあ、恋愛のれの字も知らない俺が口を出す事じゃないからそっとしておこうか
とにかく、試合には勝った!次はシード校の御影専農中だ。気合入れてくぞ!!
そして数日後
「だからさあ!!」
「だってえ・・・」
校内新聞にはイナズマ落としの事が載っていたがそれと同じくらいの大きさで俺の月光ドライブの写真が載っており
「さすがに今回はイナズマ落としの事をメインに書かないと」
「だって私にとっては同じくらいかっこいいんですもん」
「はあ・・・・」
少しはマシになったものの音無の俺びいきは相変わらずで頭を悩ませることになっている
試合描写って難しいですね・・・