六等星は強い光の下で輝く   作:大仏の暇つぶし

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第八話 河川敷の決闘

野生中との試合の翌日

俺たちは次の試合に向け河川敷のグラウンドで練習していた

強豪相手に金星を上げたとはいえサッカー部の評判は良くなっていない。野球部やラグビー部も大会が始まったため俺たちは大会期間中はここで練習することを余儀なくされていた。少し前に学校のグラウンドを使う許可が出たというのにヒドイ仕打ちである

ちなみに円堂の手は幸い軽症で次の試合までには完治するらしい。正直ひやひやした。うちには控えのキーパーがいないからな。まあ、円堂はそんなことを気にもしないで練習を行っている

 

「よし!次は天野のシュートだな!本気で来い!」

「おいおい・・・まだ完治してねえんだろ?」

「へーきへーき!もうほとんど痛みもねえし、病院から練習する許可も出てるからな!」

「まったく・・・無理すんなよ・・・・・ん?」

 

ここで俺はあることに気づく

「なんか・・・・ギャラリー多くね?」

 

俺の言葉に全員が向こうの橋を見る。そこにはこちらを熱心に見ている同年代と思われる男女が大勢いた。中にはカメラをこちらに向けたり何やらメモを取る人たちが・・・・なるほどね

「円堂・・・あいつらは「すげええ!!俺たちにも遂にファンができたのか!!」えっ!?」

円堂は俺の言葉をさえぎって興奮していた。残念ながらあいつらはそんなもんではないんだけど・・・・どうやら風丸や豪炎寺といった常識人組は分かっている。しかし、そのほかのメンバーは明らかに浮かれており真実を伝えるのをためらうほどだった

 

・・・とりあえず浮かれているところ悪いが現実を知ってもらおう・・・と思ったその時だった

横を見るとリムジンがものすごい速度で河川敷の坂を下ってきてこちらに迫る。

「ぎゃああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

ど、どうなった・・・?

俺は死んだのだろうか・・・・ゆっくりと目を開ける

リムジンは俺の目の前に停車しており俺の体も無事なことが分かる

いやあ・・・ビックリした。絶対死んだと思ったよ・・・・腰が抜けて立ち上がれない・・・・ったく誰がこんなことを

「あら・・・あなたならよけれると思ったわ」

そこにいたのはリムジンから降りて来て俺の事をゴミムシを見るかの如く見下ろす雷門夏未だった

その表情は今まで見たこいつの表情の中で一番恐ろしいものだった。まさかこいつさっきの事を根に持って・・・

 

 

 

 

 

時は数時間前にさかのぼる

俺たちはここに来る前に部室に集合した。そして少し話していると雷門が入ってきたんだ

俺はこの前の試合の事で何か言いに来たのだと思った。どうせいつもの事だろうと荷物をまとめていたが

 

「私雷門夏未は本日付で雷門中サッカー部のマネージャーとなりましたのでよろしく」

「え、えええええ!?」

 

これには円堂たちだけでなく俺もびっくりした。どういう風の吹き回しだ?あいつは最初このサッカー部を廃部に追い込もうとしていたはずだ・・・・・いや待てよ

思い返せばこいつがサッカー部に顔を出すのが多すぎた気がする

他の部活にはあまり顔を出さないこいつが俺たちの試合は少なくとも帝国戦以降は全てチェックしているようだった。ん?そういえば毎回のように円堂のとこに行ってるんだよな。野生中の時なんかは氷嚢を持って行ったりしてたし

 

「どういう風の吹きまわしだ?あんなに廃部に追い込もうとしたくせに」

「あら天野君?別に大した理由じゃないわよ。あなたたち弱小サッカー部が少しでも勝てる様に私が力を貸してあげるわ」

 

相変わらずの物言いにちょっとイラっとしたので少しからかってやろうか・・・

 

「そうかい・・・・円堂が気になるんだろ?」

 

俺は雷門に近づき皆に聞こえない様に耳元でささやく

すると

 

「ちちっ、違うわ!別にそんな理由じゃありません!!!」

 

雷門は顔を真っ赤にして俺を怒鳴りつける・・・これは・・・・マジっぽいな

せっかくだからもう少しからかってやろうか。こいつの反応面白いし

 

「おーい円堂!こいつお前の事「いやあああああ!!!」あべし!?」

 

気付けば俺は雷門のビンタで吹っ飛ばされていた

それによって部室には何とも言えない雰囲気が漂い、雷門は入部早々大恥をかいたのだった

 

 

 

 

 

という事があっておそらくその恨みをここで晴らそうとしたのだろう

しかし、まさかここまでするとは・・・・女ってこえーのな

ちなみに雷門が来たのは必殺技の練習をやめさせるためだったのだが俺を見つけるや否や襲うように指示したのだと執事のバトラーさんから謝罪された。

とりあえず俺が立ち直るまでに話はついたようで俺たちは基礎練を中心にやり雷門には練習場を探してもらう事にする。雷門が期待しないでほしいと険しい表情で言っていたから学校のグラウンドを使う事は難しいのだろう。こんなんで本当に大丈夫なんだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日も俺たちは河川敷のグラウンドでパス練などを行う。やはり偵察隊は昨日と同じように来ており皆の表情も暗かった

円堂が鼓舞するにも限界がある。必殺技の特訓ができないのがここまでメンタルに来るとは思わなかった。俺も正直不安だ。この前の試合だってシュートを止められてしまった。あれ以上のキーパーが来た時に俺は・・・

 

「おーい天野ー!!お前の番だぞ」

「あ、ああ」

 

いかんいかん。少し考えすぎかな・・・できないもんはしょうがない。今は基礎能力を向上させることに集中しよう

 

 

 

ゴオオオオオオオ

 

「ん?なんだあれ?」

 

音の先を見るとアンテナのついた大型車が停車する

大型車の荷台が開き中にはモニターなどの機械が現れる

 

「て、偵察にしては大掛かりだな」

「あれは御影専農中の制服ですね。中にいるのは・・・・キャプテンの杉森とFWの下鶴です」

 

俺が見ていると音無が情報をくれる。しかし今回は試合の情報などは集めきれなかったそう。偵察の仕方を見るにも情報戦に強いことは確かだろう。

 

 

 

俺たちは練習を再開する。

御影専農中の2人も大人しく見ていたのだがしばらくするとグラウンドの方に入ってきた。円堂が練習にストップをかけ

 

「おいおい!困るよ。練習中に入ってきちゃあ」

 

円堂は平然と入ってきた杉森と下鶴に抗議する。しかし2人は表情1つ変えずに

 

「なぜ、必殺技を使わない?」

「な、なぜって・・・」

「隠しても無駄だ。我々はお前たちの全てを把握している」

「お前たちの勝つ可能性は0%だ」

「なんだと!?勝負はやってみないと分からないだろ!?」

 

円堂がヒートアップしているが対照的に杉森と下鶴は無表情で淡々と話している。

さすがにこの態度には俺を含め部員全員が頭にきていた

さらに杉森は

 

「勝負?・・・・これは単なる害虫駆除作業だ。」

 

そう付け加えた

害虫・・・・・・だとっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

杉森の発言に我慢ならなかった円堂が怒鳴ろうとするがその怒りを上回るほどの殺気を感じる

その正体は天野から発するものだった。天野の表情には円堂が見たことないほどの怒りが満ちており杉森と下鶴をにらみつける。

 

「ふざけるなっ!!こいつらは害虫じゃない!!訂正しろ!!」

「我々は事実を述べたまでだ」

「この程度の事も理解できないとはな」

 

しかしそれに全く動じず淡々と返す2人の態度に天野の表情がより凶悪なものになり危険を感じた豪炎寺と風丸が止めに入る

 

「離せよ!!俺はこいつらをゆるせねえ!!」

「冷静になれ天野!」

「そうだ!暴力なんか振ったら試合ができなくなるぞ!」

 

天野は何とか止まりその様子を見ていた円堂はある程度冷静になった

しかし、害虫と言われたことに怒りは感じている

 

「取り乱して悪かった。でも、俺たちだってお前らの発言には我慢ならない!だから勝負しろ」

「勝負?なぜ我々がそのようなことをしなくてはいけない?」

「このままじゃ俺たちも気持ちの整理がつかないんだよ!」

「気持ちの問題か・・・・理解した」

「それならば我々とのPK対決をすれば君たちも納得するだろう」

 

 

 

こうして決まったPK対決

FWである下鶴が円堂と、GKである杉森が天野と勝負する。お互いが一本ずつシュートを撃ち勝敗を決めるというものだ

始めに下鶴が円堂と対する

円堂は腰を落とし手をパンとたたいて気合を入れる

 

「さあ!来い!!」

「それでは開始する」

 

下鶴はそう言うとボールを高く蹴り上げる。そして飛び上がり炎を纏いながら回転し始めた

 

「あ、あれは!!」

 

雷門イレブン全員が驚愕した。それはまさしく豪炎寺の必殺シュート

 

「ファイアトルネード!!」

「ね、熱血パンチ!!」

 

円堂も驚いたようで反応が遅れる。よって溜めの時間が短い熱血パンチしか出せなかった。しかし、下鶴のファイアトルネードは豪炎寺のものと遜色ないほどの威力であっさりとゴールを奪われてしまった

 

 

円堂は悔しさを噛みしめみんなの元へと戻る。そのころになると天野も多少冷静さを取り戻しており屈伸するなどして準備を進めていた

 

「すまん・・・頼むぜ。天野!!」

「・・・ああ」

 

天野は口数少なく勝負へと向かう

 

「あいつ・・・大丈夫なのか?」

「とりあえず冷静さは取り戻したと思う。しかし明らかにいつもの天野ではないな」

 

いつもの天野はどちらかと言えば理性的でたまに感情を全面に出すこともあるがここまでのは初めての事だった。豪炎寺と風丸が落ち着かせた後も「すまん」と一言だけ言い、その後は無言で準備を進めていたのだという

 

天野が杉森と向き合う

 

「いつでも構わない」

「ああ・・・」

 

天野がボールに回転を加え回し蹴りでシュートを撃つ

 

「スターダストランス!!」

 

ボールは一直線にゴール隅に向かって放たれた。

しかし

「・・・データ以上の速さだな。だが想定の範囲内だ。シュートポケット!!」

 

杉森は軽く飛び上がると両手を広げゴール全体を覆うバリアを展開する

完ぺきなコースのシュートだが次第にシュートの勢いは収まっていき完全に止まったボールを難なくキャッチした

 

 

「これで2-0。我々の勝利だ。やはり君たちは我々に勝つことはできない」

「くっ・・・」

「もうここにいる必要もなくなった・・・・行くぞ」

「はい」

下鶴と杉森は制服に着替え去っていく。雷門イレブンはその姿を見ていることしかできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負け・・・た?俺のシュートがこうもあっさりと・・・・シュートブロックもなしに

 

「クソオオオオオオオ!!!」

 

悔しい・・・・あんだけ言っといてこの程度かよ。俺は・・・・弱い!

 

「天野・・・・」

「円堂・・・・ごめん。俺がもっと強ければ!」

「いいんだ。俺だって勝てなかった。それに天野は俺たちの為に怒ってくれたんだろ?それなら謝ることないって」

「でも、もっと強くならないと」

「だったら特訓だ!みんなで強くなって次の試合は絶対に勝とうぜ」

 

円堂だって悔しいはずなのに俺を励ましたうえ皆を鼓舞する。そうだ。くよくよしている暇があったら努力するんだ。俺たちはそうやってここまで来たんだ

 

「よっしゃあ皆!!頑張っていこうぜ!!」

『おう!!!』

 

 

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