六等星は強い光の下で輝く   作:大仏の暇つぶし

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第九話 勝利への焦り・重い過去

河川敷での決闘の翌日。俺たちは雷門夏未に呼び出されていた

 

「なんでこんなところに・・・」

「あれ?ここってあれじゃないですか?雷門七不思議のひとつ【開かずの扉】」

「そうでやんすよね」

 

一年たちが言っているのは雷門7不思議と言われる俺が入学する前からあったとされるオカルト。内容としては動く人体模型や夜中にうごめく影などで開かずの扉もそのうちの一つだ。噂ではとんでもないお宝があるだの幽霊がいるだの言われている

待っているとギイイイという音と共に扉が開く

相変わらず怖がりの壁山は悲鳴を上げ中から人影が見えるとそのまま気を失ってしまった

 

「あら、待たせたかしら?」

 

中から現れたのは雷門夏未だった。幽霊ではなかったことで全員安堵する

 

「ここはイナビカリ修練場。40年にイナズマイレブンが使っていた場所よ」

「え、ホントに!?」

「ええ。そしてこちらで修理して使える様にしてあります。使ってみる?」

「ああ、もちろんだ!行くぞ!」

 

そう言って入っていく円堂に続いて皆が階段を下って入っていく

正直なところ俺もワクワクしてきた。いったいどんな特訓ができるんだろうか

 

 

 

 

と思っていた頃が俺にもありました

やり始めて思ったがここの特訓は異常の一言に尽きる

円堂がやっているガトリングの速射で球が発射される機械はまだいい。問題は俺がやっている止まれば人とぶつかって大怪我するであろう巨大ルーレットや止まれば後ろの車にひき殺されるコンベア。明らかに人を殺せるほどのレーザーを躱すトレーニングなど、明らかにサッカーには関係のないものだった

しかも修練場の扉はタイマーのロック式になっておりそれが終わるまでは出ることができずタイマーは最大の9999秒となっていた・・・・雷門の奴容赦ねーな

とにかく考える暇なんてない。止まれば大怪我は避けられないのだから

 

 

 

 

 

 

夕暮れ時、木野と音無が修練場の扉の前でみんなの帰りを待っていた

 

「皆、大丈夫かなあ」

「そうですよねえ。夏未さんはこの程度の特訓も越えられないようじゃって言ってましたけど・・・」

 

 

そんなふうに話していると修練場の扉がゆっくりと開く

そこにはぼろ雑巾のように横たわるみんなの姿があった。息遣いや表情を見ても満身創痍でここまで上がってきたのが分かる

マネージャーたちは慌てて救急箱を取りに部室へと向かった

 

 

 

 

 

・・・今悲鳴を上げたのは木野と音無かな

ダメだ。意識が朦朧とする

 

「・・・よし皆!試合までこの練習を続けるぞ!」

「お、おお・・・」

 

俺たちは試合までに生き残っていられるのだろうか

いや、やらなくちゃいけない。円堂たちを害虫呼ばわりしたあいつらを許すわけにはいかないからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御影専農中の校舎の廊下

練習を終えた下鶴と杉森が歩いていると

 

「ようサッカーサイボーグ」

「鬼道有人か・・・なんのようだ?」

「雷門中についてお前が知らない情報を教えてやろうと思ってな・・・」

「雷門中のデータは全て把握している。その必要はない」

「まあ、そういうなよ・・・あいつらはな・・・・バカなんだ」

「なに?」

「すまんが他にうまい言葉が見つからなくてな。自分の目で見ることを薦める・・・・そうだ。特に円堂守。奴はとびっきりの大バカだ」

「なるほど、バカと大バカか・・・確かにデータにない」

 

そして鬼道は去ろうとする。しかし、すぐに振り返り

 

「そういえば、お前らは雷門中と決闘した時に天野星矢を怒らせたそうだが、それならば気をつけることだ。奴は感情が高ぶると力を増す傾向にある・・・お前らが想像する以上にな」

「そうか・・・だが我々が負けることはない。データは絶対だからな」

「ふっ・・・だといいがな」

 

そう言い残して鬼道は去っていった。そして杉森と下鶴は特に表情を変えることもなく帰路に就くのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合までの1週間はイナビカリ修練場での特訓を続けていた。

確かに特訓の成果は出ており特に基礎能力があがったのが実感できる。しかしまだ足りないとも感じていた

 

「足りない・・・まだこんなもんじゃ!宍戸!もっと速くしろ!」

「ええ!?もうこれ以上は」

「いいから!さっさとやれ!」

 

俺は機械の操作をする宍戸に指示を出す。あいつらを倒すには力が足りないんだ・・・もっと・・・もっとだ。

そうこうしているうちに今日の練習が終わる

しかし、まだ足りない。幸い疲労は初日よりもマシになってきた。それなら追加で必殺技の特訓でもしよう

試合まで・・時間はない

 

 

「センパイ!どこに行くんですか?」

「音無か・・・・特訓だよ」

「特訓って・・・今終わったばっかりじゃないですか!」

「終わり?まだ足りないよ。あいつらを倒すにはまだ足りない。すまんが時間が惜しいんだ。また明日な」

 

 

そうだけ言って俺は修練場を後にする。とりあえず河川敷のグラウンドに行くか。さすがにギャラリーもこの時間にはいないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?天野君は?」

「あ、木野センパイ・・・」

「どうしたの?」

「天野センパイは追加で特訓するって出て行きました」

「特訓って・・・あんなに特訓してまだやるつもりなの!?」

 

マネージャーたちは選手たちの練習の管理を行っていた。初日の練習を選手だけで行った結果ボロボロになって出てきたことから2日目以降はマネージャーの3人も練習を見ることにしたのである

だからこそ知っていた。天野の練習量だけ他のメンバーの倍以上であると。それぞれの練習器具についている練習レベルを見ても天野が行った時だけ高いのも記録を見ればわかる

単純に見れば選手の実力がメキメキ上がるのは喜ばしいことだが天野が身体能力的に他の選手より格段に優れているわけではない。オーバーワークであることは明白であった

 

「とりあえず天野君を止めないと」

「そうですね・・・それじゃあ一緒に『うわあああでやんす!!』」

 

2人の視線の先にはテーピングで全身グルグル巻きにされた栗松の姿があった。犯人は雷門であり、聞くところによるとテーピングなんて初めてでやり方が全く分からなかったそう

 

「もう・・・しょうがないな。音無さん、天野君の事はお願いね」

「は、はい!」

 

テーピングの件は木野に任せ音無は天野の元に走った

 

 

 

 

 

 

 

音無は練習できる場所という事で鉄塔広場に向かった後河川敷のグラウンドに向かった。

河川敷のグラウンドに天野の姿があり

 

「うおおお!!!!」

 

天野のシュートはこれまでにないほどのキレを見せておりたった2日ながら修練場での特訓の成果が出ているのが分かった

しかしその表情は険しいものだった。

 

「クソッ!!まだだ・・・まだ足りない!!」

 

天野はゆがんだ表情でシュートを撃ち続ける。しかしその姿はとても痛々しく、それを感じた音無は天野の元へと向かった

 

「あ、天野センパイ!!」

「・・・音無か・・・・なんの用だ?」

 

天野は練習を止め音無しの方を見る。しかしその表情からはいつものような優しさを感じない。ただただ怒りや悲しみなどの負の感情だけを感じるような気さえした

 

「れ、練習を止めに来たんです。これ以上はオーバーワークに・・・」

「・・・練習はやめないよ。あいつらを倒すにはまだ足りないんだ」

「で、でも・・・・・試合前に身体を壊したりしたら」

「・・・・もういいか?時間が惜しいんだ・・・」

 

天野はそう言うと練習に戻ろうとする。音無の呼びかけにも一切応じずにボールへと向かっていった

しかし

 

「離せよ・・・・」

「離しません!」

 

音無は天野の手をつかんでいた。天野を何とかして止めたいという気持ちが体を動かしていた

そして

 

「そんな顔してサッカーするセンパイを・・・・これ以上見たくないんです!!

「・・・・」

「この前、先輩が負けてキャプテンが負けて・・・・皆、御影専農中を倒したいって・・・気持ちは同じはずなのに・・・・・なんで天野センパイだけ一人で戦おうとしてるんですか!?」

「・・・っ!」

 

音無の目からは涙が流れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで・・・・泣いてんだよ

俺の心はぐちゃぐちゃになっていた。でも音無は畳みかける様に

 

「私はあの時・・・・帝国との試合での天野センパイのプレーを見てマネージャーになりたいと思ったんです。絶望的な点差でもあきらめずに点を取りに行ったセンパイの姿はとても輝いていた・・・・でも今のセンパイは怒りに身を任せて誰も寄せ付けない・・・そんなの・・・・私があこがれたセンパイの姿じゃないんですよぉ・・・ううっ・・・」

 

とうとう声を上げて泣き出してしまった。でも、そのことで少し冷静になれた。

そう・・・・だよな・・・

何も見えなくなっていたみたいだ。そのことで後輩を泣かせてしまうなんて・・・最低だよな

俺は音無に近づき頭をなでる

 

「ごめんな・・・少し冷静になれたよ。周りが見えなくなってたみたいだな」

「天野・・・センパイ・・・」

 

そうして音無が泣き止むまでそばにいることにした。とりあえずこれで返せるとは思ってないけどな

後で皆にも謝らないとな。宍戸には怒鳴っちまったし、多分他の皆にも気づかれてただろうから

 

 

 

 

 

 

音無が泣き止み落ち着いたところで場所を変え土手に並んで座る

そのタイミングで稲妻KFCの小学生たちが夕方からの練習を始めていた

それを見ながら俺は音無と話していた

 

「止めてくれてありがとな。おかげで大事なものを失わずに済んだ」

「い、いえ・・・私の方こそあんなに泣いてしまって・・・」

「ははは・・・まあ、泣かせるようなことした俺が悪いんだけどね」

「違うんです・・・私、昔の事思い出しちゃって・・・」

「昔?」

 

音無は少し考えた後

 

「私にはお兄ちゃんがいました。幼いころに両親が飛行機事故で亡くなって、私とお兄ちゃんは施設で育ちました」

 

音無の口から出たのはとても悲しい過去の事だった。兄弟がいたことも初耳だがまさか両親を亡くしているとは・・・

 

「お兄ちゃんは頭が良くて冷静で・・・・私が周りの子にいじめられた時には身を挺して守ってくれる自慢のお兄ちゃんでした。その後私たちは別々の親に引き取られそれ以来お兄ちゃんとは会えなくなったんです」

 

何とも重い話だ・・・普段はあんなに明るくしている姿からは想像もできない。もし自分が同じ境遇ならそんなふうに振る舞えるだろうか・・・・無理だろうな

 

「でも、最近になってお兄ちゃんを見つけたんです。見つけた時はうれしくて久しぶりに話したくなりました。だけどお兄ちゃんは変わってしまっていた。勝利ばかりを追い求めて、私が大好きなお兄ちゃんではなくなってたんです。だから・・・私の身近な人が変わってしまうのが怖くて・・・」

「そっか・・・・お兄さんもサッカーやってるのか?」

「・・・はい」

「じゃあ、もしかしたら試合とかするかもしれないな」

「・・・・」

「ん?どうしたんだ急に黙って」

「い、いえ!・・・そうですね。試合するかもしれないですね」

「だよな!だったらそいつと試合した時にガツンと言ってやるよ」

 

俺がそう言うと音無は少し驚いた表情を見せた後に笑っていた。

とりあえず少しでも気が晴れたのならよかった。

 

「そうそう!その方が音無らしいよ」

 

そう言って笑って見せたのだが今度は音無が顔を赤くして目をそらしていた。女心というのはよく分らんな。雷門の時もそうだったけど・・・

まあ、そんなこんなで後は他愛もない話で盛り上がった後帰路に就く

 

 

 

次の日、俺は皆に謝ってから練習に臨んだ。特に誰も気にはしていなかったが宍戸が若干緊張していた様だったので申し訳ないと思う

とにかく次の試合まであとわずかだ。最後の追い込みで必ず御影専農中を倒す

俺だけの力じゃなく皆で倒すんだ

 




作者は恋愛などしたことが無いため甘酸っぱい描写がクソほど苦手です
今後もちょくちょく入れますがどうか生温かい目で見守ってください(汗)
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