心奪のコアフィグラー   作:しゃちほこ

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0.世界観説明

この世界は精神を物質化し資源として回収出来るようになったIFの未来が舞台となる。

 

30年前、心化学者アルン・テフリーが、人間に生じるあらゆる感覚を物質として抽出できる技術「ラティオ」を確立した。

それは世界中の貧困やエネルギー問題を解決する可能性のある万能資源であった。

世界各国は進んでラティオの研究を進めていった。その結果この30年で世界にはラティオを用いた技術が幾つも生まれていった。

 

しかしラティオの栄光は長くは続かなかった。ラティオの中でも最も有用とされた、苦痛のラティオによって得られる資源「デスペラティオ」を確保する手段の非人道性が問題になった為だ。

デスペラティオは建材、機材として鉄やアルミニウムに代わるものであったが、その抽出には人間に多くの苦痛を与える必要がある。

この問題に国際連合は、世界人道的な観点からデスペラティオは死刑、または終身刑の代わりとなる新たなる刑罰としてのみ抽出が許可されることとなった。

 

これにより解決したと思われたデスペラティオの問題は、しかしより大きな問題となった。

世界各地で犯罪係数が増加、デスペラティオの刑罰に適応される事件が多発した。

 

原因は喜びから抽出されるラティオ「スペラティオ」によって生成される鎮痛薬「サルース」。

サルースはヘロインを超える鎮痛薬であり、医療に大きな革新を与えた。

 

少量であれば抗うつ剤としても機能し、再度スペラティオを回収することが出来る。しかし乱用するとパラノイア、殺人衝動に苛まれるという危険性も持っていた。

多くの国家はサルースを配給、定期的な使用とスペラティオの回収を義務付け、使用量を超過しなければ合法とした。しかし、中毒となり乱用するケースが続出し、多くの殺人事件に発展した。

 

国は多くのサルース乱用者を逮捕し、デスペラティオ抽出刑、通称苦痛刑とされ、国家の資源となっていった。

 

 

さらには、世界中でこれまで人道的な見地から禁止されていた人間のクローン技術を突如として解禁。

表向きには医療用の臓器クローンのみ作っていることになっているが、その実政府は人間の脳味噌のみを培養し、そこからラティオを抽出する研究に日夜勤しんでいる。

 

 

そして近年、とある新技術が人知れず生み出された。

「コアフィグラー」それは人間に生じる感情のうち、特定の感情を強力に捻出するように改造された存在である。

作り方はまちまちだ、例えば違法製薬会社の人体実験の被験者だったり、兵器開発の一環として生み出されたデザイナーベイビーだったり、新興宗教団体の気の狂った儀式だったり。

そうして生み出されたコアフィグラーはたいていの場合体内にラティオ生成器官が取り付けられていたり、自然発生的に生成されており、自身の捻出する感情をそのままラティオ製物質に変える事が出来る。

無論いいことばかりではない。コアフィグラーは政府にとって秘匿したい存在であり、発見され次第確保されることが決まっている。

更には、コアフィグラーは特定の感情発露に秀でている一方で、その他の感情が極端に薄いという特徴も持っている為、日常生活にも支障をきたす。

 

 

舞台はトロンプルイユ。殺人と麻薬に染まり、国は自ら生み出した犯罪者を電池のごとく消費する。

日々サルースの中毒に苛まれては、簡易スペラティオ抽出器を頭に嵌め込む日々。

デスペラティオ製コンクリートビルに囲まれた監獄で、コアフィグラーは明日を生きる事は出来るか。

 

 

▼国家

・トロンプルイユ

元日本、世界でも最初期にラティオ製製品の開発に乗り出し、莫大な資産を築いた巨大企業「トロンプルイユ」が日本を乗っ取ったことで誕生した。

不景気であった日本の情勢は瞬く間に回復し、世界最高のGDPを叩き出すに至った。

 

・アメリカ合衆国

体制は大きく変化してはいないものの、ラティオ関係の企業数は世界でもトップクラス。各社が競って新製品を生み出しており、強い展開力を見せている。

特に人工知能とラティオを組み合わせた新技術は、既に実用化され兵器開発に利用されている。

 

・中華共和国連邦

中国とインド、その他7か国が合併し生まれた大国。完全な共産主義国家であり、非常に多くのラティオを国が管理し、各企業に振り分ける事で運営されている。

 

・ユーラシア連合

ロシア、EU、イギリスその他12か国が合併し生まれた国。ごく最近生まれた国だが、発展速度は群を抜いている。

噂には国のトップ、ウールヌはラティオと人工知能を組み合わせたアメリカに対抗する新技術で生まれた国民を管理するAIなのではと言われている。

 

 

▼宗教

・3大宗教

キリスト教、イスラム教、仏教は未だ生きている。しかし、新しい思想や世界の変化についていけず、その信者の数は減っている。

 

・アテレー教

トロンプルイユで発生し、現在最も勢いのある新興宗教。人生の苦しみとは感情から生まれるもので、感情を削ぎ落すことこそ安寧への道だと説いている。

この宗教は国が統括しており、全ては寄付という形でデスペラティオを回収するための方便である。

強制的に苦痛のラティオを搾られ、苦の感情が希薄になる事で一時的に安らぎを得るが、次第に常に苦しみを感じるようになり、またデスペラティオを寄付する、というサイクルが出来ている。

回収量自体はさほど多くはないが、国連の規則をかいくぐってデスペラティオを回収できるため、新しい信者の獲得を目指している。

 

・虚の教会

最近問題になっている、国に抗うレジスタンス集団。

「ヴァニタス」と呼ばれる無感情のラティオから作ることの出来る世界的に禁止されている麻薬を使用し、永久的に感情を喪失した団体をいう。

今後あらゆるラティオの回収が不可能になる為、国は虚の教会を全面的に排斥し、発見した場合は即座に治安部隊に報告することが義務付けられている。

コアフィグラー化の技術を所有しており、一部信者は無感情のコアフィグラーと化している。

 

▼各ラティオの性質

 

・喜「ガデラティオ」

黄色い固形のラティオ

非常に優れた展性と延性があり、優れた熱伝導性と送電性を持つ為、半導体などの機械部品に加工されることが多い

 

・怒「イラティオ」

赤い液状のラティオ

主にエネルギー資源として活用される。

後述するドロラティオから生成される薬品と反応させることで電気を発生させる。

 

・悲「ドロラティオ」

青い液状のラティオ。

様々な触媒として作用し、ラティオ以外の物質と決して反応しない。

未だに融点と沸点が確認されていない。

 

・楽「スペラティオ」

黒い固形のラティオ。

主に薬剤「サルース」に使用される他、清涼飲料水や調味料などに使用されている。

摂取したものに快楽を与える性質を持つ。

 

・苦「デスペラティオ」

白い固形のラティオ。

建材や工業部品に多く使用されており、加工法によって硬度や断熱性を幅広く変化させられる。

 

・無「ニヒラティオ」

無色透明で不定形のラティオ。

無関心や諦観など感情から生じるラティオ。

現在まで研究が行われてきたが有用な使用方法は一つを除き見つかっていない。

摂取することで感情を喪失する性質を持ち、違法薬物「ヴァニタス」とも呼ばれる。

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