秘封活動記   作:流浪の東方厨

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科学世紀のメガロポリス

 209X年。2000年代からの長い不景気に悩まされていた日本は第Xx代目内閣総理大臣「槙坂門左衛門(まきさかもんざえもん)」主導の元、大きな改革が行われていた。その改革には、腐敗が進んだ国会を一度瓦解させて、京都に首都機能移転を行い、そこに新進気鋭の企業「スキマ・テック」の本社工場を誘致して、そこから技術を取り入れた。それを行うことによって日本は一躍世界一の技術大国になり、日本は不景気を脱出した。

 このお話は、それから半世紀以上後の京都に暮らすオカルトマニアの学生の物語だ。

 

・・・・

 

 朝方の未来都市ネオ京都。天空を貫くように(そび)え立つビル郡から流れる雑多な合成EDMミュージックや、眩暈(めまい)のしそうな極彩色のネオンが五感に刺さる喧騒の中にある雑居ビルに、二人の女子大生が暮らしていた。

「ジリジリリ!」

淀んだ空気感の漂う古い雑居ビルの一室に似合わない洒落た目覚まし時計のベルが鳴り響く。その部屋は襖で仕切られた1LDKで、畳敷きの寝室には大量のオカルト関連の書籍が乱雑に散らばっている。そして、その書籍の山を無理やり掻き分けて二枚の布団が敷かれていた。片方は既に綺麗に畳まれており、もう片方では茶色がかった黒髪の少女がにわかには信じがたいような寝相で寝ていた。

「くぅー・・・すぅー・・・。」

彼女は宇佐見蓮子(うさみれんこ)。京都の大学に通うオカルトマニアの学生だ。

「ガラリ。」

襖が開いて綺麗な金髪青瞳の少女が入ってきた。彼女はマエリベリー・ハーン。蓮子の親友で、同じ大学に通い、同じ部屋をシェアする間柄だ。蓮子からはメリーというあだ名で呼ばれている。

「蓮子、起きて。朝ごはん出来たよ。」

メリーが蓮子の布団をゆさゆさと揺する。

「うぅん・・・。もう少しだけ寝かして?」

蓮子が寝ぼけ半分に答える。

「だめよ。今日は一時限目に大事な講義があるじゃない。ほら早く起きて。」

そういうとメリーは蓮子の布団をひっぺがした。

「うっ!?さっむい!わかった、起きるよ。」

蓮子は起き上がり、寒い寒いと言いながら食卓についた。食卓には、白いブロック状の培養サラダチキンと蛍光色の合成目玉焼き、何かの工場野菜と代用みその味噌汁、そして、人工米の山盛りご飯が並んでいた。

「相変わらずのケミカルな食卓ね。たまには天然物が食べたいわ。」

と、蓮子。

「確かにね。でも、天然物は高いのがネックよね。」

と、メリー。

「とりあえず食べちゃいますか。いただきます。」

蓮子は黙々とご飯を食べ始めた。

「私も食べよ。いただきます。」

 メリーも一緒に食べ始めた。まず、卵をご飯に乗っけて青色の代用醤油をかけて食べ、その後味噌汁を啜った。

「ぐァつぐァつぐァつ」

蓮子は鶏肉に化学調味料を二、三滴かけてご飯と共に頬張る。

「もう、蓮子ったらリスじゃないんだから。急がなくても早く起こしたからまだ時間あるわよ。」

「あ、蓮子。ほっぺにお弁当。」

「もごもご?」

メリーは蓮子の頬の米粒を指で取り、そのままぱくりと食べた。

「ぷはァ。美味しかった。ご馳走さま。」

「はい、お粗末さま。」

「洗い物は私がやるわ。」

 蓮子はささっと洗い物を済まして、朝の支度を始めた。着替えをしながら蓮子はメリーに話しかけた。

「ねぇメリー。今日は『あれ』やる?」

「えぇ、勿論。」

「決まりね。じゃあ、放課後あそこにいきますか。」

「おっけー。」

蓮子は愛用の帽子をかぶり、出かける準備を整えた。「メリー!準備出来たよ!」

「わかった、行きましょう。」

二人はドアを開けてビルの廊下に出た。ビルの廊下にはどこかの子供やらよく解らない段ボールの山に使用済み注射器などが散乱し、挙げ句の果てには隣の部屋に警察が踏み込んで、常習賭博で隣人が連れていかれるなど、未来都市の歪みを体現したような風景が広がっていた。しかし、二人にとっては日常茶飯事。全く気にせずに階段を下りた。

  下りた先には屋台形の食堂と駐車場があり、駐車場の奥から二番目のマスにはえらくくたびれた中古の韓国製ハッチバック車が止まっている。これは、先日蓮子が5万円で買った愛車だ。

「ピピッ。」

スマートキーで鍵を開けて、蓮子が運転席、メリーが助手席に乗り込んだ。

「がしゃっ、ぼふっ、キュイいいい。」

キーを回すと経年劣化で出力の落ちた頼りないモーター音が響き、しめやかな古い機械音声がETCのアナウンスをする。備え付けナビのホログラムディスプレイにはノイズが交じり、頼りなさを助長する。

「蓮子、この車爆発したりしない?」

「さぁ?多分大丈夫でしょ?」

「多分?」

ギアを1速に入れて、車を発進させる。

「キュイーン。」

光化学スモッグ煙る朝のビル街を車で走り抜ける。飛行船から聞こえる耳をつんざくような月旅行のラジオ広告も、そこかしこの飲食店から薫るケミカルな匂いも、全てが調和してひとつの世界を形成している。しかし、蓮子とメリーが視ている世界はここではない。

二人の見ている『世界』を語るのは、また次の機会にしよう。

続く。

 

 

 

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